有田芳生の『酔醒漫録』

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鶴見俊輔さんは素晴らしい「悪人」でした

2015-07-27 08:23:35 | 日記
鶴見俊輔さんと会うためには往復ハガキで連絡するのがいちばんだと、中川六平さん(13年に63歳で逝去)に教えられました。2006年のことです。BC級戦犯として処刑された木村久夫さんについて、鶴見さんの父である鶴見祐輔さんの手紙を発見したので、この機会にお会いして戦犯についてご意見を伺いたいと思ったのでした。指定されたのは京大会館。2006年6月24日の午後でした。クラブサンドを注文した鶴見さんは、いきなり「私は悪人なんです」と語り出したので、びっくりしました。その意味は、『言い残しておくこと』(作品社、2009年)でも語られています。

「善人は弱いんだよ。善人として人に認められたいという考えは、私には全然ない。I AM WRONG. 悪人で結構だ!」

鶴見さんのいう「悪人」とは、藤田省三さんの「不良精神の輝き」とも重なるものです。戦犯の問題だけでなく、あらゆる関心を語ってくれた贅沢な個人授業でした。鶴見さんにはさらにお聞きしたいことが出てきました。翌2007年に同じように往復ハガキで連絡をしたところ、疲れているのでいまは会えないと返事をいただいたのです。思想界の自由人で「小さなもの」の大切さを身体で知る人でした。ぼくが鶴見さんを意識したのは、上田耕一郎さんの論文「プラグマチズム変質の限界ーー『思想の科学』の示すもの」でした。いまからの出張に鶴見さんと上田さんの対談(上田耕一郎『人生の同行者』)を持っていくことにしました。深い影響を受けたお二人がすでに在天にあることはとても残念なことです。(2015/7/25)

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