井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

「ラ・ラ・ラ」「涙をこえて」

2014-09-30 20:47:13 | 音楽

先日NHK-FMでフレンチ・ポップス特集が組まれていた。フレンチ・ポップスなんて、ほとんど死語の世界だと思っていたけれど、かつては世界を席巻していたのだから、根強いファンは当然いるはずだ。私も隠れファンかもしれない。

その放送自体、あることを知らなかったので、ごく一部しか聴取していないが、そこで懐かしい曲を聞いた。レーモン・ルフェーヴルRaymond Lefevre楽団の「ラ・ラ・ラLA LA LA」

元は1968年のユーロヴィジョンコンテストで僅差ながら第1位を獲得したスペインの歌。確かにヴァース(前唄)の部分は短調で、スペイン風に聞こえる。でもレーモン・ルフェーヴルの演奏で、世界中で大ヒット。フランス人の演奏でのヒットだからフレンチ・ポップスに入れるということだろう。

それは良いのだが、しばらくして気付いた。「涙をこえて」にそっくりだ、と。

「涙をこえて」は、NHKの番組「ステージ101」(1969-1974)の最初のオリジナル・ソング。中村八大作曲で八大さんの曲の中でも傑作に部類すると思っていた。現在は中学生の合唱曲として定着している。

「ステージ101」は、知る人ぞ知る、かなり手間暇かけた音楽番組。その主役たる「ヤング101」は、週4日くらいNHKに勤務する歌手集団とでも言えばよいのだろうか。歌だけでなくダンスやらエクササイズやら、かなりハードなトレーニングが課せられて、毎週の収録に臨んだという。ただ、その分、給料もアナウンサーよりずっと高くて、月20数万円もらっていたらしい。電車やバスが30円とか40円で乗れた時代に、である。

この頃は、NHK交響楽団の予算も7割はNHKが出していたというから、そういう意味で「良い時代」だった。

この「涙をこえて」と前述の「ラ・ラ・ラ」、リフレインの部分のコード進行、和音の連結がほぼ一緒だということに、今頃気づいた。(主和音から属和音、その次に下属調の下属和音へ進んで下属和音へ、この瞬間が「涙をこえて」の最大の魅力だと思っていたが「ラ・ラ・ラ」にもあるのだ。)

うーん、八大さん、ここでもやってくれたか・・・。

八大さんの作品は、俗に言う「パクリ」が多い。かの有名な「上を向いて歩こう」でさえ、カナダの何とかいう歌に酷似しているらしいし、ベートーヴェンの「皇帝」にも似ている。他にも「テイク・ファイブ」の焼き直しみたいな曲も聞いたことがある。

でも私は大好きな作曲家の一人だ。なので最大級の擁護を考えよう。

率直に言って「涙をこえて」の方が良い曲ではないですか?

そして、あの1ドル360円の時代、今とは全く比べ物にならないくらい外国は遠かった。だから和製ポップスとか和製○○という、二番煎じ的なものの需要が、結構あったのだ。そして、人々はそれをそれなりに楽しんでいた。

その中で、唯一ビルボードチャート第1位「スキヤキ・ソング」に輝けたのは中村八大だけ。この曲に限らず、八大さんの曲は国際的に通用する最良の作品群だ。

だからパクリではなく、「ラ・ラ・ラ」を換骨奪胎して「涙をこえて」に昇華させたのだ、ということにしておきたい。