この半月、娘のキツネ頭に振り回された。
いきなり娘の頭がキツネになっていた。風呂場で自分でやったらしい。
私は子どもの茶髪は大嫌いだ。自立して生計を営むなら個人を尊重する。しかし大学に入ったばかりの新入生だ。ふざけるな、茶髪どころかキツネ色だった。光の加減ではゴールドだ。
入学時成績を評価され1年間の特別待遇になった。親孝行な娘だと思った。中高でやめたと言っていたバレーボールも再開した。これも嬉しかった。しかし…
いきなりキツネが憑いた。困ったことに仲間内やバレー部の先輩やらが似合うと言ったらしい。真に受けた本人は、私の「本来の姿に戻ってくれ」などという訴えはまったく聞く耳を持たない。「戻せ」「嫌だ」のくり返し。とうとう娘と父は食事が別になった。「断絶か?」悲しかった。
携帯電話会社から通知が来た。娘の電話代が異常に高額になっているという通知だった。先月も先々月も高額だった。それにも増していた。父の10カ月分合計をもを越したこともあった。父は勝負に出た。「父に従わぬのなら自分で支払え、できぬなら携帯は止める。」「それと髪とは別だ。それに無い」押し問答というやつだった。結局止めた。私もリスクを負うために一緒に止めた。後悔した。勢いってやつだった。娘の命綱のはずだったのだが携帯は。
無断外泊だ。携帯を止めた週の中ごろだった。帰ってこない。授業の後バレーの練習とは聞いていたが遅い。終電無くなる、無くなった。メールも無い。まったく無い。朝7時まで待った。父は何かあったら出動とスクランブル体制をとっていた。
私が夜帰宅するとキツネがいた。なにくわぬ顔で。かみさんによるとバレーの練習の後、寄宿舎の仲間の部屋へいき、そのままバタンキュー、気がついたら朝だった。という話だ。父の頭は渦巻いていたというのに「事故か?怪我か?事件か?男か!!!」などと。
日曜の晩やっと元の色に戻した。しかし、私が聞こえただけでも2時間「黒髪は嫌だ、茶髪のが似合う。」と呪いの声が聞こえていた。「学校休む」そうも聞こえた。月曜行かなかった。「そんなに本来の自分の姿が気に入らないのか。私の娘であるということをも否定するのか」そこまで父の思考は飛躍してしまった。情けなさに包まれた夜だった。
火曜の夜、帰宅した私にかみさんが言った。
「やっと今日行ったんだけど、学校で『やっぱりあなたは黒い髪が一番似合うね』ってみんなに言われたんだって。そしたらあの子『アタシ、自分のこと、よくわからなかったみたいね。ゴメンナサイ。アハハ』だって。」
父はあいた口が閉まらなかった。フットサルで蹴られた唇が痛くてまだ閉じられないのだが。
キツネが去って、黒い洗い髪をドライヤーで乾かしている娘が何者だかわからなかった。多分宇宙人だろう。
今日、娘は午後から県の社会人のバレーの練習に行った。夜遅く帰ってきた彼女は風呂にも入れないくらいバテていた。あしたは5時起きで学校のバレー部だと言う。
「ナンナンダ、アイツハ。ナンナンダ、オレハ」
私への携帯電話がつながらないことがあったらその時は、のろしをあげるか伝書鳩を飛ばしてください。
地球上のすべての人類が、そしてすべての家族が平和であることを、そして我が家が平穏であることを、私は望みます トホホホ……。
いきなり娘の頭がキツネになっていた。風呂場で自分でやったらしい。
私は子どもの茶髪は大嫌いだ。自立して生計を営むなら個人を尊重する。しかし大学に入ったばかりの新入生だ。ふざけるな、茶髪どころかキツネ色だった。光の加減ではゴールドだ。
入学時成績を評価され1年間の特別待遇になった。親孝行な娘だと思った。中高でやめたと言っていたバレーボールも再開した。これも嬉しかった。しかし…
いきなりキツネが憑いた。困ったことに仲間内やバレー部の先輩やらが似合うと言ったらしい。真に受けた本人は、私の「本来の姿に戻ってくれ」などという訴えはまったく聞く耳を持たない。「戻せ」「嫌だ」のくり返し。とうとう娘と父は食事が別になった。「断絶か?」悲しかった。
携帯電話会社から通知が来た。娘の電話代が異常に高額になっているという通知だった。先月も先々月も高額だった。それにも増していた。父の10カ月分合計をもを越したこともあった。父は勝負に出た。「父に従わぬのなら自分で支払え、できぬなら携帯は止める。」「それと髪とは別だ。それに無い」押し問答というやつだった。結局止めた。私もリスクを負うために一緒に止めた。後悔した。勢いってやつだった。娘の命綱のはずだったのだが携帯は。
無断外泊だ。携帯を止めた週の中ごろだった。帰ってこない。授業の後バレーの練習とは聞いていたが遅い。終電無くなる、無くなった。メールも無い。まったく無い。朝7時まで待った。父は何かあったら出動とスクランブル体制をとっていた。
私が夜帰宅するとキツネがいた。なにくわぬ顔で。かみさんによるとバレーの練習の後、寄宿舎の仲間の部屋へいき、そのままバタンキュー、気がついたら朝だった。という話だ。父の頭は渦巻いていたというのに「事故か?怪我か?事件か?男か!!!」などと。
日曜の晩やっと元の色に戻した。しかし、私が聞こえただけでも2時間「黒髪は嫌だ、茶髪のが似合う。」と呪いの声が聞こえていた。「学校休む」そうも聞こえた。月曜行かなかった。「そんなに本来の自分の姿が気に入らないのか。私の娘であるということをも否定するのか」そこまで父の思考は飛躍してしまった。情けなさに包まれた夜だった。
火曜の夜、帰宅した私にかみさんが言った。
「やっと今日行ったんだけど、学校で『やっぱりあなたは黒い髪が一番似合うね』ってみんなに言われたんだって。そしたらあの子『アタシ、自分のこと、よくわからなかったみたいね。ゴメンナサイ。アハハ』だって。」
父はあいた口が閉まらなかった。フットサルで蹴られた唇が痛くてまだ閉じられないのだが。
キツネが去って、黒い洗い髪をドライヤーで乾かしている娘が何者だかわからなかった。多分宇宙人だろう。
今日、娘は午後から県の社会人のバレーの練習に行った。夜遅く帰ってきた彼女は風呂にも入れないくらいバテていた。あしたは5時起きで学校のバレー部だと言う。
「ナンナンダ、アイツハ。ナンナンダ、オレハ」
私への携帯電話がつながらないことがあったらその時は、のろしをあげるか伝書鳩を飛ばしてください。
地球上のすべての人類が、そしてすべての家族が平和であることを、そして我が家が平穏であることを、私は望みます トホホホ……。
「夜回り先生の卒業証書―冬来たりなば春遠からじ 」
「夜回り先生の卒業証書」今日仕入れてきました。さっそく読み始めます。ありがとうございました。