きょうを生きて living in a moment アドラムの洞窟

できることに集中すると美しさが生まれる。

その美しさを感じて息を吸おう。

昔②

2014-12-12 06:14:22 | 日記
死体が来る前

火葬場の中は暖かい

団欒の場だった。

ゆくといつもストーブの

珈琲を満面の笑みでいれてくれた。

そして

霊柩車の車が坂道を登る音がすると

宇田さんの顔が

急に引き締まる

(お!きたか!)

というと急に

下を向きに不幸に対する哀悼をささげ

ありがたく心づくしの封筒に入った

お金をうけとる。

丸々太った町田さんが

棺桶にいれた死体をギーッと

窯にいれて

ガチャンと閉めると


宇田さんが後ろで

鉄の棒にウエスを巻いたものに

火をつけ

ゴーッと重油が霧状に飛ぶところに

一気に火がつくと


火がついている窯の後ろ側に椅子を

並べ

さっ はじめようか


っと


聖書をひらく


寒い冬に

人を焼く火を唯一の熱源としながら

パチパチと

棺桶が燃え

死体の焼く匂いをかぎながら

死とは何か


語り合うのだ。