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映画、読書などのメモ

空中散策の自由・・・マン・オン・ワイヤー/MAN ON WIRE

2015-05-10 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★空中散策の自由・・・マン・オン・ワイヤー/MAN ON WIRE

夢を信じるアートか、美し過ぎる犯罪か。
空に、近づきたかった。
夢に近づきたかった。 
30年以上も前の1974年のパフォマンス(もしくは敢えて作品)。
犯罪性を含むからこそ、
美しいスリリングなアバンギャルドへと変身する。

「なぜ、あんなことをしたのか?」プティが誰からも聞かれる質問だそうです。それに対してプティの答えはいつも「理由なんてない。」フィリップ・プティのパフォーマンスが「美しい」と感じさせるのは、この「理由なんてない」という反逆精神があるからでしょうか。

プティが夢を持って立ち向かったのは、あのWTCでした。今から思えば歴史の皮肉と残虐性を感じましたが、ジェーム・ズマーシュ監督は、敢えて2001年 9月11日の同時多発テロには触れていません。70年代の時代性と人間の行為のみを記録したかったのでしょう。美しさへの憧れが凝縮した映像でした。

なお、余談ですが、
WTCは、公共建築や大型ビルを建てる際はその建設費の1%をパブリック・アートに使うという条例を適用した先駆的なビルでした。美術館ができるほどの数と質のいい美術品があったと思われますが、同時多発テロによって、多くの命と一緒にその美術品の全ても同時に失われました。

ドキュメント映像の美しさと緊張とそして穏やかな余韻を与えてくれているのが、ナイマンの音楽です。あの「ピアノ・レッスン」はもちろんエリック・サティの「ジムノペディ」も静謐感を与えてくれます。

イチ押しの完璧な五つ星アート作品です。
命を賭けるからアバンギャルドです。

 


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