【荒れる海を見たあと、歴史的戦闘跡地へ】 29/11/09 : ベクスヒル~バトル
滞在3日目は、近郊の街に列車で日帰りの旅。
英国の列車が遅れることは日常茶飯事、中には突然運行休止ってこともあるので、事前に列車を決めてチケットを購入することはせずに、いつもパスを使う。
今回もイングランド・スコットランド・ウェールズの鉄道が連続8日間乗り放題の、ブリットレイル・コンセキュティブ・パスを使った。
使用前にヴァリデイト(パスを有効にする手続き)が必要なので、少し早めにVictoria(ヴィクトリア)駅に行った。
日曜日の朝だったので、窓口は空いていた。有効期間を係員が記入するのだが、8日間連続乗り放題で使用開始が11月29日だから12月6日までなのに、窓口のおじさんったら、パスそのものの有効期限を書いていた。いい加減だなぁ・・・。でも、車内検札は厳しいので誤魔化せない。
英国の鉄道は民営化されていて、日本みたいに地域ごとだけではなく、いろんな鉄道会社が同じ路線を運行している区間もある。Victoria駅から利用したのは、Southern(サザン)。発車時刻5分前にやっとホームが決まり、Hastings(ヘイスティングズ)行きの列車に乗り込んだ。まず最初の行き先は、East Sussex(イースト・サセックス)の海辺の街Bexhill(ベクスヒル)。
Calling atは途中停車駅のこと 車内はガラガラ
左上がブリット・レイル・パス。これから向かうBexhillとBattle(バトル)は、ガイドブックなどには載っていない小さな街。でもこのガイド・マップは、それぞれ無料で送ってくれたもの。太っ腹~!
出かける時に一旦止んだ雨は、Victoria駅に着いた頃再び降っていた。でも列車が動き出して進んで行く内にどんどん晴れてきて、虹が見えた。
途中駅のBrighton(ブライトン)では積み木のように規則正しく並んだ家を、Eastbourne(イーストボーン)を過ぎた辺りでは、石灰岩の白亜の崖壁を車窓から見ることができた。
やがて海岸線沿いに列車は走り、ロンドン・ヴィクトリア駅から約2時間、ベクスヒルに到着。
乗ってきたSouthernの列車
それなりの人数が乗り降りしたが、駅前はガランとしていた。道の向こうに海が見えた。海岸沿いへと続く道は、その名もSea Road。途中に古い教会があり、教会好きの私はちょっと気になったが、この街の滞在予定時間は限られているので通過。
やがて視界いっぱいに海が広がってきた。強い風が吹き、時々飛ばされそうになるくらいの突風が吹きすさぶ中、目的の場所へと海岸線を歩いた。
夏のシーズンは、海辺のリゾート地としてビーチが賑わうこの街も、11月末ともなれば閑散としていた。でも海岸沿いの遊歩道では、地元の人たちが元気に犬の散歩やジョギングをしていた。
途中、送ってもらったガイド・マップの表紙にあった面白い形をした展望台(タイトル写真)から、白い波を立てるイギリス海峡の荒れる海を眺める。風は冷たいが、寒くない、気持ちいい!
荒れるイギリス海峡
さて、いったいこの街に何があるのか? 目的は何なのか? それはここ!
Sovereign Light Cafe
イースト・サセックス州出身の私が好きなバンドKeane(キーン)の新曲のタイトルが、このカフェの名前 「Sovereign Light Cafe」(ソヴリン・ライト・カフェ)なのだ。
何の変哲もない平凡なカフェだが、地元の人にはお馴染みの人気店のようで、丁度お昼前ということもあってか、店内のテーブルの半分はリザーブで、海が見える窓側の席は満席だったし、テイクアウトで買って行く人も多かった。
セルフ・サービス・スタイルで、フルーツ・スコーンと紅茶をカウンターでオーダーし、スコーンが温まるのを待っている間、対応してくれた若い店員の女の子に聞いてみた。以下、その子と私の会話。
私 : Keaneっていうロック・バンド知ってる?
♀ : んー知らない・・・。
私 : (マジ?いや、そんなはずはない、私の発音のせいか?と思いもう一度)Keaneよ、UKのバンド。本当に知らない?
♀ : (少し考えて)あっ、知ってる。Keaneね、あまり音楽は知らないけど名前は知ってるわ。
私 : このお店の名前が、彼等の新曲のタイトルになってるのよ。知ってた?
♀ : ううん、知らなかったわ。でも本当?
私 : 本当よ! だからここに来たの。
♀ : それはすごいことだわ。
私 : YouTubeで聴いてみて。
♀ : OK!
手作りのスコーンは、ちょっとパサパサしていたけど美味しかった。
向いのテーブルに座った小さな女の子がずっと私の方を見ていて、最初は手を振ったり目くばせしたりして相手していたのだが、あまりにも凝視するので困った。それを察したのか、お父さんがジュースを飲ませたりして気をそらせていた。“彼女にはきっとアジアのストレンジャーの私が珍しいと思うので、気にしないで” と言ったら、お父さんは “すみません、ありがとう” と言って申し訳ないという表情をしていた。実際、列車の中でも街でも日本人は当然、東洋人は見かけなかったし・・・。
スコーンはヴォリュームがあり、お腹いっぱいになった。そしてカフェをあとにし、駅に向かった。
調べておいた列車は定刻で到着し、ひとつ先のSt. Leonards Warrior Square(セント・レオナルズ・ウォリアー・スクエア)という駅で乗換。8分の待ち時間の間、外に出ててみると、駅前の風景は結構可愛い街だった。
可愛い街だけど誰もいない・・・
乗換列車はSoutheastern(サウスイースタン)が運行する列車で、12分で次の目的地(この日のメイン)、バトルに到着した。「戦い」 という意味の英語 「battle」 は、ここの地名が語源。
実は旅行の計画を立てている時、当初この日はマンチェスターに行ってThe Enemy(エナミー)のライヴを見るつもりだった。
ところが、1ヶ月前くらいにナショナル・レイルのHPで列車の運行を調べていると、もしマンチェスターに行くと次に移動する街への路線がEngineering work(いわゆる保線工事)期間中で、列車の運行がないことがわかった。
そこで別のプランを考えている時、丁度読んでいた英国の歴史の本の中に “ヘイスティングズの戦い” が出てきた。そして、その歴史的戦闘の舞台となったのは、ヘイスティングズではなくバトルだということを知った。
ん?バトル? Keaneの出身地ではないか! そこで断然興味が湧き、バトルのことを調べていると、とても興味深い “ヘイスティングズの戦い” ゆかりの場所があった。
UKでのThe Enemyのライヴは体験してみたかったが、彼等のライヴは今年見てるし、次に行く街を変更するつもりはなかったのでマンチェスター行きはやめて、バトルに行くことにしたのだった。
バトルはヘイスティングズよりも内陸部にあり、ロンドンからのルートを調べていると、カフェのあるベクスヒルにも行けることがわかり、立ち寄ったというわけだ。
駅名の下には戦いの地であることと兵士と武器の絵が記されていた
可愛い駅舎
KeaneのTomとTimの学校は、バトルよりも更に内陸にあるTonbridge(トンブリッジ)のパブリック・スクールで、寄宿制だから毎日通うということはなかっただろうが、ホリデーの時なんかはこの駅を利用していたんだな~とか、みんなこの道を歩いていたんだな~なんて思いながら歩き、10分ほどで “ヘイスティングズの戦い” ゆかりの地、Battle Abbey(バトル・アビー)がある街の中心に着いた。
街の中心までは一本道 右手に街いちばんのセント・メアリー教会を見ながら
石の壁に沿って歩いて行くと・・・
街の中央広場に到着、振り返ると・・・
バトル・アビーがでーん!
★「Day3 ②」 につづく。