<学力低迷即効薬なし>
http://www.yomiuri.co.jp/osaka/feature/kansai1321030986850_02/news/20111113-OYT8T00168.htm
学校が休校する土曜日の朝、大阪府門真市立門真小の図書室に児童約30人が次々に集まってくる。
「じゃあ、いくで――。始め!」。学習アドバイザーの大学生のかけ声で、計算を反復練習する「百ます計算」に取り組む。学校の宿題やプリント問題など、自分のペースで勉強もする。
門真市教育委員会が2009年度から全22市立小・中学校で始めた「土曜自学自習室」だ。
小学4年女児(10)は「家ではゲームで遊んじゃうけど、ここだと、勉強できるねん」と笑う。
大阪の子どもたちの学力が危機だ。
文部科学省が実施した全国学力テスト。都道府県別成績で、初回の07年度、大阪は小学生の国語Aが全国45位、中学生の数学Aが43位など、全科目で下位だった。10年度は、小学生は全国平均並みまで伸びたものの、中学生は低迷したままだ。
府教委が独自に行った小・中学校の学力テストで、門真市は全科目で市町村別の下位を占める。
「勉強の習慣を身につけることから始めようと思った」。土曜自習の狙いについて、門真市教委の谷口佳也・地域教育文化課長(53)は話す。
なぜ、学力が低いのか。
朝食の摂食率との関連がうかがえる数字がある。09年度の全国学力テスト結果によると、大阪では朝食を毎日食べている児童は全国データより約5ポイントも低かったが、成績が全国トップクラスの福井県は全国を2ポイント上回る。府教委の分析では、学力が低い子は、朝食を食べない割合が高いという。
「朝ご飯に何を食べましたか」。寝屋川市立国松緑丘小は昨年11月、保護者に朝食メニューや家庭学習の様子を記してもらう「げんきカード」を始めた。
枡井政明校長(54)は「朝食が菓子パンだけの家庭も最初はあった」と明かす。「でも、カードに毎日記すことで、『これではあかん』と保護者の意識が変わってきた」
大阪市教委は、子どもの理解度に合わせて少人数体制で教える習熟度別授業を導入している。ある中学校は、生徒が理解できるまで教える「基礎コース」と、高度な応用問題に挑戦できる「発展コース」を設けた。
「四角形の内角が360度なのは何でやと思う?」
基礎コースの授業。男性教諭(45)が黒板に四角形を描き、12人の生徒たちに問うと、1人が「あ、四角形のなかには、三角形が二つあるからや!」と声を上げた。
「『わかる』ということを実感させることが大切。そうすれば、学力もついてくる」と教諭は力説する。
習熟度別授業の導入で、大阪市は年間10億~15億円かけて約300人の常勤、非常勤講師を採用。各小中学校の現状に合わせ、1~2人増員している。
所得が低い家庭の子どもほど成績が低いとのデータもある。府は学用品などの就学援助を受ける小・中学生の割合が全国最多の28%。家庭事情や経済状況も影を落とす。学力向上に向けた即効薬も万能薬もない。
「学校教育は教師の能力、教育方法にかかっている」と、米川英樹・大阪教育大教授(教育社会学)は話す。「行政は教師を育成し、能力を伸ばす施策に力を入れてほしい。地域や保護者の実情も踏まえて、教師が働きやすく、教えがいのある環境を整えることが大切だ」
(冬木晶、梶多恵子)