中之島の中央公会堂の向かいにある東洋陶磁美術館は、1982年(昭和57年)に世界的に有名な「安宅コレクション」を住友グループ21社から寄贈されたことを記念して、大阪市が設立したものです。明治時代には大阪ホテルと銀行集会所があったところで、現在は緑に囲まれた落ち着いた感じの素敵な建物です。
2点の国宝を所有しているのですが、今回の展覧会はそのうちの一点、油滴天目茶碗が展示されているというので、本日行ってまいりました。
東京の三井記念美術館や出光美術館などで、茶道具(というか主に茶碗)はいくつか観ているのですが、黒楽とか、志野とか日本物が圧倒的に多くて、いわゆる唐物はあまり見たことがなかったので、今回の展覧会はものすごく新鮮でした。
日本のものとは違う硬質な景色で、土のせいでしょうか、色味も違う。人の手を渡ってきたんであろう、ねっとりとした表面の質感も「道具」って感じでよかったです。
中に銘「荒木」というのがあって、例の有岡城の荒木村重が所有していたという茶碗があったのですが、それこそ人の手脂で磨かれてきた表面のねばり気が、古の武将の存在を感じさせて不思議な気持ちになりました。考えてみれば、大阪城はここから目と鼻の先。変な話、そこらにそうした人たちの魂が徘徊していても何の不思議もないわけで、利休だってこのへんを歩いたことあるのかもね・・・なんて考えさせられる、さすが大阪は奥深い街ですね。
そんな昔の時代の茶碗が持ち主を転々と変えながらも生きのびてきたのは大事に伝えようとする人間の気持ちがあったからで、道具としてならシンプルにただ形があれば用は足りるのに、細かな模様や細工、色味をつけたしていき、そこに愛着を持つのは、もう人間の性としか言いようがない感じ。美に魅せられるというのは、人間の根源的な欲求なのだなと思います。
ただ魅せられる美の種類は、人によって違っているようで、油滴天目はさすがの美しさでしたけれど、今の私の気分なのでしょうか、ちょっときらびやかすぎて、夢中にはなれませんでした。例えば白天目の滋味のあるしぶい色味のほうが断然好みです。
ただ17世紀といえば、まだまだ素朴な時代、油滴天目の深く輝いた色味は今よりずっと貴重な、まさに宝石みたいなもので、そりゃあ魅力的だったんだろうと思います。太閤様はきらびやかなものがお好きだったし(^^)
つい特別展だけに注目してしまいがちですが、ここは平常展示もいいものが揃っています。今度ゆっくり見に来たいと思います。
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