本日は、A木くんの推薦作品 スタジオ・ジブリ製作「コクリコ坂から」。
プロジェクターの準備の際に、DVDを渡された瞬間、素直で優しい人柄のA木くんらしい作品のチョイスだなあと。ちなみに、彼は劇場で3回も観られたそうです。
↑ フランス版パッケージ
この作品は、若い世代対象のジブリ・ファンタジーを離れ、青春懐古ものに仕上げてある。1963年を舞台に、東映や日活の青春ものを彷彿とさせる高校生たちの淡い恋を描きだしています。いつものごとく、ジブリらしい作画も柔らかで、音楽も素晴らしい。
http://youtu.be/c2hBnA-R4uw
http://youtu.be/hYvHyNjGM7o
物語の骨格は、母親の不在、そして父親の喪失をトラウマとして抱えたヒロイン、松崎海と、風間俊が織り成すラブストーリー。俊の出生の秘密、そして時代背景が1963年ということもあって海や俊が通う学校の洋館カルチェラタンの保存を中心にした学生運動をテーマとして展開します。が、見終わってみると、イデオロギーからは遠いせいか、この学生運動の印象はあまり残っていないんですね。
監督の宮崎吾朗氏は、リアルに学生運動の時代を知らない世代な訳で、学生運動を知る世代の人たちがノスタルジーに浸るには、若干、描写不足で、安易に昔懐かしい時代を再現してしまったようで少し残念さを感じました。さらに、ヒロインの用意する朝食や夕食、商店街の風景、インクの匂いすら感じる校内新聞制作でのガリ版工程、自転車のふたり乗りのシーンなどのディテールは、かなりうまく描けていると感心したのですが、「血縁関係という障害」、「異父であったという事実」からの心象風景の葛藤と変遷にリアルさを欠いたように思います。このプロセスが安易過ぎて、結局、主人公の恋愛話にやや魅力がなくなってしまったかな。アメリカから、急に帰国した母の前で見せる海の涙、淡い恋心、それ自体は、すごくいい感じなのですが、泣けるまでには・・・。
「ALWAYS、3丁目の夕日」のように「上を向いて歩るこう」ということが主題なのであれば、やや安直。「温故知新」ということであれば、息子の後ろでどっしりと構える宮崎駿さん(脚本を担当)の影がちらついてくる。偉大な父をもつ息子の葛藤が、垣間見れる気がするのは私だけでしょうか。辛口の意見で申し訳ありません。「千と千尋・・」や、「ラピュタ」と自然、比較してしまうのがよくありませんね。
“偉大な父親”と比べられるハンディは致し方ないとしても、「印象派の絵画の世界に入り込んだような風景描写の美しさ」(パリジャン紙)、「小津映画同様、シンプルな喜びが悲哀に覆される……きわめて人間的な年代記」(レザンロックプティブル誌)など、フランスではかなりの称賛を得ているようです。
これまでと同様、ファンタジーな作品に通じる品の良さや、爽やかな後味も健在。ジブリファンならずとも、われわれ世代にでも、十分に楽しめる作品に仕上がっています。
A木くん、爽やかな秋空のような作品を、ありがとうございました!
◆「コクリコ坂から」
あらすじ
1980年に『なかよし』に連載された同名コミックを、これが「ゲド戦記」に次ぐデビュー2作目となる宮崎吾朗監督で映画化した長編アニメーション。1963年の横浜を舞台に、学生運動に身を焦がす若者たちの姿と、出生の秘密に揺れる一組の男女の恋の行方をノスタルジックに綴る。
1963年、横浜。港の見える丘に建つ古い洋館“コクリコ荘”。ここに暮らす16歳の少女、松崎海は、大学教授の母に代わってこの下宿屋を切り盛りするしっかり者。あわただしい朝でも、船乗りの父に教わった信号旗(安全な航行を祈る)をあげることは欠かさない。そんな海が通う高校では、歴史ある文化部部室の建物、通称“カルチェラタン”の取り壊しを巡って学生たちによる反対運動が起こっていた。ひょんなことから彼らの騒動に巻き込まれた海は、反対メンバーの一人、風間俊と出会い、2人は次第に惹かれ合っていくのだが…。
シネマ部のその後の食事会では、70年代、神戸のカルチェラタン話し、そして、A木くん宅の文化鍋の由来、I上さまからの北野武監督作品「アウトレージ・ビヨンド」話で展開し、最後はF部長の若き日の恋話で盛り上がりました。F部長、チーズ・フォンデュとサラダ、すごくおいしかったです。いつも、ありがとうございます。
おまけ http://youtu.be/UA6bD6LvT1o