昔から敬愛するチェロの先輩がいて、東京を離れた今でも10年に一回くらい仕事を頼むことがある。
何せユニークな方で、シャンソンの伴奏をする時はチェロとヴァイオリンを持ちかえで弾く、という芸当をやっているらしい。
この度、私が多重録音をした報告をしたついでに「先輩もやってみませんか」と水を向けたら「自分のは価値がないから」とご謙遜。
「自分の元弟子達が配信やっているから、そちらを応援してください」とのこと。
早速見たら、ぶっ飛んだ・・・
西方正輝氏はチェリストである。東京芸術大学の大学院までチェロ専攻で修了したれっきとしたチェリスト。
彼のもう少し若い頃の動画もアップされていて、ハイドンの協奏曲を、かなりアグレッシブだけど正攻法で弾いている姿が確認できる。
しかし、このトランペットは何だ!余技にしては上手すぎる。実際トランペッターとしても活躍しているし、毎日トランペットの練習も欠かさないそうだ。
専門以外にピアノが上手い人は時々いる。それでも大したものなのだが、弦楽器奏者で金管楽器の名手という存在は、音楽史上いたのだろうか。(金克木なんて余計な心配か…)
私も仕事柄、ヴァイオリン以外の楽器を練習してみたりしたのだが、チェロは1週間しか続かなかった。
ホルンにおいては1日で音をあげた。
要はそこまで好きではないということだ。
逆に西方氏は、トランペットも好きなのに違いない。
高嶋ちさ子や葉加瀬太郎のバックもやっているから、見たことがある人は多いのかもしれない。
しかし、こんな多才な人材だとわかっている人はどれだけいるのだろうか。
その昔、澤先生が「今はチェロの学生が凄いんだ」と盛んにおっしゃっていた。それがちっともピンとこなかったけど、そうか彼が凄かった訳ね、と今頃納得した次第である。
見習って、ではチェロの練習でも、と思うが、今は遠隔教育対応で、残念ながらその時間はない。
とりあえずやれることをやっておかねば……。