売れない作家 高村裕樹の部屋

まだ駆け出しの作家ですが、作品の情報や、内容に関連する写真(作品の舞台)など、掲載していきたいと思います

月食

2014-10-08 21:07:22 | 日記
 今夜は3年ぶりの皆既日食です。観測条件もとてもいいとのこと。
 私もさっそく写真を撮りました

 

 カメラは一眼レフを使いたかったのですが、今は古いオリンパスのE-500しかなく、レンズも標準ズームのみです。
 それで富士フイルムのコンパクトデジカメ FinePix F600 を使用しました。
 皆既では光量が足らないせいか、全くピントが合いませんでした
 やはり一眼レフと長焦点レンズがほしいと思います。
 天体望遠鏡は何台か持っていましたが、友人の子供に譲ってしまいました。
 本が売れたら新しく一眼レフカメラや天体望遠鏡を買うつもりですが、なかなか本が売れません……。

 8時頃から雲が出てきて、現在月が隠されてしまいました

『幻影2 荒原の墓標』最終回

2014-10-04 01:19:07 | 小説
 38回に渡り掲載してきた『幻影2 荒原の墓標』は、今回がいよいよ最終回です
 読んでくださった方、ありがとうございました
 もし私の作品に関心を持っていただけたら、本を買っていただけるとありがたいのですが。もちろん強制は一切いたしません。

 



       エピローグ 


            1

「徳山優衣さんのお姉さん、久美さんのことがわかりました」
 美奈はある夜、うとうとしていたときに、千尋からメッセージを受け取った。
 千尋の話によれば、山岡に殺害された久美は、その後しばらくは暗くて寒い、じめじめした地獄のような霊界に堕ちていた。そこはかつて千尋自身がいたところによく似た陰惨な霊界だそうだ。最近、ようやく久美は自分の死を悟り、また弱い立場のお年寄りを食い物にしていたことを、反省することができるようになった。
 多くの霊は、そうなれるまで、人間界の時間にすれば、何十年、何百年とかかるのに、久美は早く気づくことができた。それは、千尋と多恵子に諭され、白銀のオーラを浴びることによって浄化が進んだ、宏明の霊が導いたからだった。
 宏明も久美を死なせてしまったことを悔いていた。だから、千尋のオーラで浄化された宏明は、少しでも久美の役に立ちたいと、漆黒の霊界でずっと久美を捜していたそうだ。
 宏明はかなり霊として向上していたので、暗い霊界を旅することは、非常な苦痛を強いられる。霊界というところは、その霊の精進の度合いにより、住むべき世界が決定される。それに従わず、自分の境界(きょうがい)に合わない霊界に行くことは、絶大な苦しみとなるのだ。ときには邪悪な霊に挑まれ、過酷な戦いをしなければならないこともある。宏明はそんな苦しみを覚悟の上で、自らの意志で果てしのない地獄のような霊界に、久美を捜しに飛び込んだ。
 そしてとうとう久美を捜し当てた。宏明は苦しむばかりで話を聞こうとしない久美に、諄々と霊界の掟を説いた。自分にはもう死んで肉体がないことに気づき、少しでも高い霊界に行けるよう、精進しようと説得した。そして久美を死なせてしまった自分の非を詫びた。
 それでも久美は苦しむばかりで、宏明の存在に気づこうともしなかった。それで宏明は、千尋がやったように、久美に対して白銀のオーラを発することを思いついた。それはなかなかうまくいかなかった。まだ宏明自身、そのようなオーラを出せるまで向上できていなかった。しかし、ぜひとも久美を救いたいという一念で、千尋を思い、千尋にどうかあのときの力を自分も出せるようにと祈った。その祈りは、強く純粋なものだった。それで宏明は千尋に対し、思いの架け橋ができ、宏明を通して、千尋の白銀のオーラを久美に浴びせることができた。
 その光を浴び、久美は徐々に浄化されていった。また宏明自身も千尋のオーラを浴び、さらなる向上をすることができた。
 それで、宏明も久美も地獄の境界を脱することができた。
 大岩、佐藤、山下の三人は、しかるべき地獄のような霊界に赴いたそうだ。そこで数百年、数千年もの長い間苦しみながら反省をし、自分が犯した罪を償うことになる。
霊界というところは、思いがすべての世界だ。どんな悪業を犯し、深い地獄に堕ちたとしても、心から反省をして、霊としての精進を固く誓えば、やがては救われる。しかし多くの悪霊たちは、反省の気持ちを抱かず、心の赴くまま地獄で悪鬼と化して暴れ回る。そのような霊たちは、何千年、何万年、いや、場合によっては、何億年という気が遠くなるような長い間、地獄界で苦しまなければならない。仏教では八大地獄などが説かれるが、実際に無間(むげん)地獄のような恐ろしい霊界は存在する。地獄というと迷信のように思われるが、霊界とは人間の肉体を離れた、形態を変えた生命体が赴く、異次元の世界なのだ。
千尋の話は美奈の心の中で、映像としても感知できた。一瞬美奈の心のスクリーンに、大岩たちが堕ちた、戦慄すべき地獄界の光景も映し出された。
宏明と久美の話を聞いて、美奈は自分のことのように嬉しく思った。さっそく優衣と裕子にその話を教えてあげたい。美奈は翌日、北村に連絡し、優衣に会えるよう、取りはからってもらった。美奈は南木曽岳に行ったとき、また会いましょうと約束しながら、優衣と携帯の番号やメールアドレスを交換するのを忘れていた。次の土曜日の午前中、美奈が出勤する前に、金山のファミレス、Dで会うことにした。以前、優衣と北村が待ち合わせた店だ。そのときには北村も同席する。
 美奈は北村に、秋田の妹の裕子が来てもいいかを優衣に確認してもらった。裕子の兄は久美を殺害している。実行したのは山岡という凶悪な男ではあるが、久美を殺すように仕向けたのは宏明の霊だった。だからある意味、裕子は久美の敵(かたき)の妹だ。優衣にはそのことを事前に説明し、承諾を得ておかなければならない。
 それに対し、優衣は姉こそ宏明が暴行されたとき、見殺しにしたのだから、私のほうこそお詫びしなければならないと言って、了承してくれた。それでその場には裕子も参加することになった。

 裕子はオアシスに復帰した。美奈はあと三ヶ月ちょっとで退職になるが、辞めてもずっと親友よ、と誓い合った。裕子はあの日、兄と自分の危機を救ってくれた美奈には、感謝してもしきれないと言った。裕子は恵と美貴がいる間は、オアシスを辞めないと宣言した。そしてもし恵がオアシスを辞めてから、喫茶店をやるのなら、ぜひとも一緒に働かせてもらいたいと希望した。美貴が 「それならあたしも一緒にやる。みんなで“ケイ”を盛り上げようよ」 と賛同した。喫茶店の名前は、恵のオアシスでの源氏名“ケイ”をそのまま使おう、と話し合っていた。恵(めぐみ)の“恵(ケイ)”でもある。
「それじゃあみんな、お願いね。一緒に私たちのお店、作ろうよ」
 恵は大いに盛り上がった。あと二年はオアシスで働いて、しっかり資金を貯めて、みんなでお店をやっていく。店の資金は美貴たちも協力してくれるという。こんな素晴らしいことはないわ、と恵の瞳が輝いた。

            2

優衣、裕子とDで落ち合う日となった。美奈は約束の時刻より、少し早く着いたと思ったら、優衣と裕子はすでに来ていた。初対面なのに、なぜかお互い、すぐわかったそうだ。二人は敵(かたき)同士のはずなのに、もうすっかり打ち解けているようだった。裕子は左腕のタトゥーも、優衣に見せていた。約束の時間ぎりぎりに、北村が飛び込んできた。
「ごめんごめん、新聞の連載ものがなかなか書けなくて、徹夜だったんで、寝坊しちゃいました」
 北村は照れ笑いをした。北村がさっそくみんなで自己紹介を、と言ったら、 「私と裕子さん、もうずっとお話しして、打ち解けてますから、必要ないですよ」 と、優衣がやんわりと断った。
「ところで美奈さん、文学舎から連絡来ましたか?」
 北村が美奈に尋ねた。
「はい。久保田さんという女性の方が担当になってくださいましたが、けっこう有利な条件で出版していただけるそうです。本が上梓されるのは、来年春ごろの予定です。これも先生のおかげです。ありがとうございました。近いうちに東京の文学舎まで、挨拶に行こうと思います」
 美奈の場合はベテランの北村とは違って、校正をじっくりやるため、本が出るまで時間がかかる。
「担当、久保田女史ですか。彼女、やり手なので、なかなか大変になりますよ。僕が知ってる女性作家も、彼女によく尻を叩かれてました。そうそう、出版するとき、僕が本の帯に推薦の言葉を書いてあげますよ。知り合いの評論家にも口添えしときます」
 北村は美奈に協力を約束した。
「え、美奈さん、本出すのですか?」
 美奈が小説を出版する運びとなっていることをまだ知らない優衣が尋ねた。北村が代わって美奈の作品のことを絶賛しながら、優衣に説明をした。
「そうなんですか。美奈さんもこれで作家の先生なんですね。おめでとうございます」
 優衣が美奈の処女出版を祝った。
「そんな、先生だなんて。まだどうなるかわかりませんわ。一冊だけで消えてしまうかもしれませんし」
 美奈は謙遜した。
 まずは料理をオーダーした。昼食には少し早めだが、美奈は食事をしていくことにした。昨夜は仕事で遅くなり、朝起きて軽く化粧をして、すぐ家を飛び出したので、眠気覚ましに、コーヒーをカップ一杯飲んできただけだった。
 みんなが食事を終えてから、美奈はなぜ優衣と裕子に来てもらったかを説明した。千尋から聞いたことを、わかりにくいことを補足しながら、美奈は二人に伝えた。
「嘘、そんなこと、すぐには信じられない」
 優衣が最初に口を開いた。
「私は信じます。だって、私は直接兄の霊と話をしましたし、危ないところを兄と千尋さんに助けてもらったんです」
「僕も、裕子さんのお兄さんが告白する場面にいたので、信じますよ。信じざるを得ない。武内という男がとうてい知り得ない、南木曽岳でのことも言っていたので、決して武内の芝居じゃない。その時点では裕子さんも知らなかったことだから、裕子さんが事前に武内に教えたわけでもないですよね」
「はい。私は北村先生のプライバシーを、裕子さんには話していません。刑事さんだけには、必要があったので話しましたが」
 美奈も武内が言っていたことは、決して事前に打ち合わせておいたことではないことを誓った。それに、美奈でさえ知らないことまで武内は話していた。
「すると、裕子さんのお兄さんが、私の姉を霊界で救ったのですか?」
「はい。ある程度浄化された霊が、暗い霊界に行くのは、すごい苦痛が伴うのだそうです。苦痛を和らげる肉体がなく、ストレートに精神に作用するので、私たちがこの世界で味わう最大の苦痛の何十倍、何百倍もの苦しみを味わうそうです。でも、裕子さんのお兄さんの宏明さんは、久美さんを死なせてしまったことを詫びるために、自らその苦しい世界に飛び込み、さんざん苦しみ抜いた果てに、久美さんの霊を救うことができたのだそうです。今では久美さんも宏明さんも救われて、高い霊界に一緒に行っているそうです」
「ということは、姉はもう成仏できたということですか? あれだけ詐欺なんかで悪事を重ねた姉が、救われたということですね?」
「はい。仏教の用語でいう、厳密な意味での成仏とはいえませんが、霊界で救われ、今は高い霊界に行き、さらに向上するために、修行をしているそうです。きっと近いうちに、守護霊になれるほどに向上して、優衣さんや裕子さんを守護してくれるようになると信じています」
 美奈は成仏という意味を詳しく説明することはせず、霊界で救われているから、何の心配も要らないと保証した。
成仏という言葉についての正しい意味は、住職の兄でも知らないだろう。ただ南無阿弥陀仏を唱えるだけで極楽浄土に往生できる、というものではないのだ。あくまでも美奈個人の考え方ではあるが、悪人正機説は正しいとはいいがたい。本当の成仏というのは、死んでから救われることではなく、生きているうちに、罪障や悪因縁を解消し、絶対的な幸福の境地を得ること、すなわち仏陀に成ることである。生きているうちに成仏できれば、もちろん死後も安穏である。そのためには、釈迦が遺した厳しい修行をして、煩悩や悪因縁をすべて消滅させなければならない。あるいは本当に正しい、力のある仏様や御本尊様の御許(みもと)で布教、広宣流布のお手伝いをして、徳を積まなければならない。美奈はそう考えている。だから美奈は、霊界で救われたと表現した。
「姉は秋田さんと親しくしていたようです。でも、姉は秋田さんを見殺しにしたそうですね。だから、姉が秋田さんの霊に殺されたと聞いても、裕子さんを恨む気にはなれません。逆に裕子さんに申し訳ない気持ちでいっぱいです。それに本当に姉を殺したのは、秋田さんではなく、山岡だったというし」
「私も兄の霊から、二人はお互い好意を持っていたと聞きました。兄は優衣さんのお姉さんが兄を見殺しにしたと思い、死なせてしまいましたが、兄はあとになって、久美さんは見殺しにしたのではなくて、止めたくても怖くて止められなかったんだと気づき、死なせてしまったことを、すごく後悔したそうです。だから、兄はそのお詫びに、どんなに苦しい目に遭おうとも、霊界で久美さんを助けようとしたのでしょうね」
 裕子は兄の気持ちを思うと、涙があふれてきた。
「そうです。そして、霊界で今度こそ、宏明さんと久美さんは結ばれることができたのです。二人連れだって、高い霊界に向上していきました。今は二人とも、救われたのです」
 美奈も説明しながら、涙が頬を伝った。
 そのとき、千尋からのメッセージが美奈の心に響いた。
「美奈さん。これから宏明さん、久美さんの言葉を、美奈さんの身体を通じて、二人に伝えます。以前、宏明さんが武内の身体を借りたようにです。すみませんが、しばらく無念無想になっていただけますか」
 美奈は千尋の伝言を優衣と裕子に伝えた。言ってみれば、いたこの口寄せのようなものだ。
「え、本当に姉の言葉を聞かせてもらえるのですか?」
 優衣は驚いた。
「はい。これから私の守護霊の千尋さんが、私の身体を使って、お姉さんからの伝言を伝えてくれるそうです。それが嘘ではない証拠を示すために、優衣さんとお姉さんしか知らないことを、質問してみてください。もし私が勝手に言っているだけなら、その質問には答えられないはずです」
 美奈は座席にゆったりとかけ、メガネを外した。そして雑念を振り払った。トランス状態というほどのものではないが、何も考えないようにした。すると、自然と口が動いた。漏れた声も、美奈の声でありながら、久美にも似た声になった。
「優衣、私は久美。あんたのお姉さんだよ。今、ちょっとだけこの人の身体を借りてるの」
「お姉ちゃんなの? 本当にお姉ちゃんなの?」
「疑うのなら、何でも質問してみてよ。私と優衣しか知らないことを」
 優衣は子供のころのことを二つ質問した。そして、ずばりと正解した。
「間違いない。お姉ちゃんだわ。本当にお姉ちゃんだわ」
 優衣はそれが本物の姉に間違いないことを確信し、涙を流した。
「優衣、ごめんね。私、悪いことをして、そのあげくに死んでしまって。でも、私はヒロちゃん、秋田さんのこと、全然恨んでいない。それどころか、私を辛い地獄から救い出してくれた、大恩人なの。だからそこにいるヒロちゃんの妹さんとは、仲良くしてちょうだい。あなたたち、さっき、初対面なのにすぐお互いがわかり、親しく話ができたのは、私とヒロちゃんがそのように念波を送ったからなのよ。私はこれからヒロちゃんと二人で、霊界でさらなる向上のために修行をする。そして、あんたを守護できるだけの力がついたら、守護霊として護ってあげるからね。それまでしばらく、待ってちょうだい。いいわね。死はすべての終わりじゃなくて、新しい生の始まりなの。永遠の霊界で生きる、霊としての新しい生の誕生なの。だから、悲しまないで。私はいつも優衣とも、お父さんお母さんとも一緒だから。いつまでも悲しまれていたら、かえって私も辛いから。わかったわね」
「わかったわ、お姉ちゃん。私、強く生きる。お父さん、お母さんにも、いつもお姉ちゃんが一緒だということ、伝えておくね。でもよかった。お姉ちゃんが救われて。秋田さんにもお礼を言うわ。お姉ちゃん、霊界で秋田さんと、幸せにね」
 優衣はここまで言うと、もう涙で何もしゃべれなくなった。
「じゃあ、私、もう行くからね。元気でやるのよ」
 久美は別れの言葉を述べて、美奈の身体から去った。続いて宏明が美奈の身体を借りた。
「ゆう、この前は俺の力が足らないばかりに、怖い思いをさせて、ごめんな」
 今度は美奈の声が男のように変化した。
「お兄さん、お兄さんね。またお兄さんと話ができて、ゆう、嬉しい。この前は、お兄さん、ゆうのために、凶悪な霊に立ち向かってくれたんだもの。お兄さんが謝ることなんか、全然ない。お父さんもお母さんも、お兄さんのこと話したら、泣いてたよ。お父さん、もっとお兄さんのこと認めてやるべきだった、許してくれ、と謝ってた」
「そうか。父さんとはもっと早く仲直りしたかった。俺がひねくれていたばかりに、父さんにも悪いことをした。俺はあのとき、美奈さんの守護霊の千尋さんから力をもらって、救われたんだ。本来なら、何十年、何百年と、暗い寂しい霊界で、一人で反省していなければならなかったところを。霊界でも、千尋さんのおかげで、久美を救うことができた。白銀の光を浴びせてもらったおかげで。ゆうの友達には、いくら感謝しても、感謝しきれるものではない。どうか、ゆうは俺の代わりに、恩人の美奈さんとずっと友達でいてやってくれ。そして、久美の妹さんとも。俺が言いたいことは久美と同じだ。俺も霊界で、もっと修行をして、必ずおまえを護ってやるよ。だから、しばらく待っていてくれ。また戻ってくるからな。それじゃあ、あまり長いこと身体を借りると、美奈さんに負担を強いるから、俺はもう行くぞ。俺は生きているときには、人としての道を踏み外してしまったが、ゆう、おまえは幸せになれよ」
「お兄さん、ゆうは絶対幸せになる。だからお兄さんも安心して」
 裕子の顔も涙でくしゃくしゃだった。美奈は自分を取り戻した。
「美奈さん、すごいです。本当にこの世の奇跡を見る思いですよ。美奈さんにはこんな超能力があったんですね。あまりに現実離れしすぎて、とても僕には作品にできません。ぜひ美奈さんが作品にまとめてください」
 北村はもらい泣きをした恥ずかしさをごまかすために、おどけたような言い方をした。
 思えば美奈がこの事件とかかわる発端は、北村が初めてオアシスの美奈のところに来た翌日、秋田の霊に接触したことにあった。そして結局この一連の事件にかかわり、藤原岳では恐ろしい体験をすることになった。
 しかし、宏明と久美が救われ、親友の裕子も兄との絆を強めることができた。優衣も姉が犯罪を犯したことで悩み、家族も崩壊の危機にあった。けれども、きっと優衣の家族は立ち直ることができるに違いない。なんといっても、久美が守護霊になり、護ってくれるのだ。

 二時間以上話をして、美奈は優衣と別れた。北村は帰ってこれからまた連載もののアイディアを練らなきゃ、と愚痴っぽく言いながら、優衣と一緒に歩いていった。作家というものは、やはり大変なんだなと美奈は改めて覚悟した。また、北村と優衣は何となくいい雰囲気になっているように思えた。美奈はあの二人が、ノミの夫婦ではあるが、近い将来、結ばれそうな予感がした。
 オアシスの勤務までまだ時間があるので、美奈は裕子と、昨年開業した大きな商業施設、アスナル金山を歩いてみた。土曜日ということもあり、人出が多かった。それから美奈の車で一緒にオアシスに向かった。
「この車にも、守護霊がいるんですね。あのとき、この車の守護霊が駆けつけてくれて、兄も協力して、三人で悪霊を退治してくれたんですよね」
 多少霊感がある裕子は、多恵子が千尋と共に、悪霊に立ち向かうとき、微かだが多恵子の姿を見ることができた。
「実は、あのとき助けてくれた多恵子さん、この車の中で病死したのよ。それを千尋さんが浄化して、守護霊にまで高めてくれたの。ほかのみんなには、この車の中で女性が亡くなったということ、言わないでくださいね。気味悪がられるといけないから」
「はい、言いません。交通安全の守護霊様になってくれたなんて、素晴らしいです。でも、霊界って不思議なんですね。兄も久美さんも救われ、みんなが幸せになる。美奈さんって、本当はタトゥーをした神様なんじゃないですか?」
「そんな恐れ多いこと、言わないでください。神様といえるとしたら、千尋さんですね。もはや守護霊というより、神格を持った守護神様かもしれません」
 美奈は改めて千尋と多恵子に感謝した。          
                                                           (完)

 

千畳敷 御岳噴煙

2014-10-02 00:29:15 | 日記
 10月1日に、友人と中央アルプス・木曽駒ヶ岳(2956m)の千畳敷に行きました。交通事故で膝を痛めてから、初めての日本アルプスです。
 木曽駒には木曽側から歩いて登ることが多かったのですが、今回はロープウェイで行きました。前回は木曽福島福島から敬神の滝までタクシーで行き、そこから登って空木岳まで縦走しました。
 標高2600mの千畳敷は、気温10℃で、寒いくらいでした。

  
 
  
 宝剣岳(2931m) これまで3回登頂しました。南稜を下るときには、十分な注意が必要です。

  伊那前岳(2883m)

 

 このあと、すぐにガスがひどくなり、晴れそうになかったので、木曽駒ヶ岳登頂はあきらめ、下山しました。

 帰りに開田高原に行きましたが、御嶽山(3067m)は山頂部分が雲に覆われ、噴煙は見えませんでした。

 

 日没直前に、たまたま寄った木曽福島の道の駅で、運良く御嶽山が見えました。夕日に照らされ、噴煙が赤く染まっていました。

  

 噴火で多くの方が亡くなるという痛ましい事故が起こっているのに、噴煙を見物するなんて、不謹慎のそしりを免れないかもしれません。噴火で亡くなった方のご冥福を心からお祈りします。

 自動車で400kmを走り、疲れました