現地からの報道によると、中国の胡錦濤国家主席は11日、楊亨燮(ヤン・ヒョンソプ)最高人民会議常任副委員長率いる北朝鮮の親善代表団と会談し、「中国は朝鮮半島の情勢を悪化させるあらゆる行動に反対する」と表明、北朝鮮の挑発的行動への自制を求めたとされる。
それを受けて、日本のマスコミはそれまでの危機感を煽る報道から一転、日朝間の将来に明るい兆しが見えたかのような捉え方をしている。この報道は、いかに日本のマスコミが危機意識に無縁であるかを証明しているようなものだ。胡主席がミサイル発射に関連して踏み込んだ発言をしたのは、確かに今回が初めてだが、本質的には事態は何も変わっていないのだ。
ジャーナリストや評論家にはもう少し東アジアで起きていることを冷静に見つめ続け、分析していただきたいものだ。情報を丹念に精査していると、中国のしたたかで、かつ冷酷な面が垣間見えてくるはずだ。金正日政権の“噛み付き犬”のような言動に目を奪われていては、それこそ「森を見ずして」の典型だ。本質を見失ってしまう。核問題にしても、今回のミサイル問題にしても北朝鮮が暴走しているかのような印象が強いが、情報の間から金体制の背後で糸を引いている“なにものか”が見えてくる。
それは、ロシアではない。中国だ。中国は、西側と北朝鮮の間に入って調停役をしているかのように振舞っているが、実際には“狂犬”を使って外交を有利に進めようとしている。「ミサイル問題」にしても、中国が幾つか持つ日本に対する「持ち札」の一枚を切って日本政府の反応を見ているだけのことではないか。
それでは今回、中国はなぜこのような「人騒がせ」なことをするか。
靖国問題で頑迷に軍国主義を美化しようとする小泉政権に対するメッセージの一つと私は見ている。また、それに一つ加えるとしたら、エネルギー開発がらみの領海問題があるが、恐らく今回は「8月15日」が“怒り”の源泉だろう。夏が近付くにつれ小泉首相の周辺から「どうやら8月15日に行くようだ」との声が出て来た頃からの中国側の反応を一つひとつ検証してみたら私の「独断と偏見」に納得がいくはずだ。中国はずっと強い不快感を隠していない。
だから、10日から北朝鮮に送り込んでいる武大偉外務次官や冒頭の胡主席の発言は、事前に中国が書き上げた「ミサイル発射騒動記」に盛られていたものであるはず。日本が一喜一憂すれば、中国の思う壺だ。
今回の中国の狙いは、ズバリ、小泉首相に8月15日に靖国を参拝させないことと日本の閣僚からミサイル発射を契機に(中国にとって)都合の良いコメントを引き出すことにあったと私は思う。
靖国参拝については、これまで私見は何度も書いてきたので、ここではあえてこれ以上触れずに、小泉政権の閣僚や自民党の有力政治家、それに御用評論家の“勇気ある(?)”発言に意見を述べたい。
今回、多くの政治家や評論家がTVカメラの前で“本音”を口にした。
「誘導弾等による攻撃を防ぐために他に手段がないと認められる限りにおいて誘導弾等の基地をたたくことも法律上の問題としては自衛権の範囲内として可能との(国会)答弁がある」(安倍官房長官)
「向こう(北朝鮮)は『核は持っている』と言う。ミサイルは(核弾頭が)くっつく。(その核付きミサイルが)日本に向けられる場合、被害を受けるまで何もしないわけにはいかない」(麻生外相)
「敵国が確実に日本を狙って攻撃的な手段、ピストルで言えば引き金に手をかけたときであれば、日本を守るためどうするかという判断は首相と我々とですることができる」(額賀防衛庁長官)
これは、これまでは国会答弁等で時の為政者や防衛庁長官が、本音を言いたくとも平和憲法やマスコミが邪魔になってマスコミや世論の反応を見ながら小出しに言ってきたことを、改憲論議も浸透してもはやタブーではなくなったとの判断が働いたのだろう、今回のミサイル発射を機に一挙に吐き出してしまったものだ。
この一連の発言を聞いて、中国側はしてやったりとほくそえんだに違いない。中国とすれば、かねてから国際社会に対して日本の「軍国主義復活」をアピールしてきたものの、今ひとつ真剣に耳を傾けてもらえなかったという現実がある。日本が安保理の常任理事国入りをしようとした際に中国は猛反発したが、各国への説明では日本の「普通の国」構想の奥に見える軍国主義の復活が主な反対理由であったといわれている。
「勝負は決した」
日本政府要人から「相手が打ち込むつもりならこちらからの先制攻撃も止む無し」という発言を、つまり、「本性(キバ)をむき出しにした」日本の姿を、世界中の国々に対してアピールすることに成功した中国政府の要人達は今頃「安倍さん、見事に挑発に乗ったな。あんたも若いね」と言いながら祝杯を挙げているに違いない。先兵役を買って出た金正日には身に余る賞賛とご褒美が送られることになるだろう。
その辺りの事を中国から東京に来たアメリカ特使(ヒル国務次官補)から言われたのではないか。小泉首相は予定されていたとはいえ、「お国の一大事」であるはずなのに11日昼過ぎ、国を後にしてイスラエルやパレスチナの訪問に出かけてしまった。その足で首相としては最後の出席となる主要国首脳会議(G8サミット)に向かうとされている。つまり、これからも小競り合いは続くだろうが、ミサイル問題はひとまずこれにて「第一幕」の幕引きだ。
今朝も新聞のTV番組欄を見ると、各局揃ってこの問題をセンセイショナルに扱っている。恐らく11日の番組で安堵感が流れ、視聴率が落ちたのだろう。それを取り返すために各局揃って刺激的な番組宣伝をしている。これでまた、世論は「反北朝鮮」「憲法改定」「先制攻撃やむなし」に大きくぶれるだろう。
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最後に一つ書き加えておくが、読者からいただく御意見の中に、「あなたは反中国か?」と言うものも最近出てきた。私は中国のやることの是非を言っているのではなく、国家というものは国益優先。どの国も大方そのレヴェルであって、特に中国が良いとか悪いと言っているのではないので御理解いただきたい。何度も繰り返すことになるが、外交というのは、キレイ事はホンの一部で、自らの利益をいかにして守ろうかというせめぎあいが主なものなのだ。
それを受けて、日本のマスコミはそれまでの危機感を煽る報道から一転、日朝間の将来に明るい兆しが見えたかのような捉え方をしている。この報道は、いかに日本のマスコミが危機意識に無縁であるかを証明しているようなものだ。胡主席がミサイル発射に関連して踏み込んだ発言をしたのは、確かに今回が初めてだが、本質的には事態は何も変わっていないのだ。
ジャーナリストや評論家にはもう少し東アジアで起きていることを冷静に見つめ続け、分析していただきたいものだ。情報を丹念に精査していると、中国のしたたかで、かつ冷酷な面が垣間見えてくるはずだ。金正日政権の“噛み付き犬”のような言動に目を奪われていては、それこそ「森を見ずして」の典型だ。本質を見失ってしまう。核問題にしても、今回のミサイル問題にしても北朝鮮が暴走しているかのような印象が強いが、情報の間から金体制の背後で糸を引いている“なにものか”が見えてくる。
それは、ロシアではない。中国だ。中国は、西側と北朝鮮の間に入って調停役をしているかのように振舞っているが、実際には“狂犬”を使って外交を有利に進めようとしている。「ミサイル問題」にしても、中国が幾つか持つ日本に対する「持ち札」の一枚を切って日本政府の反応を見ているだけのことではないか。
それでは今回、中国はなぜこのような「人騒がせ」なことをするか。
靖国問題で頑迷に軍国主義を美化しようとする小泉政権に対するメッセージの一つと私は見ている。また、それに一つ加えるとしたら、エネルギー開発がらみの領海問題があるが、恐らく今回は「8月15日」が“怒り”の源泉だろう。夏が近付くにつれ小泉首相の周辺から「どうやら8月15日に行くようだ」との声が出て来た頃からの中国側の反応を一つひとつ検証してみたら私の「独断と偏見」に納得がいくはずだ。中国はずっと強い不快感を隠していない。
だから、10日から北朝鮮に送り込んでいる武大偉外務次官や冒頭の胡主席の発言は、事前に中国が書き上げた「ミサイル発射騒動記」に盛られていたものであるはず。日本が一喜一憂すれば、中国の思う壺だ。
今回の中国の狙いは、ズバリ、小泉首相に8月15日に靖国を参拝させないことと日本の閣僚からミサイル発射を契機に(中国にとって)都合の良いコメントを引き出すことにあったと私は思う。
靖国参拝については、これまで私見は何度も書いてきたので、ここではあえてこれ以上触れずに、小泉政権の閣僚や自民党の有力政治家、それに御用評論家の“勇気ある(?)”発言に意見を述べたい。
今回、多くの政治家や評論家がTVカメラの前で“本音”を口にした。
「誘導弾等による攻撃を防ぐために他に手段がないと認められる限りにおいて誘導弾等の基地をたたくことも法律上の問題としては自衛権の範囲内として可能との(国会)答弁がある」(安倍官房長官)
「向こう(北朝鮮)は『核は持っている』と言う。ミサイルは(核弾頭が)くっつく。(その核付きミサイルが)日本に向けられる場合、被害を受けるまで何もしないわけにはいかない」(麻生外相)
「敵国が確実に日本を狙って攻撃的な手段、ピストルで言えば引き金に手をかけたときであれば、日本を守るためどうするかという判断は首相と我々とですることができる」(額賀防衛庁長官)
これは、これまでは国会答弁等で時の為政者や防衛庁長官が、本音を言いたくとも平和憲法やマスコミが邪魔になってマスコミや世論の反応を見ながら小出しに言ってきたことを、改憲論議も浸透してもはやタブーではなくなったとの判断が働いたのだろう、今回のミサイル発射を機に一挙に吐き出してしまったものだ。
この一連の発言を聞いて、中国側はしてやったりとほくそえんだに違いない。中国とすれば、かねてから国際社会に対して日本の「軍国主義復活」をアピールしてきたものの、今ひとつ真剣に耳を傾けてもらえなかったという現実がある。日本が安保理の常任理事国入りをしようとした際に中国は猛反発したが、各国への説明では日本の「普通の国」構想の奥に見える軍国主義の復活が主な反対理由であったといわれている。
「勝負は決した」
日本政府要人から「相手が打ち込むつもりならこちらからの先制攻撃も止む無し」という発言を、つまり、「本性(キバ)をむき出しにした」日本の姿を、世界中の国々に対してアピールすることに成功した中国政府の要人達は今頃「安倍さん、見事に挑発に乗ったな。あんたも若いね」と言いながら祝杯を挙げているに違いない。先兵役を買って出た金正日には身に余る賞賛とご褒美が送られることになるだろう。
その辺りの事を中国から東京に来たアメリカ特使(ヒル国務次官補)から言われたのではないか。小泉首相は予定されていたとはいえ、「お国の一大事」であるはずなのに11日昼過ぎ、国を後にしてイスラエルやパレスチナの訪問に出かけてしまった。その足で首相としては最後の出席となる主要国首脳会議(G8サミット)に向かうとされている。つまり、これからも小競り合いは続くだろうが、ミサイル問題はひとまずこれにて「第一幕」の幕引きだ。
今朝も新聞のTV番組欄を見ると、各局揃ってこの問題をセンセイショナルに扱っている。恐らく11日の番組で安堵感が流れ、視聴率が落ちたのだろう。それを取り返すために各局揃って刺激的な番組宣伝をしている。これでまた、世論は「反北朝鮮」「憲法改定」「先制攻撃やむなし」に大きくぶれるだろう。
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最後に一つ書き加えておくが、読者からいただく御意見の中に、「あなたは反中国か?」と言うものも最近出てきた。私は中国のやることの是非を言っているのではなく、国家というものは国益優先。どの国も大方そのレヴェルであって、特に中国が良いとか悪いと言っているのではないので御理解いただきたい。何度も繰り返すことになるが、外交というのは、キレイ事はホンの一部で、自らの利益をいかにして守ろうかというせめぎあいが主なものなのだ。