井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

レコーディング・プラクティス

2008-09-30 17:40:52 | ヴァイオリン

 レコーディング・ダイエットというのが話題になっている。記録するだけで自分がコントロールできるようになる,という訳だ。
 では練習も逐一記録させれば,できるようになるのではないか。

 今年,大学に入学したヴァイオリンを弾く人間,全国に数多いるはずだ。なぜか直接の知り合いが,やや多い学年である。その知り合いが各大学に合格して半年たった。全員の現在を知っている訳ではないが,行く大学によって,伸び方が違うのは自明の理。レヴェルの高い大学は,当然伸び方も大きいのである。

 入試前に大差がついている場合は,大差のまま一生を終えるかもしれない。問題は入試の段階ではそれほど差がなかったのに,という場合である。ある程度の人数が集まる大学だとお互いに刺激し合って,レヴェルが上がっていくこともある。逆に孤軍奮闘は・・・大抵の場合,孤軍無奮闘となり,向上はほとんどしない場合がある。

 やはり一人で何とかするのは難しい。それで,上述の方法「レコーディング・プラクティス」を某大学で今日から試してみた。ダイエットと違い,練習においては珍しくも何ともなく,昔から存在した方法だけれど,ネーミングの妙である。成果はいかに?


伝統芸能であるヴァイオリン

2008-09-27 17:30:56 | ヴァイオリン

 今年の「音楽の友」で,「ヴァイオリンはヨーロッパの伝統芸能なのだから…」とはっきり記述された。それ以来,その表現があちらこちらで使われているような気がする。だとすれば,まだまだ「音楽の友」の影響力は強い。

 私の知り合いAさんが,先日あるオーディションのようなものを受けに行った時の話。Aさんは音楽大学を出てまだ間もない若手奏者である。

 オーディションするのは,日本を代表すると言ってよいヴァイオリニストB氏。このオーディションは講習を受けるためのものでオーケストラ入団のためのものではないが,B氏はAさんに尋ねた。
「どうしてオーケストラを受けたいの?その答によってはレッスンしないかもしれないけど・・・」

 一瞬パニックのAさん,でもここで取り繕っても後が続かない,と覚悟を決めて,正直に「生活のために云々」と話した。

「まぁ,そんなところだと思う。(正直に話してくれたから)レッスンしないなんてことはしない。だけどそういう人は僕達の仲間には入れたくないなぁ。僕達はヨーロッパ発祥の伝統の継承者なんだよ。だから食事なんてできなくてもいいからヴァイオリンを弾かせてほしい,って人に仲間になってもらいたいんだよね,本当はね。」

「うわぁー,かっこいい!」
と,その話を聞いた時,私はそう叫んでしまった。Aさんはその「伝統の継承者」のところに,いたく感銘を受け,心にズシーンと来た,と言っていた。

「何もそこまでかっこつけなくても・・・」
と言ったのは,先輩のベテラン奏者。

 B氏とは面識が無い訳ではない。B氏がまだ20代の頃,B氏の父上が就職運動を展開していたのも知っている。恐らくB氏は「伝統の継承者」だと思っていたとしても,食えなくてもいいから,とまでは思っていなかったはず,と推察している。

 その後,数十年して,ここまで言い切れるようになったこと,やはり私とは全然違う土俵に立っていらっしゃるのだなぁ,と改めて感じ入った次第である。

 私だったら「伝統の継承の一端を担っていることに結果的になる」と大変回りくどい言い方が限界だ。ただ注目すべきは,B氏の言い回しと演奏とは共通点があって,一瞬にして相手をノックアウトする強烈さがあるのである。それがプラスに働いた時は,音程なんて何のその,はずれまくっても全く気にならない(のだと思う)。

 その強烈さは,やはり「魅力」になるだろう。私には「かっこつけすぎ」とは言えない。いろいろと学ぶべき点がある。


2008?韓・日 交流 演湊会

2008-09-12 18:35:50 | 旅行記

 標記のタイトルの看板がかかげられていたので,韓国では「演湊」と言うのかと思いきや,本番直前に「演奏」に訂正されていた。

 という訳で,行ってきました福岡教育大学管弦楽団ご一行68名。病気や怪我は全くなく無事に帰って来たと,一応は言えるのだが,予想しないできごとが随所に起きる珍道中でもあった。

 8日,朝8時半のジェット船,ビートルに乗るのに博多港に7時集合。少し早めにはいろうと思って6時40分に着いた。すでに着いている学生もいる。しかし,港は6時50分にしか開かなかった(予想外)。

 案の定,遅れてくる者もいたが,集合時間を早めに設定したため,完全アウトは皆無。注意,連絡等しても7時45分,乗船手続きができるのは8時からだから,しばらくフリーにしていたら,8時15分になってもまだ来ない学生が何人も。両替に行って帰って来なかったのだ(予想外)。

 それでも何とか間に合って,出国。海も揺れず,釜山にもあまり遅れずに着いた。現地では留学が始まったばかりのN,今回通訳やナレーターをお願いしたユさん,そして今回の招聘団体,Edu-phil.の顧問の教頭先生が出迎えに来てくれた。そこで歓迎の花束まで受け取った(予想外)。

 今回,我々の移動は原則地下鉄である。韓国の方にバスを頼むのは簡単だ。しかし,韓国の方がいつの日か来日した時,こちらがバスを用意するのは簡単ではないからだ。という次第で,港から地下鉄「中央洞」駅まで,ご一行がゆっくり進む。始めての海外旅行者も多いから,車の右側通行にも慣れていない。(これは始めてでなくても慣れていない。)信号一つ渡るのも,かなり時間がかかった。
 でも教頭先生が地下鉄の団体切符を用意してくれていたので,かなり安くで地下鉄に乗ることができた。(1100ウォンの20%off,88円!予想外)

 その後,ホテルに一旦荷物をおろして,釜山教育大学校へ向かうのだが,釜山の地下鉄にはほとんどエスカレーターが設置されていなかった。特に「教大前」駅は改札を出てから一旦線路をもぐって向かい側の改札口に出て,さらに出口まで階段を上るのだから,かなりの運動量だ。そして出口から大学の正門まで,さらに坂道を上るのであった。(知っていたのに忘れていた)

 15時から,本番会場である大学構内の「グランドホール」にてリハーサル。なかなか会場の響きがつかみにくかった。でも,続けるうちにそれなりのまとまりを見せてきたので,今日のところはこれで良しとしなければならないのだろう,という感じか。

 招聘者のパク・ジョンヲン先生も姿を見せてくれた。癌に冒され,かなり辛そうではあったが,お目にかかれて本当にホッとした。この話が始まってからの発病で,今となっては,この公演の成功は悲願に近いものに変わっていたからだ。

 その夜は,それぞれ分かれて夕食をとった。昼間,予想外に時間がなく,おまけに用意したはずの軽食を自宅に置き忘れ,カロリーメイトだけでしのいだので,もうフラフラ。釜山教育大学校のヤン・ジョンモ先生,キム・ギルス先生が食事に誘ってくれたのは本当にありがたかった。同行の引率者,N先生やユさん共々,刺身料理をごちそうになった。

 2日目の午前中,買い物したい人はついておいで~,というとゾロゾロ20人以上集まった。彼らを引率してEマートというスーパーマーケットへ行く。普通に歩けば10分ちょっとのはずが20分かかってたどり着く(予想外)。

 「先生のお勧めは何ですか?」
 「アカシアのハチミツと桃の紅茶かな?」
 と言ったがために,蜂蜜と桃の紅茶は,あっという間に売り切れてしまった(予想外)。韓国のお盆に相当するチュソクの直前のため,チュソク商品に力が入り,一般商品はやや品薄気味だったのも,タイミング悪かった。

 ホテルに戻ると,すぐ大学へ移動である。一回くらい団体切符でなく券売機で切符を買ってみよう,と冒険心を出して,またこれが裏目に出る。千ウォン札を入れても入れても,はじきだされてくる。こりゃ機械が壊れている,と思ったら,親切な韓国のおじさんが教えてくれた「Inside!」
 千ウォン札を左側に寄せて入れないと,機械が反応しないのである。How omboro!(予想外)

 一人ずつ買っては時間がかかるから,まとめ買いをしよう。5枚までは買える。機械に札を入れようとして気づく。「千ウォン札がない!」券売機は千ウォン札しか使えないのだ。How 不便!あせっているから,離れたところにある両替機に気づくのにも時間がかかった。

 改札を入るのに,これだけ手間取った。やれやれと思ったのもつかの間,電車に乗れたと思ったら,ホームに二人取り残されている。おいおい,のんびりしていちゃ困るよ,と思わずにはいられない(予想外)。
 さあ,「教大前」降りるよ,と声をかけ,全員降りた,つもりが,まだ車内に7,8人残ったまま,ドアはしまって発車してしまった。おいおい,前の人に付いて来れないようじゃ,指揮についてくるのはまだまだ先の話かい,と思わずにはいられない(予想外)。

 後で聞いたら,ちゃんと付いて行ってたのに,突然ドアが閉められたのだそうだ。日本では考えられない。韓国人も特に慌てている風ではなかった。おいおい,日本人を殺す気か?(想定外)

 本番の日なので,あまり遠出はしたくない。昼食は大学構内でお願いしたいと,構内食堂に予約を入れていた。330円の「教職員定食」が用意されていた。栄養価は良いのだが,辛い!口がしびれて吹けない,と言った学生も出て来た。この予約は釜山の先生にお願いしたのだが,ちょっと失敗かも(予想外)。

 と,周辺のことは実に予想外だらけで,心労神父になってしまったが,音楽に関することは,良い意味で,予想外に上手く行って,予想外の帳尻を合わせることができた。

 特に,初・中等教員養成課程の3年生の合唱「マリア観音」と井財野の「試作品」は好評を得た。ナレーターのユさんは,英語専攻で,楽譜が読める訳でもないのにタイミングはバッチリ,本番では熱演だった。

 日本語では「十字架にかけい!」というところを「シッチャガエ,メラルコラ!」と叫ぶ。これは演奏者にも大受けだった(予想外)。

 教師オーケストラの皆さんとの共演も,ほとんど問題なくできた。だから,予想外シリーズは,良い思い出シリーズに変わるのである。

 翌日になって,国際市場で買った桃の紅茶は700円,その後に案内した農協購買所では同じものが300数十円!
 と,またボッタクラレようが,良い思い出だ。クェンチャナヨ(気にするな)!