またたび

どこかに住んでいる太っちょのオジサンが見るためのブログ

短編でもいかが?

2009-10-29 07:58:57 | またたび
「かんじんなことは、目には見えないんだよ」 
       by キツネ   
     アントワーヌ・ド・サンテグジュペリ「星の王子様」より





最近、小説を載せていなかったので、朝に電車で思いついた話を
熱が冷めないうちに書きたいと思います。



スイッチ

朝が来る前に伝えたかった言葉があった。
何年前から決めていた台詞。
僕は、ハニカミながら言った
『毎朝、僕のために味噌汁を作ってくれないか…』
今時、似合わないキザな台詞。
部屋は暗くて、表情は見えなかったが、
彼女もハニカミながら言ったに違いない
『…うん…私は木綿が好きだから毎日帰りにお豆腐を買ってきてね』


だから今日も帰りに
『おっちゃん!いつもの!!』
『あいよ!』
この掛け声と右手に下げる豆腐の重さが仕事から
解放される僕のスイッチとなった。





ありがとう

何かいいことをしてもらったら、ありがとうって言おう。
これが彼女との約束だ。
約束をした次の日の朝、彼女は起きるなり僕に笑顔でありがとうって言った。
僕はなんで?と不思議そうに聞くと、
彼女は一緒に朝を迎えられて幸せだから、
ありがとうって言ったんだよと答えた。
僕は思わず吹き出してしまった。
その日から僕たちは朝におはようではなく、
“ありがとう”が挨拶となった





何かラジオの投稿みたいですね。。。

ねぇ、寅次郎♪
最近、小さな声でニャーニャー鳴くようになりました。
声が高いから、メスなのかなぁ~?
って関係ないか(笑)


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ここにいる証

2009-08-06 08:12:07 | またたび
「一瞬のやる気なら誰でも持てる。
 けれども、持続性のあるやる気は深く認識したものだけに宿るのである。」
                野村克也(プロ野球監督)



自分に嘘をつきたくないから、感情を包み隠さず言葉で表現したい。
同じ感情になるなんて一度もない、嬉しかったり悲しかったりするけど
その時の一瞬一瞬で起こる感情は同じではない。
感情は匂いのように薄れていくもの。
でも、その時に感じたことは忘れたくない
その時の感情を忘れないためにこれからも書き続けたいと思う。
下手なりにも感情を自分の言葉で書きつづりたい。


それが生きている証だ。
ここに生きていた証でもある。

はじめてのあとがき

2009-08-05 08:37:55 | またたび
「我々の頭に浮かぶのは多くのものが待ち受けている未来だけだ。
 ああしておけばよかったとくよくよ考えても、過去を変えられるわけではない。」
                    ウォーレン・バフェット(投資家)


大学時代の思いでは色褪せてきてしまっっているけど、
この曲を聴くとふと鮮明なまでにあの情景が浮かんできます。

ネタが尽きるとちょくちょくと小説を載せていました。
今日で完結しました「WHATEVER」は大学時代に初めて書いた作品です。
なので、一番思い入れがあります。
8割方実体験をもとに書いてますので、ほぼ私小説になっています。
基本的に私は恋愛は成就したときがないので、こんな感じになったらいいかなと
儚い思いを言葉に込めました。

こんな男(主人公)は嫌い、女も嫌い、こんな男がいたらいいねと
2つの意見を頂きました。
「許す」という言葉があてはまるかどうかは微妙ですが、
許すとは相手のためではなく、自分のためにすることだと思います。
どんなに傷ついて、落ち込んでしまっても、いつかは許せるんじゃないかと
恋愛はそんなんじゃないかもしれませんが、私はこの作品の女性が実際に
いたとしたら、許すと思います。


以前ブログに載せた「WHATEVER」の歌詞です↓
http://blog.goo.ne.jp/axl-oyama1984/e/1fc893798d02d065510a52afab803a52






「音楽は歴史のしおり」ともいいます。
次のしおりになる音楽はどんな曲になるのかな。
悲しい曲だけはならないように祈って、ここで終了のエンターキーを押します。

WHATEVER-19

2009-08-05 08:30:03 | またたび
 キョウコの携帯電話に一本の非通知表示の着信が鳴った。
 「もしもし…?」
 いつもと違う着信メロディに、戸惑いながらキョウコは恐る恐る電話に出た。
 ガサガサと、受話器に何かが擦っているような雑音が続いた後に、
 小さなスピーカーからは、音楽が聞こえてきた。
 どこか聴き覚えのあるメロディ、緑の草原が頭の中に広がるような、
 唯一無二のやさしい歌声、ほんの数ヶ月前まで毎日聞いていた。
 あの曲が電話口の向こうから流れてきた。
 微かな音だったが徐々に脳裏に甦ってくるようだった。
 キョウコは目をつぶり、自分の頬を流れ落ちる暖かいものを感じた。
 その時、部屋にチャイムの乾いた音が響いた。
 キョウコは電話を放り出すと、急いで玄関に向かいドアを開けた。
 
 そこにはすべてを許し、変わらないために変わり続けたケンが、
 やさしい笑顔で立っていた。

end

WHATEVER-18

2009-07-31 08:21:50 | またたび
 「お前の部屋けっこう広いな」
 靴を並べずにドカドカと入っていくんだね。
 私はまだ入っていいとも何とも言っていないのに。
 それで何?趣味で集めているぬいぐるみまで文句を言う気なの?
 「寂しがり屋だな。お前は…」
 何もわからないくせに、一番の理解者みたいな言い方をするのはやめて。
 あなたに一体私の何がわかるの?お前の趣味がよくわからないって、
 誰と比べて言っているわけ?
 「俺でよければ、その寂しさを受け止めるよ」
 男の体温が伝わるようで背中に悪寒が走った。
 「やめぇて、離して、もう出て行って、出て行って」
 「何だよ、お前が家に来てもいいっていうから来たのに出て行けってどういうことだよ。意味わかぁんねぇーよ。マジで。」
 やっぱり私は馬鹿な女。意味もなく涙が出てきちゃう。
 「泣くなよ、わかった。出て行くよ。じゃーな」
 ケンは私にいつも尽くしてくれていた。
 それじゃ、私はケンに何かしてあげられていたのかな。
 ごめんね、ほんとに、ごめん。そんなこともわからないで付き合っていた私。
 こんなことを言える立場じゃないけど、もう一度会いたい。
 会って何を話していいかわからないけど、もう一度ケンと会いたい。
 ケンと電話で話す事は出来なかったけど、伝えたい事は伝わったかな。
 まだ胸の鼓動が収まらない。
 それともケンはあの娘と付き合っているのかな。
 それはそれでしかたがないことで割り切る。
 割り切らなきゃ。月がとても綺麗。ケンも同じ月を見ているかな。
 一年の中でこの風景と時間が一番好きだって、ケンが言っていたっけ。

WHATEVER-17

2009-07-30 08:12:26 | またたび
                         *
 ケンはいつも私の分まで靴を揃えから、部屋に入っていた。
 態度もそうだけど、決して人の心を踏みにじるようなことも決して言わないし、
 マイナスな面もプラス思考に変えてくれて、自信を持てるようにもしてくれた。
 礼儀正しいって言うか、生真面目すぎる。
 ほかにもお店に入るときとかの気遣いもやさしすぎるくらい。
 でも私のためなら時間を惜しんででも親身になってくれた。
 傷ついた心を包んでくれて、私はそれに甘えた。
 ケンがふざけて唄ってくれたあの歌も聞くことは出来ないね。
 いつも自分勝手でわがままな自分がすごく嫌になる。
 最後に何を話したっけ?よく思い出せない。
 ケンはほかに誰か好きな娘出来たかな?
 あんなフラれかたをしたら、臆病になって、誰も好きになれなくなっちゃうだろうな。
 
 「ほんとにお前ん家行っていいのか?」
 人って同じ事を繰り返しちゃうものかしら。
 痛みはすぐに忘れるもので、まるで何もかもなかったかのように
 記憶の片隅に置いていかれるものかもしれない。
 ケンだって祭りの日に誰かと歩いていたじゃない。
 あの娘見たことあるけど、誰だか思い出せない。
 ケンはそんなに器用じゃないから、すぐに好きになったとは思えない。
 たぶん、誘いを断れ切れずに遊んでいただけだと思うけど、
 ちょっとショックだったな。
 だからって私も私で自分を正当化できる理由がないことはわかっている。

WHATEVER-16

2009-07-29 08:13:15 | またたび
 「ケン、元気にしてた?…自分のわがままでケンを傷つけちゃって
 本当にごめんなさい。謝って済む問題じゃないよね。
 でもゆっくり考えてやっぱり私にとってケンは大事な人なの。
 自分勝手なのはわかっている。あんなひどいこといって
 許されることじゃないってこともわかってる。
 ただもう一度会って話がしたい。そのことを伝えたくて……」
 通話は途中で切れてしまったが言いたいことのおおよそ伝わった。
 独り部屋でたたずんでいると、部屋のカーテンが大きく膨らみ、
 夏を引きずる風がケンの頬にふれた。
 自分の胸を二度程叩き、大きく深く息をついた。
 ケンはアイヴォリーに輝く月に別れを告げた。


WHATEVER-15

2009-07-23 09:44:54 | またたび
                    6
街の景色が次第に緑から赤や黄色に変わりだし、
新秋の夜に照らしだされた満月と草むらから静かに流れる虫の音色で、
秋の夜長の時間がゆっくりと過ぎていた。
ケンは独り部屋の電気を消し、タバコに火をつけ、
雲一つない夜空に燻らす煙の先にある十五夜の月を眺めていた。
大学の夏休みは長く、九月の終わりまで休みだった。
ケンは何かするわけでもなく、しないわけでもなくただ毎日を過ごしていた。
夜は専ら部屋を暗くして音楽をかけて空を眺めていた。
今日もまた一日が終わる、そんな気持ちで深く息をついた。
そのときケンの携帯電話が鳴った。
暗い部屋で七色に煌々しく光る携帯電話を手に取り、
ディスプレイを覗き確認すると、すぐその場に置き戻した。
見覚えのある番号からの着信だった。
三十秒ほど鳴ると自動的に留守番電話に切り替わり、
一方的に喋りだした。ケンは久しぶりの声を聞いた。


WHATEVER-14

2009-07-18 09:11:23 | またたび
 アパートのドアを静かに開け、ゆっくり閉めるとその場にしゃがみこんだ。
 微かだが移り香した亜実の香水の匂いがした。部屋に戻ると、
 網戸から風が入ってきたせいか、棚に飾ってあったお気に入りのCDが数枚が床に落ちていた。
 手に取り確かめてみると幸いケースも中身も割れてはいなかった。
 そのまま棚に戻そうとしたが、あるCDを拾った時、ケンの動きが止まった。
 部屋は月明かりに照らされ、CDの表紙を見ることができた。
 そこには外国の山脈であろうか、アルプスのような大きな山が描かれていた。
 明かりも点けずにその風景を眺めていた。
 変わらないためには変わり続けなければならない、その言葉が脳裏に浮かんだ。
 部屋の灯りをつけると、丁度鏡に自分の姿が映った。
 鏡に映る自分を見て、これでいいんだ、そう自分に言い聞かせた。
 自分の胸を数回叩き、もう一度かがみに映る自分を見た。
 そのとき、すでにケンの顔から迷いは消えていた。


MY WAY

2009-07-04 11:52:53 | またたび
青空の下、僕はまた歩き出した。
行く先はわからないけど、眩しい太陽の下にいる。
何も状況は変わっていない。
でも、それでいい。

空振り三振を確認した。
今世紀最大の逆転をかけて、全力で振ったんだ。
でも、当たらなかった。

テンシにサヨナラを告げた。
笑ってくれていた。
だから僕も自然に笑みがこぼれた。
僕の目の前から消えて、どこかに飛んでいった。
僕はなぜか敬礼をしてしまった。
それを見て、テンシはまた笑った。


時々、何も考えず空を見上げる。
どこからかテンシが見てくれていると思うからだ。
そして、歩き出す。

いいことばかりが起きるわけじゃない。
嫌な事だってたくさんある。
嫌なことをどう受け止めるかが問題だ。
僕は前に逃げ出した。
そう思っている。


「だから人生やめられない」
最後に僕はテンシに向かって叫んだ。
これが自分の生き方だ。



『腹から笑って、素直に恋をした。
 終わってから気づくことがバカでも僕はいいんだよ』
 by THE LILAC「最低の世界 最高のレコード」