井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

平均年齢72才の合唱団

2011-09-30 23:09:39 | アート・文化

19日「敬老の日」、佐世保では「九十九島の日」でもある。(9/19でクジュウクというダジャレを時の市長が考えたとか)

その日に「團伊玖磨没後10周年記念」と銘打つ佐世保市民管弦楽団定期演奏会を指揮し、「筑後川」「西海讃歌」というオケつき合唱曲、あるいは合唱つき管弦楽曲をやった。

合唱団がどうみても平均60代だなぁ、という感じ。これは大変。練習の時は疲労困憊だった。あまりの反応の鈍さ・・・。

でも伺ってみれば、男性の平均が64才、女性は何と74才!全員の平均年齢72才という、正真正銘のじいちゃんばあちゃん合唱団だったのだ。そうなると話は変わってくる。これはスゴいかもしれない。

案の定、本番では目がカッと見開き、ソプラノなんかAsまであるのに堂々と会場に響き渡る歌声、オケはその声量の変化に唖然。今まで「合唱が聞こえないから抑えて抑えて」と指示していたヴァイオリン群、一転して「ヴァイオリンが聞こえないから、もっと出して」に変わるほど。 熱狂のうちに幕を閉じることができた。

「團伊久磨没後」だったが、私にとっては、とても良い「敬老」もできた思いがした。それに、この年齢でも感動的な音楽が作れるという事実は、とても心強いものだ。めでたしめでたし。

さらにめでたく思ったのは、この日、全国に台風が吹き荒れていたのに、佐世保は少し風が強い程度で終ったのでした。

実は佐世保のオケ、何回か振ったことがあるのだが、台風に見舞われたり、滅多に降らない大雪にぶちあたって、聴衆200人などということもあったので、このジンクスをやぶるために、ずっと神頼みの毎日だったのだ。(今回の聴衆は千人を超えた。)
ようやく天候も変えられた。めでたしめでたし。

「筑後川」は、冒頭がア・カペラ、無伴奏である。どうしてもピッチが下がって、オーケストラが入るところで「ズレ」が生じる。ここが年齢の壁か、と若い方々は思うかもしれないが、実はそうではない。

この世代は(もちろん優秀なる団体を除いて)若い頃もピッチが合わないのは当たり前だったのだ。もう少し下の世代でもそうである。 今の30代くらいになって、音の高さが決まるのが当たり前というレベルになった。

ということは3,40年後のじいちゃんばあちゃん達は、例えばコダーイあたりを歌ったりするのだろうなぁ。これは楽しみだ。あ、その頃には私は死んでいるか。いやいや、草葉の陰から聴かせてもらいますよ・・・。

團伊玖磨 : 混声合唱組曲「筑後川」

1.みなかみ

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團伊玖磨 : 西海讃歌 投稿者 eguornialuop

アクースモニウム・リサイタル

2011-09-25 21:30:45 | ヴァイオリン

「音楽に国境はある」

当たり前である。音楽は思考の産物だ。人間は言語で思考するのが普通だ。言語に国境があるのであれば、当然音楽にもある。

ただ、国境があるから通じない、というのは間違い。言葉が通じなくても通じることはある。ボディ・ランゲージを代表とする非言語のコミュニケーションはいろいろある。音楽もその一つだろう。

音楽で気持ちが通じることはよくある。だから「国境はない」と言った人がいるのだろうが、それは言葉のアヤ。外国人がお土産持って訪ねてきて、それを親愛の情だと受け取らない人は、相当の変わり者だ。だからと言って、言葉が通じなくても気持ちが通じたから「国境はないんだね」と言う人がいるだろうか。

明日からリハーサルにはいる中村滋延作曲の「Passion」(3年ぶりの再演である)、この曲からは「日本語」が聞こえてくる。

止めてよ止めてよ止めてよ止めてよ・・・待ってよー

とか

いやだー いやだー

とか・・・。

少々ネガティブな日本語になってしまったのが申し訳ない。「安いよ安いよ」でも「来なはれ来なはれ」でも良いのだけれど。

と、本来伝えるべきところから大きく逸脱してしまった。閑話休題。

桧垣智也「アクースモニウム」のリサイタルが今月27日、アクロス福岡の円形ホールで開かれる。アクースモニウムは「多次元立体音響装置」と訳されるが、10個以上のスピーカーを会場のあちらこちらに仕掛けて、それを駆使して音楽を再生させることを指すと言えば良いだろうか。

私はコンピュータ音源とヴァイオリンのための作品を演奏することになる。コンピュータ・オーケストラとコンチェルトをやるようなイメージだが、このコンピュータ・サウンドがなかなか多彩で、神秘的かつ不思議な音がする。でもニ短調だったりして、しっかり調性感のある音楽である。

しかしヴァイオリン演奏者は、この本当の面白さがわからない。客席で聴くと、音が上下左右前後に飛びまわっているらしいのだ。これは聴衆の皆さんのみが楽しめるのである。アクースモニウムが発明されたのは1974年らしいが、いやはや、これぞ21世紀の音楽ではなかろうか。

他に今史郎が大阪万博で発表した電子音楽の蘇演などもあるので、ご都合のつく方はぜひご来場を。2011.9.27, 開演19:00 アクロス福岡円形ホール。




ラヴェル:ソナタ

2011-09-22 00:56:51 | ヴァイオリン

ラヴェルのソナチネと言えばピアノのためのものを指し、ソナタと言えば、ヴァイオリン・ソナタを指す。ラヴェルはソナタをヴァイオリンのためにしか書いていないというのも興味深い。

三つの楽章から成り、第2楽章が「ブルース」、第3楽章が「ペルペトゥウム・モビレ」という標題を持つのが特徴的。ラヴェルが関心を示したジャズ音楽の影響が取り込まれている筆頭に位置する楽曲と紹介される。

「ブルース」にはバンジョーのイミテーションと思われるヴァイオリンのピチカートがある。これを弾くと、人差し指に必ず「まめ」ができる。先月久しぶりに弾いたら、案の定「まめ」ができた。その「まめ」がなかなか治らない。今月、また弾いた。弾き終わって指をみたら、皮が?けて、結果的に元通りの指になっていた。そんなものなのか?

また作曲を研究する人間にとっては、第1楽章が限りない興味を惹き起こす対象である。 筆者も、学生時代「このソナタを演奏するんだけど」と言ったら「じゃあ分析をしてあげよう」と、名乗りをあげてくれた作曲科の同級生がいた。

その内容を紹介しても良いのだけれど、最近、音楽と一見全く離れたジャンルの人間にも興味を惹かせている、かもしれない事実を知った。

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なんと競馬の馬に「ラヴェルソナタ」というのがあるのだ。それほど強くないのかもしれないけれど、とにかく名前に度肝を抜かれる。 実況中継を聞くと、どうも笑わざるを得ない。

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そこで思いついたことがある。ソナタの演奏を再生して、約1分50秒くらいしたら競馬の動画の再生ボタンを押す。そうすると、ラヴェルのソナタが実況中継され、また笑える。


プレイ・アロング・ステファン・グラッペリ

2011-09-18 08:15:10 | ヴァイオリン

20世紀に活躍したジャズ・ヴァイオリニストである。1970年代にユーディ・メニューインと共演したアルバムが発売になり,私も含めたクラシック音楽愛好家に一躍知られるところとなった。私もとても好きで,その録音は頻繁に聞いている。

そのソロ・パートを楽譜に書き起こした楽譜が出版された。付録CDが付いている。PLAY-ALONGというシリーズで,ソロ・パートが入った元の形と,ソロ・パートを抜いたカラオケ版(昔のマイナスワン)の両方が収録されている。楽譜の曲を聴くこともできれば,一緒に演奏も楽しめるという趣向である。

さすがに人気があるとみえて,輸入されてもすぐ売れてしまい,なかなか手に入らなかったのだが,やっとこの度手に入れた。

さっそく聴いてみた。私が愛聴していた曲も含まれ,結構ごきげん。

しかし,一体どうやって録音したのか,と楽譜をしげしげと眺める。

Violin - Jerry Loughney

そうか,この人が弾いていたんだ。ちょっと聴いただけではグラッペリと区別がつかない,すばらしいプレイだ。

では,という訳で,今度はCDに合わせて弾いてみたところ・・・

無茶苦茶難しい!

さらに解説をよく読むと,PCやMacではスピードを変えられますよ,などと書いてあった。なるほどね。

しかし,気軽にはとても弾けない。弾けるようになるにはかなり本格的な練習が必要だ。そして,弾けたとしてもカラオケとしては使えないこともわかった。なぜならば,どの曲もかなり長いギター・ソロが含まれていて,その間,こちらは立ちん坊になってしまうからだ。

おまけに,私のCDはミシン目の傷入りで,トラックによっては再生がうまくいかなかった。出版はハル・レナード社。採譜もやや雑なところがあるのは,例のビートルズと同じ(またか)。

ややがっかりしながら交換するものを取り寄せる手続きを取ったが,そうは言っても,なかなか興味深い楽譜とCDであることは間違いない。

Stephane Grappelli (Violin Play-Along) Stephane Grappelli (Violin Play-Along)
価格:¥ 1,223(税込)
発売日:2010-12
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大志の歌

2011-09-15 23:38:25 | 井財野作品

画家で詩人の安野光雅氏による詩集のタイトルである。内容は校歌・寮歌のパロディと言えば良いだろうか。様々な架空の学校が登場し、そこの校歌や寮歌はこんな感じ、という具合に作られている。

筆者の好みにぴったりだったので、これにはぜひ曲をつけて、さらに本物の校歌らしくしたいと思った。

筆者が選んだ歌は、以下の5曲。

・蝦蟇の歌

・注文の多い料理店

・仙波山寺

・さんごの宮

・サバダッテバ

それで出版社を通して安野先生に連絡をとったのである。

しばらくして返ってきた回答が、以下の通り。

あのうたには、先約があります。

作曲については先約の人と相談しますが(中略)、ともかく今回お申し越しの歌詞に限り、了解します。

あぁ良かった・・・が、

「注文の多い料理店」「仙波山寺」「さんごの宮」については、すぐにわかりません。私のうたかどうか、不安です。この点を改めて教えてください。

いやぁ、大作家というのはすごいな。昔、シューベルトが自分の作った歌を聞いて「いい歌だね、誰が作ったのかな?」と言ったことがあると聞いていたけれど、まさにそれと同じだ。

とりあえず、お礼の手紙をしたためると、またお返事がきた。その中に・・・

「さんごの宮」とか「仙波山寺」など、名前がきれいなので、私がかいたものとは思わなかったという、恥ずかしいゴカイによるものです。

やはりシューベルトと同じだ! とにもかくにも許可が下りた訳で、めでたく作曲にとりかかったのであった。

それから発表するのにしばらく時間が必要だったのだが、来年 (2012年) の3月4日、混声合唱団トニカの定期演奏会で発表できる運びとなった。

そしてプログラミングが進むのだが、紆余曲折を経て、「大志の歌」の後には信長貴富作曲の「スピリチュアルズ」が演奏されることになった。

組曲「大志の歌」の最後に配していたのは「サバダッテバ」。これは鯖が「サバダバダ」と歌う内容。だからジャズ風の曲にしてある。

一方「スピリチュアルズ」は黒人霊歌のスピリチュアルの発展形と言えば良いだろうか、本番では打楽器も導入して、思いっきり「ジャズ」になる予定だ。

この「思いっきりジャズ」の前に「ジャズもどき」なんて、とても恥ずかしくて発表なんかできない。何かに差し替えなくては、と思うものの、「大志の歌」の中で一番フィナーレにふさわしいと思って選んだのが「サバダッテバ」なのだ。そうそう簡単に代わりはみつからない。

何カ月も逡巡した挙句に選んだのが「おやゆび姫」。これはバラードになっている。

また、恐る恐る安野先生に打診のはがきを出しんた。すると、

おやゆびひめ

かいてマシタカネ?

アッタラ

どうぞ

やって下さい

安の

というはがきが来た。安野先生の絵が印刷されている絵ハガキだ。絵は大変叙情的でわかりやすいのだが、文面を解読するのは、なかなか大変。漢字とひらがなとカタカナが混じり、縦書きと横書きが混じったこともあった。上記の文は、たぶんこう書いてある、というもので、正確なところはやや自信がない。「さっきの手紙のご用事なあに」とも訊けないしな・・・。

いやぁ、芸術的だなぁと、ひたすら感動しながら、毎日眺めて過ごしていたら、次のお葉書が・・・。

いい曲になります様

ねがっております。

ア、返事出したかな?

まずい、ひたすら感心ばかりしていて、お礼の返事を出すのを忘れていた。慌てて返信したところだが、ついつい文面の確認をしてしまいそうで・・・。これじゃ本当に「やぎさんゆうびん」になってしまうよ。

という次第で、現在「おやゆび姫」を作曲中。来年、福岡県粕屋郡にある「サンレイクかすや」での発表となる。都合よろしければ、ぜひお越しいただきたい。

ついでに「やぎさんゆうびん」も来る9月19日、佐世保市民会館で演奏する。こちらもよろしくお願いします。