井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

あこがれのトロリーバス

2019-06-27 18:37:00 | 旅行記
バンクーバーには、いわゆる観光地然とした場所はあまりないと言う。
でも、移動中の風景でも充分楽しいことがある。

しかし、同じ道を移動していても、同行者と私とでは、全く違うものを見ていることがしばしばだった。

その代表格が「トロリーバス」

これは日本の鉄道法では「無軌条電車」と言ったと思う。そう、電車なのだ!私が子供の頃は東京や神奈川あたりにあったのだ。でも、ついに日本国内から姿を消して、そろそろ半世紀か。

少なくとも私は乗ったことがない。

しかし、今回行動を同じくしたメンバー、誰一人関心を持たなかった。

なぜだ!

最終日に共演したピアノのKさんは、ハンガリーから来ていて、かの地では普通に走っており「え、普通のバスですよ」と言う。

違うはずだ!エンジンとモーターでは振動の様子が異なるだろう。そしてゴムタイヤだから、鉄輪とも違うはずだし、加速減速の感じも違うはずだ。

乗りたい!でも機会がなかなか訪れない。
ついに乗れそうな時もあったが、また運良く、車に乗せてくれる方が現れ……。

世界中のトロリーバスが廃止されませんように。

バンクーバーのトロリーバスの面白いのは、前方に自転車を載せることができること。

バンクーバー交響楽団名誉コンサートマスターの引退

2019-06-26 08:13:00 | オーケストラ
バンクーバー滞在中に、たまたまバンクーバー交響楽団の演奏会に行く機会に恵まれた。
今年は創立100周年だそうである。
本拠地ホールOrpheumの壁面には、今年のラインナップの写真が……。



パールマンなどが含まれているところが、やはりアメリカ大陸なのだな、と実感する。

開演前は、舞台上でオーケストラがウォーミングアップするアメリカ方式。ここまでならば、我が国でも日本フィルなどがやっている。
違うのはお客さんが盛んにおしゃべりしていること。



写真ではちょっとわかりにくいが、実はオーケストラのチェロ奏者とお客さんがお話している。これは日本ではご法度である。

プログラムは、シューベルト《ロザムンデ》序曲、現代作品でヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲、そしてR.シュトラウス《ツァラトゥストラ》。

私がわざわざ出かけたのは、名誉コンサートマスターの長井明さんの引退公演だと聞いたからだ。

私が学生時代、読売日本交響楽団でエキストラ奏者の仕事をしていたのだが、その頃ちょうど長井さんが読響のコンサートマスターをされていた。バンクーバーの方を1年お休みしてのお務めだったそうだ。

そして一昨年、私が初めてバンクーバーで演奏した時も、聴きに来てくださった。

なので、一も二もなく駆けつけた次第である。

休憩後、長井さんの引退セレモニーがあった。その日は第1ヴァイオリンパートの、日本式表現では5プルト裏で弾かれていたが、指揮者に紹介され、短いスピーチがあった。



その後は花束贈呈でスタンディングオーベーション、会場がとても暖かい雰囲気に包まれた時間であった。

とにかく40数年、異国の地で弾き続けたのだから頭が下がる。私より20年も先輩なのだが、そうは見えない若々しさをお持ちだ。その姿に接すると、私もまだまだ頑張らなければ、と思うのである。

終演後、バンクーバー在住の日本人Sさんに案内されて舞台袖に伺った。

《アンピトリーテーの声》ができるまで⑥

2019-06-21 17:59:00 | アート・文化
下の写真は、本番の「最中」、休憩時間のグリーンルーム(控え室)の様子である。



これが本番の「衣装」。
数日前に「あまりフォーマルな格好にならないようにしてください」と言われたのだが、こちらはフォーマルな格好の準備しかしていないから、とりあえず黒スーツで臨んだのだが、なるほどこういうことか。

右から2番目の人物がコンサートマスターである。
だからといって普段着でもない。彼は薄い麻地のようなものを重ねて着ている。
民族衣装を思わせる独特の格好だ。
こういう格好は、その人のセンスをもろに見せるから、一番難しいかもしれない。

しかし、時は21世紀、そろそろ脱スーツなのかもしれない、と思った。

それで、肝心の本番である。
チェリスト〈こうせつ君〉は最後までアッチェレランドがディズニーランドから抜け出せなかったが、初めて聴いた聴衆にはわからないレベルまで、他のメンバーが達したので、まあ成功の範囲に入るのだろう。
やれやれ。

《アンピトリーテーの声》ができるまで⑤

2019-06-20 07:55:00 | 井財野作品
結局、ドレス・リハーサルは、どの曲もほぼ通すだけで終わり、本番まで数時間の休憩時間を確保できた。

案の定、チェリスト〈南こうせつ〉は最後のアッチェレランドがディズニーランド(非現実)だった。
このあたりで、カナディアン・コンサートマスターも「速いテンポは苦手らしい」ことが、感じられてきた。

何のかんので、やはりコンサートマスター、小アンサンブルであれ、彼の能力を超えることはできないのである。

これは、もう本番に賭けるしかないかと思いかけた矢先、チェリスト〈こうせつ〉からアッチェレランド部分を再度練習させてくれ、と要求が出た。彼もディズニーランドに居るのは不本意らしい。

結局3回練習した。でもできなかった。まあ、他のパートはできてきたから、聴衆にはわからないレベルまではいくだろう。

しかし、チェリスト〈こうせつ君〉は、楽譜を製本することはなく、本番でもずっとペラペラの紙を横にずらしながら演奏していた。これでバッチリ演奏するなら文句はないけど、ページが変わる度にどこを弾いているかわからなくなり、落ちる、を繰り返していた。
私が教えている学生とほぼ同じ行動である。
結論∴【楽器由来の性格は人種を超える】

写真は本番中のグリーンルーム(控え室)の様子。コリアンとインディアンがいて人種のモザイクぶりがわかる。


《アンピトリーテーの声》ができるまで④

2019-06-19 08:03:00 | 井財野作品
さて、ドレス・リハーサルである。

始まる前にインスペクター兼ステージマネージャーから言われた。

「各曲のリハーサル時間配分はマエストロに任せます。が、みんな疲れています。できればある程度休憩時間にしてもらって、本番に力を残しておいた方が、良い結果が出ると思います。もちろんリハーサル時間全て使っても構いません。」

この期に及んで、この言葉。
私から見たら、みんなチンタラちんたらやっている感じで、これで「疲れている」とは驚き桃の木山椒の木だったったのだが、人種が違うと顔色は見分けられないということなのだろう。

無論、こちらだって疲れたくない。
しかし、あの南こうせつとチック・コリアを足して2で割った顔のチェロ君は、このリハーサルで何とかしないと、と思っていただけに、何だかガックリくる言葉だった。

“O.K. I see.”
と言っておくしかない。

写真は会場を出て数分の光景。