またたび

どこかに住んでいる太っちょのオジサンが見るためのブログ

WHATEVER-15

2009-07-23 09:44:54 | またたび
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街の景色が次第に緑から赤や黄色に変わりだし、
新秋の夜に照らしだされた満月と草むらから静かに流れる虫の音色で、
秋の夜長の時間がゆっくりと過ぎていた。
ケンは独り部屋の電気を消し、タバコに火をつけ、
雲一つない夜空に燻らす煙の先にある十五夜の月を眺めていた。
大学の夏休みは長く、九月の終わりまで休みだった。
ケンは何かするわけでもなく、しないわけでもなくただ毎日を過ごしていた。
夜は専ら部屋を暗くして音楽をかけて空を眺めていた。
今日もまた一日が終わる、そんな気持ちで深く息をついた。
そのときケンの携帯電話が鳴った。
暗い部屋で七色に煌々しく光る携帯電話を手に取り、
ディスプレイを覗き確認すると、すぐその場に置き戻した。
見覚えのある番号からの着信だった。
三十秒ほど鳴ると自動的に留守番電話に切り替わり、
一方的に喋りだした。ケンは久しぶりの声を聞いた。


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