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紫電改(はげハゲ)

2006-03-15 01:46:05 | お店情報

サイド7にジオン公国軍の奇襲がなければ、避難民がホワイトベースに逃げ込まなければ、カイ・シデンという少年の成長はなかったのではないか。そう思わせるほど、一年戦争における彼の成長は著しいものであった。逆に、ホワイトベースに乗るまでの彼は人間的に未成熟であったと言える。

U.C.0061、カイはプエルトリコ系のスペースノイドとして宇宙に生まれた。生まれてから地球に降りたことは一度もなく、地球に住む者を既得権益の有無にかかわらずエリート視していたという。そうした意味では、彼は典型的なスペースノイドであった。一年戦争が膠着状態に陥った時期、カイはサイド7に住んでいた。彼はそこでジオン公国軍特務部隊の奇襲に遭い、ほかの避難民と同じようにホワイトベースへと乗り込むこととなった。そのときの彼は、セイラ・マスに「あなたみたいな人、サイド7にひとりで残ってるといいんです」とまで言われ放たれている。この言葉はセイラの性格の強さ故だが、彼女が言うように彼がひとりでは何も出来ない日和見主義だったこともまた事実であった。彼はそのように振る舞い、周囲からもそうした目で見られていたのである。すべてに対して斜に構え、傍観者としての立場を崩さない、まさしくアウトローとでも言うべき存在だった。そうした姿勢が、セイラをして彼を「軟弱者」と言わしめた最も大きな理由だったといえる。

しかし、父が技術者であった関係で大型特殊車輌の免許をいくつか取得していたカイは、ホワイトベースクルーとしての責務を否応なく背負わされていく。はかの少年少女たちと同じく、戦争という一切の甘えが許されない状況に追い込まれていったのである。

ホワイトベースに乗艦したカイは、サイド7脱出当時は対空機銃の砲手を担当していた。しかし、人出不足から、地球降下後にRX-77-2ガンキャノン(C-108のコードが与えられていた)のパイロットとなった。これには異説も存在し、地球降下以前にRX-75ガンタンクの操縦を担当したとも言われている。しかし、当初の彼は数少ないMSを運用するパイロットの責務を負いながらも、 掩護にのみ徹するとさえ語っていた。その頃の彼は、戦う意義を見出せない自分に違和感があったのだろう。積極的に戦うことを嫌う彼の姿勢は、そうした感覚のゆえのものだったに違いない。

 

  そう、俺は軟弱者さ

   腹を立てるほどの人間じゃないのさ

 

その違和感からか、ベルファスト基地で艦を降りたカイは、そこでミハル・ラトキエという少女に出会う。幼い弟妹を養うためにジオン公国軍のスパイとして働く彼女に、戦争の悲惨さを見たのか、それとも状況に流されるままに戦ってきた己の不甲斐なさを省みたのか。カイは確かな決意のもと、ホワイトベースへ戻る。スパイ行為の果てに戦いに巻き込まれて死んでいったミハルの存在も、彼の戦う意義となったのだろう。彼は強い意志で次のように語る。「ミハル、俺はもう悲しまないぜ。お前みたいな悲しい子を増やさないためにジオンを叩く。徹底的にな」

一年戦争の終結まで、カイはホワイトベース隊の一員として戦い抜いた。そこには、かつて「軟弱者」と呼ばれた少年の姿はなく、人間的にも大きな成長を遂げたひとりの戦士がいたのである。

 

カイ・シデン
階級:民間人→少尉  年齢:18歳  性別:男  所属:地球連邦軍第13独立部隊  出身地:不明(スペースノイド)  技能:MSパイロット

■ホワイトベースにおけるカイ・シデンという存在
口が達者な皮肉屋で、思ったことを歯に衣着せず言葉にするような人間であった。そのくせ率先して行動することを嫌い、何事にも消極的で、周囲の人間から良く見られることはなかった。実際ホワイトベース隊の中で、彼は浮いた存在であったといっても過言ではないであろう。しかし彼の言動は偽らざる本音に根ざしたものであった。戦うことを余儀なくされたホワイトベースのクルーたちは、自らの意思を少なからず抱え込んでいたに違いない。その集団において、カイは自分の感情をはっきりと(ストレートとはいえないが)表す数少ない人間だったのである。

■本質を見抜く洞察力の鋭さ
カイの毒舌は、全てを穿って見る彼の性格によるものと見られがちだが、一概にそうとも言い切れない。ひねくれた物言いではあったが、彼の言葉の中には物事の核心を突いていたものもあった。ジャブローに到着したホワイトベースからカツ・レツ・キッカら3人の子供たちが逃げ出した理由を、艦から降りたくない点にあると即座に見抜いた彼の観察眼なども、その一例と見てとれる。

■パイロットとしての力量と成長
カイはアムロたちとともに、ホワイトベースのMSパイロットとしてその一翼を担った。アムロの華々しい戦績に隠れがちではあるが、彼もまた実力を備えたパイロットだったと言える。無論、MSに搭乗した瞬間から一人前だったわけではなく、他のパイロットと同様に各地を転戦していく中で技量を高めていったのである。正規の訓練を受けていないにもかかわらず、一般のパイロットをも凌ぐ戦果を挙げた事実は、彼が秘めていた素養の高さにあったのかもしれない。

■セイラの苦悩を見抜いたカイの心中
セイラはジオン・ダイクンの娘という自らの出自を伏せていた。しかし、カイは彼女が公国軍となんらかの繋がりがあると察していたのかもしれない。ア・バオア・クー戦の直前、カイはセイラに「ジオンを叩いた後に、連邦も叩くのかい?」と問い掛けている。その問いに彼女は言葉を濁したが、カイはそのような曖昧な物言いに納得がいかなかったのだろう。自分を「軟弱者」と評した女性の煮え切らない態度が許せなかったのかもしれない。

■ミハルとの出会いと別れ
ベルファスト基地の前で物売りをしていた少女が、ホワイトベースを降りた自分を誘ってきたとき、カイはどのような感情を抱いたのだろうか。洞察力の鋭いカイのことである。ミハルが嘘を言おうとも、彼女が公国軍のスパイだとすぐに察しがついたに違いない。それでもなお、彼女が欲する情報を洩らしたのは、戦争の中で弟妹と生きようととするミハルへの優しさだった。だからこそ、ミハルがホワイトベースに密航してきたときにも、彼女を匿ったのである。だが、戦いの中でミハルはその命を散らす。彼女の死に、無関係な人間を巻き込んでいく戦争の残酷さを垣間見たカイは涙するのだった・・・・・・。

■おまけ
一年戦争後、カイはジャーナリストに転身。数々のスクープをモノにする敏腕記者として「Zガソダム」に登場する。