やあやあ、まずはお掛けなさい。
器(うつわ)に興味を持つようになってから、ずっと気になっていた『河井寛次郎記念館』に行ってきました。京都の五条坂の古い家が立ち並ぶ住宅街の一角にあるのですが、看板がなければ素通りしてしまうほど、周りの景色に溶け込んだ穏やかな外観です。
今では懐かしい引き戸をからりと開け、細い通路を曲がれば寛次郎作品がお出迎え。古い木造の家屋はどっしりとした質感がとても心地よく、中央に吹き抜けがあって、開放感があります。元は寛次郎の住居兼仕事場で、日本の民家を参考に寛次郎が設計し昭和12年に建築されたものだそうです。
存在感がハンパない神棚兼飾り棚。
朝鮮張に擬したという床はつややかで温かみがあり、限りなく低い床面はそのまま地面に繋がっているような安心感があります。あちこちに窓があり、外と内の世界との隔てがほとんど無いように感じました。家具や道具は作り手の温もりが感じられ、無駄のないその形には、寛次郎が愛した実用の美があります。そして、寛次郎の自由で愛らしい作品たちがあちこちにさりげなく置かれているのです。そこには生活の一つの理想形がありました。土地に根ざし、日々の生活を慈しみ、美を愛し、この世界を構成する一人の人間として、自然や他の生物と共存していく。まさしく一つの宇宙です。
愛らしすぎる造形。
こんなものを作る寛次郎さんは間違いなく素敵な人だったに違いありません。
これはなんでしょうね? ソラマメの空みたいな形をしてます(笑)
季節の彩りも忘れずに。
京都の猛暑を凌ぐために、家の中に風が通るように設計されている窓。この日も見事に通っていきました。
吹き抜けにぶら下がっているロープには滑車がついています。もともとは建設時に資材を運ぶためつけられたそうですが、完成後もそのまま残されていて、2階に作品など重いものをあげる時に利用されているみたいです。
人が集うのが好きだった寛次郎。あちこちに団らんのスペースがもうけられています。
「寛次郎さん、初めまして」
「よう、いらっしゃいました。ゆっくりしていきなさい」(椅子を見て妄想中(笑))
完璧な形の道具たち。
これも手づくり。
台足の形がカワイすぎる。
最近はどこも空調完備で、外気温の高さや湿度への適応範囲が極端に狭くなっている現代人には、こうした造りの家に住むと、もしかして不自由を感じてしまうかもしれません。庭木があるので虫も多く、蚊取り線香が焚かれてるにも関わらず、工房では虫にくわれました(^^;2階への箱階段は急だし、たぶん冬場に板の間はしんしんと冷えるだろうな、と。
でも、その不自由さを補ってあまりある魅力がこの家にはありました。ここにいると不思議に満たされた気持ちになるのは、「この世このまま大調和」という寛次郎の思いが形になっているからだと思います。また、この家で幼少期を過ごした寛次郎の一人娘、須也子さんが数年前に他界なさるまで、館長として大事に守ってこられたのだろうな、というのも感じました。家って人の思いを吸収して成熟していくものですね。
家の中だけでずいぶん写真を撮ってしまいました。
今日はこの辺で。
明日は庭と登り窯をアップ予定です(^^)/