ライプツィヒ歌劇場、ウルフ・シルマー指揮の「ワルキューレ」、大いに感動した。
本来の座席は1階パルケット1列目。つまり、ピットが目の前の所謂「かぶりつき」ということで期待したが、オーケストラがよく聴こえないなど音響的にはパッとせず、良さを感じつつも酔えなかったのだが、2階席に移動してからの第2幕以降はワーグナーを堪能した。
とくに魅せられたのは、第2幕後半から第3幕ラストまで。つまり、ブリュンヒルデの登場と活躍とともに音楽も充実していった、とも言える。
その見事なブリュンヒルデを歌ったのが、エーファ・ヨハンソン。いま調べたら2013年のびわ湖の「ワルキューレ」でもブリュンヒルデを歌っていたことが分かった。これなら、聴きに(或いは観に)行くのだったなぁ!
ワーグナーの分厚いオーケストラをものともせず突き抜ける輝かしい声。凛とした気品が備わっていて、まさにブリュンヒルデの性格そのもの。ジークムントに死を宣告する場面の幽玄さ、「魔と炎の音楽」に至るまでのヴォータンとのギリギリの攻防で見せた強さ! 声ばかりでなく、容姿と立ち居振る舞いの美でもって、歌劇場の空気を支配していた。
(ほかの歌手にもいろいろ感想はあるが、当方の体力の都合で割愛させて頂く。しかし、フンディング役のルーニ・ブラッタベルクの邪悪さと圧倒的な声量については触れておかずにはおれない。実に見事であった)。
ウルフ・シルマーの指揮は、どこか壮年期のカール・ベームを思わせる。勘所を心得た職人の指揮ぶりであり、ここぞというときにグイグイと手綱を引いて、音を開放するよりは、グッと締まりのある高揚に達する。
これほど、美しい「ヴォータンの別れと魔の炎の音楽」を聴けるとは思っていなかった。というわけで、大いに満足の一夜であった。