井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

メトロノームのTAP

2015-09-16 20:22:04 | ヴァイオリン

ジュリアード音楽院に在籍した名ヴァイオリン教師、ドロシー・ディレイは、学生達に「テンポ・チャート」なるものを作らせていた。
新しく取り組む曲があると、図書館に行ってその曲のレコードを探し、メトロノームを使って、Aの演奏はテンポが○○、Bの演奏は○○と書き込んだ表を作るのである。

これを作ると、楽譜上はテンポの変化がないのに、ほとんどの人がテンポを動かす箇所、千差万別の箇所、判で押したように全員が同じテンポで弾く箇所などがわかって、大変良い演奏の指針になる。

これを知ったのは五島節の著書だったが、さすがだなぁと大いに感心し、爾来時々行っている。

そしてこの度、学生共々、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第14番の大勉強会をしようということになった。

この曲は40分かかり、楽章も七つある大曲。難曲でもあり、普通は学生達で取り組める曲ではないのだが、これを弦楽合奏でやってみると、ひょっとしたらできるかも、と思ったからである。

実はこの曲、私が最初に聴いたのは弦楽合奏だった。バーンスタイン/ウィーンフィルの演奏がFMに流れたのを録音して、何回も聴いたのであった。

しかし何回聴いても難解。変な曲だなぁという印象を拭えなかった。だが、ものの本にはベートーヴェンの実験精神を端的に顕した名曲のようなことが、どの本にも書いてある。

まあそのうちわかるだろう、と思って38年過ぎた。今だったら、なんとなくわかるような気がするのであった。

私がわかって棒を振れば、学生であろうとわかるだろう……と思った次第である。

そういう時は、まずテンポ・チャートである。
学生6人にそれぞれCDを渡し、次回までに、まずは第5楽章のテンポを測ってくるという課題を出した。

翌日、その要領を尋ねてきた学生に念のため訊いてみた。
「メトロノーム持っている?」

当然、という顔をして持っている返事。「それにTAP機能ついている?」

問題はここからだ。

TAPがついているような気がする、が、何ですか、それ?
という状況。

これは押したボタンの間隔でテンポを割り出す機能。テンポを測りたい時には重宝する。

では、どうやってテンポを測るつもりでいたかと問えば、いわゆる原始的な方法、この辺かとあたりをつけて・・・五島節さんもされていたやり方。

実は私も十数年前までは、その方法しか知らなかった。このTAPを使えば簡単だというのは、当時の学生から教えてもらったのであった。

そこからの年月を考えると、当然学生達は皆知っているものと思ったらさにあらず。しかも、メトロノームは電子式の小型のものを持ち歩いているのだが。

ここで気付いたのは・・・

昔教えてくれた学生はクラリネットを吹いていた。今知らないのはヴァイオリンを弾いている。

なぜか管楽器の皆さんの方がメトロノームを愛好していて、練習にもふんだんに取り入れているような気がする。ヴァイオリンの皆さんはメトロノームもチューナーもあまり積極的に使わない。

その理由はいろいろ考えられるから、それらを使わないのは必然性あってのこと。

ただ、テンポチャートには、ぜひTAP機能を活用してほしいものだ。そこまで教えるのが私の役目かなぁ。