Cameron Crowe監督の自伝的映画 『あの頃ペニー・レインと』(原題 : Almost Famous) は、音楽好きなら殆んどの人が観ているだろう。
そして、私の大好きな映画のひとつ。TSUTAYAの旧作レンタル半額期間ということもあり、久しぶりにこの作品を観た。今回で3度目。
実際にUSの有名音楽誌Rolling Stoneのライターだった監督自身の体験を元にしたこの作品は、青春音楽映画の傑作。
そしてこの邦題は、主人公の少年ウィリアムの淡い恋心を的確に表現している。
時は70年代。音楽好きの姉からもらったロックのレコードを聴いて、ロックの虜になった15歳の少年ウィリアムは、音楽雑誌 “Cream” の伝説的なライターに自分の記事が認められ、その後大手 “Rolling Stone” 誌からオファーを受ける。
ブレイク寸前のロック・バンド、Stillwaterのツアー同行取材を任され、そこで逢ったグルーピーの中で、一際美しく輝いていたペニー・レインに恋をする。
ペニー・レインはバンドのギタリストといい仲で、叶わぬ恋。それでも彼のペニーを一途に想う恋心はピュアだった。
ペニー・レインは、グルーピーではなく “バンド・エイド” だと主張するウィリアム。
そしてそれは、挫折や屈辱を味わった彼の旅が終っても、いつまでも “あの頃” のペニー・レインが彼の心の中に居続けるのだ。
ペニー・レインを演じたのは、最近では 『10日間で男を上手にフル方法』 で主演したKate Hudson。
私には、The Black CrowesのChris Robinsonの奥さんというイメージも強い。
彼女は本当にキュートで、存在感があって惹き付けられてしまう。中でも笑顔が最高にキュートだ。

正に適役で、甘くて切なくて情熱的で、どこか寂しげなペニーを好演している。
今回ペニーを演じている彼女を観ていると、去年のCrowesのステージ横上のバルコニーから見ていた本来のKateとダブッてしまった。
この作品が製作されたのと同じ2000年に結婚した彼女だが、ロック・スターを愛するという役に見事に溶け込んでいる。
そんな彼女ともうひとり、ウィリアムのお母さんを演じたFrances McDormandも、もの凄い存在感があった。
教師である厳格な母親が、自分の反対や忠告を押し切ってまで突き進む我が子の行動を厳しく批判しつつ、それでも徐々に理解し、心の中では認めているという複雑で繊細な心境を、素晴らしく表現して演じている。
また、煮詰まったウィリアムにいろいろアドヴァイスをする伝説的なライター役のPhilip Seymour Hoffmanも、いい味が出ていて欠かせないし、ウィリアムに心を開くロック・バンドのギタリスト役のBilly Crudupもなかなかいい。
そして、やはりこの映画に欠かせないのが音楽。担当したのは、監督の奥さんでもある、HeartのNancy Wilson。
Nancyは、お姉さんのAnnと共に大のLed Zeppelinのファン。その影響もあって、ウィリアムはZepを熱く語り、Zepの音楽も効果的に使われている。
ツアー・バスの中でElton Johnの 「Tiny Dancer」 をみんなで歌うシーンは、亀裂が生じていたバンドがまたひとつになった瞬間を物語っていてとてもステキだ。
そして、飛行機事故で死ぬかも知れないと悟った時のひとりひとりの暴露大会では、みんなそれぞれ勝手なことを言いまくり、笑わせてくれる。
この飛行機事故のシーンは、Lynyrd Skynyrdの飛行機事故がモデルになっているとも言われている。
その後の、“二度と飛行機ではツアーしないツアー” と書かれたツアー・バスが再び登場した時も、クスッと笑ってしまう。
日本公開時のキャッチ・コピー、“君がいるから、すべてがキラキラまぶしい15歳” というのがそのまんまの、甘酸っぱい青春の思い出をロックと共に爽快に描き、オープニングの手書きのクレジットも粋で、何度も観たくなる作品だ。
★☆★music on this movie (select)★☆★
「America」 Simon & Garfunkel
「Sparks」 The Who
「It Wouldn't Have Made Any Difference」 Todd Rundgren
「Feel Flows」 The Beach Boys
「Every Picture Tells A Story」 Rod Stewart
「One Way Out」 The Allman Brothers Band
「Simple Man」 Lynyrd Skynyrd
「That's The Way」 Led Zeppelin
「Tiny Dancer」 Elton John
「ucky Trumble」 Nancy Wilson
「I'm Waiting For The Man」 David Bowie
「The Wind」 Cat Stevens
「Something In The Air」 Thunderclap Newman