「ビギン・ザ・ビギンBegin the Beguine」というコール・ポーターの名曲がある。生まれる前にはやっていたらしい、と思っていたら、現代(?!)に見事蘇らせたスターがいた。フリオ・イグレシアス。
その年の紅白歌合戦では、松田聖子も郷ひろみも村田英雄も三波春夫も一緒に歌ったくらい、大はやりだったので、完全に日本人にも定着したと思いこんでいた。
それから、いつの間にか三十年弱が経過している。今から考えると、フリオ・イグレシアスも一発屋歌手だったんだなあ。でもそれで巨万の富を稼いだそうなので羨ましい限り。
時が経ち、また「ビギン・ザ・ビギン」には解説が必要になり、この曲は、それのパロディだというのにも説明がいる時代になってしまった。パロディは説明してしまうと面白くないのですよ、やれやれ。
もっとも、クラシック音楽には、その状況が宿命的に存在する。バッハは、みんながわかるように、みんなが知っている「コラール」を挿入して受難曲をわかりやすいものにしたはずだった。しかし、例えば現代の日本人にはコラールなんて全く知らない曲だから、説明が必要。皮肉にも、さらに難解な受難曲になってしまった、というように。
「ビギン・ザ・ビギン」を「ビギンを始めよう」と訳してしまうと、何のために韻をふんでいるのやら、ということになる。この曲も同じで「初心者のためのビギン」では面白くない。本当は「ビギン・フォー・ビギン」としたいくらいだが、それでは意味が通らないので、「ビギン・フォー・ビギナー」で我慢したのである。
もともと1990年に開いた「リサイタルA」のアンコール用に作った曲なので、私としてはシメを飾る扱いにしてしまうことが多い。「アプレシオ」のステージも、アンサンブルのコーナーの最後に置かれた曲。
本当は、この倍の長さがあるのだが、それだと発表会には長いので、今回のために後半部分を切り取って作り直したものである。
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原曲は安田女子大学のプロデュースでCD録音されている。(MRCL-1002)
アプレシオ版の楽譜の問い合わせはアプレシオ・アラ・ムジカ音楽スタジオまで。
さて、今年の記事はこれで最後である。
今年の日本は大変だった。いい年だったとはお世辞にも言えない。多分明治維新や第二次大戦に匹敵する歴史的転換の年になるのだろう。
ただ、世界的にはヨーロッパの金融危機の問題の方が大きいことになっている。そして大変なのは欧米であって、アジアとアフリカは実は堅調らしい。
だから我々日本人は、今すばらしい成長をとげている地域と共に歩むことを考えるべきだろう。(マスコミも欧米の悲惨な報道だけでなく、元気なアジアの姿を報道してほしいものだ。)
震災そのものは途轍もない惨事だったが、お陰で日本人の心が一つにまとまりだした。そのまとまったことで生じたパワーが、来年の日本を大きく良い方向に変えていくことを期待したいし、自分もその流れに力を尽くすことができるようにがんばりたいと思う。
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