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without A trace

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遅ればせながら出会ったひとりの男

2005-12-03 | music : newcomer


初めて聴くものは、何かきっかけがないとなかなか最初の一歩が踏み出せなかったりする。
かつてのきっかけは殆んど雑誌のレビューだったが、雑誌を買わなくなった今、CDショップの試聴だったり、ジャケなんかのファースト・インプレッションだったりする。
そしてもうひとつの大きなきっかけは、ブログである。いろんな方々のブログに紹介されているアルバムについての記事を読んで、聴いてみたいという気持ちが湧いたりする。
今回このアルバムを聴く大きなきっかけをくれたのは、いつも遊びに来て下さる 【Good Timin'】 のモスコさん。
そして聴いたアルバムがコレ、Ryan Adamsの 『Cold Roses』。彼の名前は知っていたが、音に関しては全く未知だった。
最初彼の名前を何かの記事で見た時、“Brayan Adams” の間違い・誤植だと思っていたくらいだし・・・(笑)。
そして、2年前くらいにgigolo auntsのフロントマン、Dave Gibbsのウェッブ・サイトのダイアリーで、しきりにRyan Adamsの新作を絶賛しているのを読んだ。
気にはなっていたのだが、当時は他に情報源を見つけることもせず、結局聴かず仕舞いだった。
ところが少し前にモスコさんがRyanのことを取り上げていて、私の音楽の好みを知っているモスコさんは、きっと気に入ると背中を押してくれた。(モスコさんのRyan Adamsのトピはこちら
チェックしてみて、既にたくさんのアルバムが出ていることに驚いた。どれを聴こうか迷ったが、モスコさんが今年リリースしたRyan Adams & The Cardinals名義の2作は、カントリー・ロック / ルーツ・ロック的な音だと教えてくれていたので、どうせならたくさんの曲が聴ける2枚組がいいかなと思い、この 『Cold Roses』 を選んだ。
紙ジャケでゲート・フォールドになっているこのCDは、盤のデザインもレコードのようになっていて、アナログ盤を意識しているかのようだ。
“カントリー・ロック / ルーツ・ロック的な音” というのにちょっとワクワクしながら初めて聴いた彼の音楽は、期待を遥かに越える傑作だった。
カントリー・ロック、フォーク・ロックのルーツ・ミュージック的サウンドから、骨太いロック、胸にしみるアコースティック・ナンバーと、バラエティに富んだその楽曲は、彼のソング・ライティングの器の広さを物語っていて、今まで知らなかった自分を恥じた。
サザン・ロックっぽいちょっぴり土の香りがしたりもして、彼の生まれた町がJacksonvilleというノース・カロライナ州の小さな田舎町だと知り、納得したりもしている。
更に、深く感情込めて歌う彼の歌声は、時には力強く、時には冷たく、時には儚く、時には優しく・・・と言った感じで抑揚がとてもあり、ヴォーカリストとしての才能も伺われる。
2枚組全21曲、どれを聴いても捨て曲がなく、完成度の高い楽曲ばかりだ。
彼は今年3枚のアルバムをリリースすると宣言したそうで、既に2枚リリースし、今月3枚目が発売される。
ここまでクォリティの高い楽曲を、いとも簡単にポンポン生み出すRyan。その多才ぶりは、ただ者ではない。
まずはあと2枚の今年のアルバムを聴いてから、少しずつ過去に遡ってみなくてはと思っている。
そして、かなり遅ればせながら出会ったこの多才な男に、少なからずとも感銘と衝撃を受けている。

シアトル・ミュージック・シーンの原点

2005-12-02 | music : favorite


NirvanaもPearl JamもSoudgardenもみんなここに原点があると、私は思う。
皆、彼の影響を多大に受けていた。もし彼が居なかったら、Nirvanaもあの頃あれほどの注目を浴び、今も語り継がれる存在にまでにはなっていなかったかも知れない。
Andrew Wood ・・・ Seattle幻のバンド、Mother Love BoneのVo.である。
Mother Love Boneは、80年代半ばに活動していた伝説のバンド、Green RiverのStone Gossard(G)とJeff Ament(B)が、Stoneも在籍していたことのあるRose Of The WastelandというバンドのフロントマンAndrewを誘い結成され、89年に 『Shine』 というミニ・アルバムでデビューした。
当時、ジワジワとSeattleの音楽シーンが活気に満ち溢れつつあり、そんな中Mother Love BoneはSoudgardenに続くバンドと称され、群を抜いて注目されていた。
しかしそんな周囲の期待も虚しく、1990年3月にAndrewはオーヴァー・ドーズでこの世を去ってしまった。それが事故なのか自殺なのか、未だ誰にもわかっていない。
生前の89年にレコーディングしていたこの 『Apple』 を90年にメモリアル・アルバムとしてリリース、そしてバンドは空中分解した。
その後、StoneとJeffはPearl Jamを結成し、もうひとりのGのBruce FairweatherはLove Batteryを結成、そしてDrs.のGreg Gilmoreは後にGuns N' Rosesに参加している。
また、StoneとJeffは、SoudgardenのChris CornellとMatt Cameronらと共に、Andrewへの追悼を込めたバンドTemple Of The Dogを結成し、セルフ・タイトルのアルバムをリリースした。
そのアルバムは、彼の死の衝撃、悲しみに打ちひしがれた辛い日々などが歌われ、とても内容の深いアルバムだった。

たった一枚のフル・レングス・アルバム 『Apple』。
AndrewのVo.は、聴けば聴くほど胸が痛くなる。まるで死を察していたかのようにとても哀しげだ。
13曲全てがとても完成されていて、“グランジ” というひと言ではくくりようのない素晴らしい楽曲の数々。
歌詞は全てAndrewの手によるものだが、曲はAndrewとStoneとJeffが書いている。メジャー・コードの曲は、バラード・ナンバーのM-6 「Stranger」 1曲だけ。
M-1 「This Is Shangrila」 やM-3 「Holy Roller」、M-8 「Captain Hi-Top」 なんかは、ダークで重圧のある音がめちゃくちゃカッコいい。
Andrewを支えるStoneとBruceのツイン・ギターは、彼のVo.の邪魔をすることなく、それでいて実に痺れるようなカッコいいリフをさり気なく聴かせ、JeffとGregのリズム隊は、ヘヴィでぶ厚いビートを刻む。
M-9 「Man Of Golden Words」 やM-11 「Gentle Groove」 のAndrewが作ったメロディはとても悲しく、詞の世界も切ない。何度聴いても胸がジーンと熱くなる。
バンド名 “Moter Love Bone” のフレーズが歌詞に出てくるM-10 「Capricon Sister」 は、やり場のない怒りをぶつけているかのようなサウンドだ。
どの曲を聴いても、全身全霊を曲にぶつけ、本能のままに音楽を作り出しているという感じが心の奥底まで伝わってくる。

私はStone Gossardの奏でるギターが好きで、Green River → Mother Love Bone → Pearl Jamと聴いてきたが、今でもいちばん好きなのはMother Love Boneである。
そしてこのバンドを通過してきたことによって、複雑に枝分かれして絡み合う、シアトル・ミュージック・シーンのファミリー・ツリーにかなり詳しくなった。

長く聴き続けることのできる一枚

2005-12-01 | music : normal


デビュー当時は偉大なる父親の名声もあり、それだけで話題になっていた息子・・・。
しかし、そんなバック・グラウンドなどお構いなしに、マイ・ペースで自らのバンド活動を地道に続けてきた息子。
そして、2ndアルバム 『Bringing Down The Horse』 でグラミー賞を受賞したものの、特に大ブレイクをしているわけでもないが、固定ファンは離れることなく、彼らの音楽を愛し続けている。
彼の名は、Jakob Dylan。そう、言わずと知れたBob Dylanの息子である。そのJakob Dylanのバンドが、The Wallflowers。
私は特に彼らの音楽をずっと聴き続けている訳ではないが、この度ニュー・アルバムが出て、そのプロデューサーがBrendan O'Brienということと、新しいDrs.として元gigolo auntsのFred Eltringhamが正式に加わったということもあり、2年半ぶりの5thアルバム 『Rebel Sweetheart』 を聴いた。
The Wallflowersを聴くのは、96年にヒットした2ndアルバム 『Bringing Down The Horse』 以来。
M-1 「Days Of Wonder」 のイントロを聴いて、我が耳を疑った。えっ!? コレWallflowers??と・・・。
私の彼らのサウンドのイメージは、自分たち流の良質のクラシック・フォーク・ロックを生み出し、ハモンド・オルガンを主体としたアレンジで、どこかノスタルジックな雰囲気をかもし出している、と言った感じだった。
ところが、突き抜けるような明るくてポップなサウンドが流れてきたのだ。アコギに絡むDrs.のビート、続く流れるようなギター・メロ。そしてちょっとハスキーで少し鼻にかかったJakobのVo.が入る。めちゃくちゃのびのびとしている。いったい何があったのか? と思わせるほど明るい。
続く 「The Passenger」 もM-3 「The Beautiful Side Of Somewhere」 もとてもポップ。ピアノとオルガンの音色が弾けていて、アコースティックなノリのいい曲だ。
なんか、もう泣けてくるほどにメロディがポップで、まだWallflowersを聴いている気がしない・・・。
ん~~~、これはかなりFred加入の影響があるのかも知れない。Fredは、99年にauntsを離れたあと、Juliana HatfieldやTears For Fears、Judeなど様々なバンドのツアー・メンバーとして活動していて、2003年にWallflowersのツアーに参加した。
彼は曲も作るし、レコーディングなどのエンジニア的な知識も豊富で、バッキング・ヴォーカルもできる。
そんなFredのポップ的センスが、少なからずともJakobに影響を与えているのだろう。そして、このアルバムでのFredのビートの効いた音は、欠かせないスパイスとなっている。
M-4 「Here He Comes (Confessions Of A Drunken Marionette)」 やM-8 「I Am A Building」、M-10 「Nearly Beloved」 なんかは、Tom Pettyあたりのサウンドを彷彿とさせる。
M-6 「God Says Nothing Back」 で、少しダークな感じになる。パーカッションを効果的に入れた、哀愁の入り混じった曲。コーラスもムーディだ。
M-7 「Back To California」 に至っては、疾走感溢れる王道のアメリカン・ロックと言った感じで、マイナー・コードからメジャー・コードのサビへの展開など、Jakobのソング・ライティングの才能が弾けている。
M-9 「From The Bottom Of My Heart」 ではガラッと雰囲気が変わって、しっとりしたバラードで、初期のWallflowersっぽい曲。もの哀しく流れるアコギの音が切ない。
M-11 「How Far You've Come」 は、ピアノとウッド・ベースの音がもの憂げに響く、優しいバラード。静かな曲だが、元気付けてくれる内容の歌詞がステキだ。
そして、掛け合いのコーラスが素晴らしい、ポップで軽快なM-12 「All Things New Again」 で終る。

予想以上、期待以上でかなりいい。私は父親Dylanのあの声が苦手なので代表曲くらいしか知らないが、息子は私好みのサウンドを届けてくれた。
そして、もはやもう誰も “Bob Dylanの息子のバンド” という言い方はしないだろう。いや、今までもそんなことを言ってるのは世間だけで、当の本人は “I don't care.” だったはず。
大袈裟な狙いをせず、オーソドックスにロックを奏で続けてきたJakobの姿勢が、このアルバムに込められている。
このアルバムは、一度聴いただけでとっても気に入り、長く聴き続けることのできる一枚に出会えたと思っている。
それにしても、Brendan O'Brienのプロデュース作にハズレはない。音を全く知らなくても、彼の名があれば聴いて損しないと言っても過言ではないかも知れない。