井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

気に入らない三つの言い回し

2011-07-28 20:31:22 | ブログ

言葉は生き物だ。年月を経て変わっていくのは当然である。しかし,通じる言い方をしてほしいものだと思う。
私の周りの学生と,しばし話が通じなくなる瞬間がある。

シャコウがあるから・・・
シャコウに行くから・・・

遮光?社交?

シャコウと言えば車高,「シャコタンブギ」などという歌もあったっけ。

でも,それは関係ないようだ。
聞くと,

「昔はジコウと言っていたみたいですが」

事項?時効?

どれも違った。正解は「自動車学校」の略称。

何かイヤなんだよね,この略称。

二つ目は,今日耳に飛び込んできた学生達の会話。

「このご飯,少なくねぇ?」

これは東日本の言い方だ。関東,東北,北海道で使われる表現がいつのまにか浸透している。明らかにテレビの影響。

しかし,ここは福岡なのである。共通語で「少なくない?」と言うか,九州近辺の言い回しで「すくのうなか?」あるいは「少ないっちゃない?(少ねぇっちゃねぇ,は可)」とか言っていただきたい。

とは言え,ここまでは正直,下記のことに比べればどうでも良い。

最も気に入らない言い方が10年前から定着してしまっている。

それは,あいさつが「おはようございます」でも「こんにちは」でもなく「お疲れさまです」になっていること!

こう言ってすれ違う学生の多いこと,ハンパない(これも気に入らない言い方だが,とりあえず許す)。

言われた途端に「あんたと一緒に仕事をしているつもりはないよ」と心の中で叫ぶのだが,相手の顔があまりに屈託ないので,何とかそれを飲み込み「こんにちは」とか「さようなら」でかわしている。

冒頭に述べた通り,言葉は生き物。そのうち国語辞典の「お疲れさま」に「こんにちは,や,さようならの意味として使われる」とか載るのかもしれない。

嫌だなあ・・・。


小室等と三善晃

2011-07-24 20:33:23 | 音楽

このお二方は、通常結びつかない。

結びつけたのは谷川俊太郎。

そう考えると、無数の結びつきが誕生してしまうが、その一つとして紹介させていただく。

小室等さんを生で拝見したことがある。小室さんのコンサートではないところがミソ。

ピアノの発表会の司会者として登場されたのである。

何でも、その発表会を主宰される先生が、その昔小室さんを教えた縁とのこと。なので、ピアノには大した興味がない私もいそいそと出かけた次第。

ピアノ演奏とほとんど関係がない話題を次から次に出していく小室さんのお話は面白くて、私は小室さんが好きになってしまった。

その前から嫌いではなかったが、正直言って「歌」かどうかは疑問の余地がある歌が多いとは思っている。

でもインパクトのある歌が多いのも確か。次の歌も一回聴いただけで忘れなかったもの。

「いま生きているということ」という歌だが、原詩は「生きる」という谷川俊太郎の詩。

この歌は全共闘世代にはかなり有名な歌だと、某新聞のコラムに書いてあった。

その後、高校の教科書に載り、現在は小学校の教科書に載っているそうで、そのうち全国民が知る詩になるのだろう。全共闘世代が教科書を作ると、こういうことになるんだな、と、その下のシラケ世代は斜めに見てしまうが・・・。

これもまた「歌」なのか疑問の余地が少々あるけれど、詩としての説得力はすばらしいものがあると思う。

さて、本ブログ、合唱関係者はまず読んでいない。同時に、これを読んで下さっている方で合唱をされている方は、ほんの少しであろう。なので、ここでぜひ紹介したい曲がある。

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「生きる」 合唱団ゆうか&Gaia Philharmonic Choir 投稿者 rapidstyle

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同じ「生きる」を三善晃が合唱曲にしたもので2000年の作品。

聞くところによると、合唱界の名ピアニスト、田中瑤子さんが亡くなられたのを悼んで、大晦日から元旦にかけて一気に書き上げたそうだ。

私がこの曲を知ったのは、某県で開かれた合唱講習会をたまたま見た時。三善先生の前で某大学の合唱団が歌ったのである。三善先生としては、様々な思いがあることは容易に想像がつく。そしてその合唱団は、その様々な思いを見事に表現していなかったので、三善先生はオカンムリだった。

でも、私はそれでもその時、曲のすばらしさに心打たれ、今日に至っている。

その後にできた女声合唱版を指揮する機会にも恵まれ、この曲に関してはかなり詳しくなった。

今では、この曲の理想の演奏は私の頭の中にあるので、上記の演奏二つとも、理想からは少し距離がある。

だが、曲の素晴らしさは、それでも伝わると思うので、ぜひ皆さんに知っておいていただきたい曲だ。

小室等を聞けば元気になり、三善晃を聞けば泣いてしまう。同じ谷川俊太郎の詩が、曲によってこうも印象が変わるというのが、また興味が尽きない。


ヴァイオリンの掃除

2011-07-21 07:10:25 | ヴァイオリン

ヴァイオリンの胴体はふたができない箱なので、どうしてもゴミがたまる。

たまっていると当然正規の音は出ない。掃除が必要である。

しかし、その方法を意外と知らない人が多いことを知った。

スクロールの糸倉ならば綿棒で良いが、本体は綿棒では心もとない。

ヴァイオリンをやる人はメニューインの本くらい読んでいるものだと思っていたが、違うらしい。

メニューイン/ヴァイオリン奏法 メニューイン/ヴァイオリン奏法
価格:¥ 4,935(税込)
発売日:1976-01-01

ここに書いてある。

ときどき、f字孔から軽く一にぎりの生米を入れ、ヴァイオリンの洞内をまわるようにゆすってやってから、楽器をひっくり返しにする。入れた米といっしょになって、埃りが球状になって出てくることがよくある。

ヴァイオリンの本なんて、国内で売られていものを全部買っても知れている。ましてやメニューイン、意味がわからなくても買うのがヴァイオリン弾きである。(この間、メニューインがあるのならメニューアウトもあるのか、などという話を聞いてのけぞった。)

ちなみに生前のインタビュー記事で「メニューインと読むのかメヌヒンと読むのか」との問いがあり、答は「どちらでも良い」だったことを記憶している。

メニューインも過去の人なのだなと思わずにはいられないし、読んでもヨガの話が出てきたりで、なかなか理解が難しい。師匠に言わせると訳が悪いとのこと。だが、注意深く読むと、フランコ・ベルギーの実際とか、ガラミアン流との違いとかがわかり、興味深い書物である。


「さらば恋人」と「カリフォルニアの青い空」

2011-07-18 17:37:05 | 音楽

先日、とあるホール付随の練習室を使った時のこと。

駐車場が満車だったので何事かと思ったら「松田聖子コンサート」。相変わらずの大人気ぶり、同世代としては、いつまでもがんばり続けてほしいと思う。同時に、個人的には全く趣味の合わない曲ばかりで、関心が起きない。(でも井財野版の聖子ネタは以前にも書いた通り、少しある。)

松田聖子は国際的に売り出すことを最初から考えていたとかで、世界企業の名前を芸名にしており、楽曲もダイアトニック(ドレミファソラシでできている)でバタ臭い。

一方、筆者の趣味は、やはり和風というかアジア的というかペンタトニック(ドレミソラ/レファソラド等でできている)が基調なのである。

戦後の歌謡曲の中で、もっともジーンとくるのは、五木ひろしの「夜空」と、堺正章の「さらば恋人」を迷わず挙げる。

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作曲は筒見京平、これまた筆者が最も注目していた作曲家である。筒見メロディの特徴は、分散和音をメロディにしてしまうところにあると思う。これは非常に器楽的で、通常は歌いにくいとされる。それが順次進行のメロディックな部分とほどよく共存して、一般にはその歌いにくさを感じさせないのだ。

この「さらば恋人」は、分散和音というよりはペンタトニックを上下している主部と、順次進行のサビからできている。ペンタトニックだけだと、平凡に陥りやすいのだが、「いつも幸せすぎたのに」の「わ」と「す」のところに「導音(シ)」が入っていて、民謡調一辺倒になることを避けている。

ハ長調で言えば「ドレミソラシ」でできた曲、「ファ」だけが無い「六音音階(ヘクサトニック)」ということになる。

と、いくら説明しても筆者の感動を伝えることはできない。やはり百聞は一聴にしかず、学生さん達に聴かせてみたが、ちっとも感動は伝わらなかった。いいのいいの、筆者だけが喜んでりゃ・・・。

ところが、前記事の「落ち葉のコンチェルト」を調べた時、不吉なものをみつけてしまった。

おなじハモンドのヒット曲「カリフォルニアの青い空」

え?「さらば恋人」もパクリ?

筒見氏には「抱きしめてトゥナイト」という「ラブ・ミー・トゥナイト」のパクリもあるからなぁ・・・。

不安な気持ちで調べると「さらば恋人」は1971年に、「カリフォルニアの青い空」は1972年に、それぞれ発表されたことがわかった。

きわどいところだが、「さらば恋人」が先だった。筒見京平バンザイ!

でも、ハモンドが「さらば恋人」を知っていた可能性は低い。そう考えると「時代の声」みたいなものがあるのかなぁ・・・。

ちなみに、こんなのもあった。これはスティービー・ワンダーが1969年に発表した「マイ・シェリー・アモール」。歌は似ていないけれど、イントロのキャッチの仕方が似ている。

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ボヘミアン・ラプソディー

2011-07-13 23:02:33 | オーケストラ

私はブリティッシュ・ロックは嫌いなのである。 何か、体にいつまでもまとわりつくような感覚、もう生理的にそう感じるのだから、嫌な物は嫌と言うしかない。だから、その流れを汲むロイド・ウェッバーも嫌い、ビートルズの一部にも、それを感じる曲は嫌い。

敢えて言えば、昭和50年前後、NHKのTVで日曜日の昼だったか、なぜか海外のロック・コンサートを放映していた。マイク・スタンドを倒すのみならず、オルガンまで倒しながら演奏することに、とても嫌悪感を覚えたのである。

ならば見なきゃいいのに、中学生日記か何かを見た後に、スイッチを消すのが面倒で、嫌いにも関わらず見続けるという、怠惰な中学生であった。だから、そんな自分が嫌いで、それとロックが一緒くたになってしまっているかもしれない。ロック、ごめんなさい。

それはともかく、当時はチャイコフスキーやラヴェルが大好きで、ロックには見向きもしなかった。が、何がはやっているかは知っていた。それは「週刊FM」を毎号買っていたからだ。それで、この「ボヘミアン・ラプソディー」が、かなり長い間、ヒットチャート1位を飾っていたのは知っていた。

で、実際に耳にしたのは、高校生になってから。「オーケストラで聞くロックの名曲」みたいな企画レコードが出て、それをFMで聞いたのが最初。

いかにも、趣味王国イギリスで考えられそうなアイディア。ついでに、他のオーケストラ・ヴァージョン。

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この曲はラプソディーというタイトルをはじめ、クラシック音楽の影響は少なからずある。ロックとしてはかなり異色、今改めて聞くと「スカラムーシュ」だの「ファンダンゴを踊る」だの、かなりの教養に裏打ちされたテキストにも驚いてしまう。

が、クラシック音楽的にみると、かなり荒っぽい作りも散見できるので、後世に残る不滅の名曲とまで持ち上げるつもりはない。

それが、今年になって、正面から向き合うことになってしまったのである。

今月24日、北九州市の「ムーブ」大ホールで、戦場カメラマンの渡部陽一さんを迎えたコンサートに出ることになった。

最初は、戦争に関する音楽などを中心に構成することを考えていた。ところがある日、とある人からの情報で、渡部さんは往年のロック・グループ「クイーン」の大ファンであることがわかったのである。

だから、クイーンをやってみたら、などと簡単に言ってくれたりするのだが、あのエレキサウンドをヴァイオリンとピアノでできる訳ないでしょ・・・、と当初は全くの対象外の曲と思っていた。

しかし、私は「やる気のないダースベイダー」が結構好きだ。

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この路線で考えれば結構いけるかもしれない、と思ったのである。

でも、それはそれで難しく、結局は割と素直な井財野版が誕生した。(とは言え、ハーモニックス、ピチカート、グリッサンド、二重音、三重音等、ヴァイオリニスティックな技巧は駆使されている。)

問題はピアノの方に生じた。24日の演奏会に先立ち、6月と今日、2回発表の機会があったのだが、いずれも20代、30代の若いピアニスト、クイーンを知らないのである。ロックも知らないに等しかった。必然的に、私がロックの様式を伝えるハメになる。私が嫌いなロックを教える日が来ようとは、想像さえしたことがなかった。

苦戦するピアニストと共に迎えた本番、これがまた2回とも共通してユニークな光景だった。

聴きにいらした方はどちらも高齢者が多く、こちらもクイーンをご存じない方が大半を占めていた。そう、当時10代から20代、せいぜい30代くらいまでの人のみがクイーンを聞いていたのであり、その上も下も知らなくて当然である。

それでは興味がないのかというとさにあらず、極めて集中して聴き耳を立てて下さっていた。とても不思議な音楽を聞いている表情が垣間見えたのである。

ここで得た結論、そうか、私が演奏(編曲)すれば、全て(良くも悪くも)クラシック音楽になってしまうのだな、というもの。

考えてみれば、ジャズやラテン音楽の要素が入り込んだクラシック音楽は、すでに一般的だ。ロックの要素が入り込むクラシック音楽があって当然なのだ。自画自賛になってしまうが、これはなかなか新手の面白さかもしれない、と思った。(バーンスタインやロイド・ウェッバーには既にロックが入っているけれど、どちらもドラムセットを使っているので、ロックそのものに近い。)

ヴァイオリンとピアノによる「ボヘミアン・ラプソディー」、お時間と興味のある方はぜひお越しいただきたい。

問い合わせは「アプレシオ・アラ・ムジカ音楽スタジオ」(Tel093-981-8520)まで。