ぶらっとJAPAN

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足の向くまま、気の向くまま。プチ放浪の日々。

実はアートな空間~東京 羽田空港~

2015-04-23 21:16:06 | 関東

 桜の季節もほぼ終わり、ゴールデンウィークが近づいてまいりました。長い休みを利用して遠出をなさる方も多いと思います。

 という訳で、本日は羽田空港のご案内(^^)/

 といっても有名ですから、既にご存じの方は多いかもしれませんが、羽田空港国内線第2ターミナルビルでは千住博画伯の作品がみられるのをご存じですか?

こちらタイトルは「風の渓谷」。千住さんらしい色彩とフォルムです。

横から見るとこんな。

エスカレーターを昇る時に見える「銀河」。天井にあるので、思わず口を開けて見てしまいます。

千住さんは、新幹線新博多駅のアートプロジェクトのディレクターをなさったり、パブリックアートに積極的に関わっていらっしゃいます。

これ、かわいいですよね!

タイトルは「MOOON」。月と牛の「モー」をかけたのかしら?

 今回、ネットで調べるうちにわかったのですが、こちらの作品はもともと2003年に丸の内で行われたパブリックアートの祭典「カウパレード」に出品されたものだそうです。1998年スイスで始まったカウパレード、美大生や有名人などが等身大グラスファイバー(遊具などに使われていて丈夫)製の牛にペイントして町中に展示するという世界各地で大人気のイベントらしいですが、この「MOOON」もその1つだったんですね。

 どおりでみなさん気軽に触ってると思いました。背中に乗る子供も多数。私が行った時は順番待ちの列ができていた(笑)。大人気です。そのため、鼻はすでにはげはげ(^^;

 そのほかにも、到着ロビーには「朝の湖畔」と「夜の湖畔」という作品が展示されているそうですが、残念ながら私は見つけられませんでした。たぶん、搭乗手続きをする人しか見られないのでしょう。

 一番見たかったのは「water shrine」というまさに千住博さんの代名詞「滝」の絵なのですが、これは国際線ターミナルの日本到着ロビーにあるので、海外から日本に到着する人しか見られないんです。

 旅する人たちの無事な帰国を祈るということで「water shrine」(水の神社)なのだと千住さんがおっしゃっているのを聞いたことがあります。パスポート切れてウン十年の私。まあ、見る機会はないでしょうね(T_T)

 悔しいので、地下鉄副都心線新宿三丁目駅で見つけた別の滝をご紹介。

これは、行けばいつでも見られます。嬉しい。千住さん、ありがとうございます(^^)

 2年ほど前に、たまたま千住さんの講演会を聞く機会がありました。ひと言で言うならば、千住画伯は魂の次元の高い人。アートは人間に絶対に必要なものだと信じ、そのために粉骨砕身、絵画に打ち込んでいる方です。

「想像してみてください。小さなコップの中にこの世のすべてを詰め込んでみてください。光、花、木、テーブル、空気・・・。駅やら車やら。コップの中はぎゅうぎゅうになります。集まったエネルギーは耐え切れずに溢れ出す。どかーん。・・・それが宇宙の始まり。エネルギーは多すぎて燃えます。それがビッグバンです」

 講演はこんなたとえ話から始まりました。

「ビッグバンのなかでいろんなものがぶつかってその中から奇跡的に地球が生まれました。その辺に転がっている石ころ。なんのへんてつもない石ころに見えるかもしれませんが、その石ころはいろんなものがぶつかってできた奇跡のかけらなんです。それを忘れないでください」

 なんとロマンチックでなんと美しい物語を語る人なのでしょうか。私は千住さんのお話に夢中になってしまいました。

「COSMETICS(化粧)の起源を知っていますか? COSMOS(宇宙)です。つるつるの人間は不安です。だから原始の人間は石や土を体につけてカモフラージュし、自然と一体になろうとしたんです。私もアマゾンに行った時、最初は不安だったけれど、部族の長が私にネックレスやブレスレットといった飾りをつけてくれた。すると、自然に守られてると感じられるようになり、アマゾンが『自分の森』になりました。遺伝子がめざめるのかもしれない」

 お墓を作るのと装飾物を身につけるのは人間だけなんだそうです。

「飾るとは世界とつながることです」

 千住さんは芸術とは、異物との調和(ハーモニー)なのだとおっしゃってました。それは人間存在の根源的なものであって、だから芸術は絶対に人間に必要なのだと。美は生きる活力であり、喜びなのだと信じてらっしゃるのです。

 千住さんが滝を描くのは、生命の象徴だからだそうです。生きものの生存の条件というのは、適度な温度と、水、それに重力。自分の滝は「水と重力」で描いているのだと。その時に、実際に制作の様子を見せてくださったのですが、ホントにひたすらいろんな道具を使って、絵の具をキャンバスに吹き付けることを繰り返し、その流れていくさまと対話しながら作品を仕上げていくという感じでした。

 仙人ではないのだから、生きていく上ではしがらみとか俗事に関わらなければいけないことも多々あるかと思うのですが、そういうものを一切感じさせずに、芸術の高みを目指すその精神が素晴らしかったです。

 大徳寺の波の絵を描いていた時、その絵を見た和尚から「貴方は『ご縁』を描きたいのじゃね」と言われたそうです。さて、私は一体何を書きたいのでしょうね? 私も美しいものが好きだし、自然が好きだし、だから、私の書く行為は、世界へのラブレターなのかなと思ったりもします。ちょっとカッコつけて言えばこの世のすべてと対話したいみたいな。そのためには、こんなちゃっちい魂では全然役不足なんですけども(^^;

 ただ、私が千住さんのお話を聞けたのもご縁、こうしてブログを読んでくださる方がいるのもご縁。そのご縁をたどって、少しでも千住さんの魂のいる高みへ近づいていきたいなと思います。

「太古の昔、月の形に似た角を持つ牛は、天体の運行を司る使者として、人々から祟められていた。今、このターミナルの作品「MOOON」は、宇宙を仰ぎ、空を見つめ、守護神としてあなたの旅の平安を祈っている。」(作品プレートより)

 

 なお、千住さんの発言に関しては、手元にあるメモをもとに書きましたけれども、私の記憶に基づいて起こしたものですので、何かありましたら全ての文責はわたしにありますことを申し添えておきます。 

 

コメント (2)
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