岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

岩木山の南麓に立つ「森山」入山禁止・自然観察会の場所、やむを得ず変更(4)

2008-05-22 05:59:44 | Weblog
(今日の写真は18日の「滝ノ沢林道沿い自然観察会」時に出会ったキク科タンポポ属の多年草「蝦夷蒲公英(エゾタンポポ)」である。まさに、懐かしい古を伝える在来の孤高である。
 事前調査で「生育」を確認してはいたが、観察会参加者にとっては貴重な出会いとなったであろう。何故ならば、それほど、この「エゾタンポポ」は数が少ないのである。
 私たちが日常、見かけるタンポポは「セイヨウタンポポ」ばかりである。北海道や東北地方の公園や原っぱ、牧草地、それにリンゴ園樹下などは、セイヨウタンポポが絨毯を敷きつめたように咲いている。だが、エゾタンポポに出会うのは容易ではない。
 私は「岩木山」だけで数回会っているに過ぎない。しかも、岩木山も最近は極度に少なくなっている。
 タンポポは日本に二十種ほどが自生していると言われている。総苞片に角状の突起があり関東に多いカントウタンポポ、北海道や本州(中部地方以北)に分布し花が大きいエゾタンポポ、関西から西に分布して白花のカンサイタンポポなどがある。しかし、明治の初めに持ち込まれたヨーロッパ原産のセイヨウタンポポが勢力をどんどん拡大している。
 セイヨウタンポポは受粉しなくても「単為生殖(雌が単独で子を作ること・卵子が精子と受精することなく、新個体が発生することを単為発生(たんいはっせい)と呼ぶ。」によって結実することや1年中咲くため、エゾタンポポが追いやられ姿を消しつつあるのだ。
 ある図鑑では帰化植物のセイヨウタンポポの例として、岩木山山麓の林檎園に咲き誇る写真を掲示している。
 そこまで、セイヨウタンポポは岩木山山麓のみならず「タンポポ界」を席巻し、我が国を乗っ取る勢いである。

 初夏である。ある登山道でのことだ。顎に流れ落ちる汗を拭く間もなく、出発だ。また土の道に変わった。 尾根を横切る傾斜のない登山道の向こうに黄色い花が目にとまる。在来種のエゾタンポポがぽつりぽつりと丈を短くして咲いている。
まさに「たんぽぽと小声で言ひてみて一人:(星野立子)」という世界ではないか。…『道ばたにひっそりとタンポポが咲いていた。それを見つけて思わず「あっ、タンポポ」と声を出してしまった。それも一人なのに。』と解釈しておこう。
 タンポポを見つけた喜び、ウキウキする上気した風情が素直に表現されている秀句だろう。
 在来種はセイヨウタンポポに追い立てられ細々と命をつないでいる。孤高を保ち今、風に全身を震わせて咲くこの一輪も追い立てられて、山麓からこの高みまで逃避行さながらに登って来たのかと思うといじらしい。
「在来種古来に馳せる懐かしさ」であり、まるでアマゾンの密林で少数民族の原住民に出会ったような感慨を覚えるのだ。
 タンポポの花ことばは「別離」だという。人里から在来種が消え去るという人との別離…。花ことばの奇妙な符合を考えると在来種にとっては何と皮肉な運命であろう。
 それを地でいく在来種の減少は、日本文化が薄れていく風潮や岩木山への信仰心が育まれなくなってきている風潮に似ている。寂しいことだ。

 タンポポについて 

 花名の由来には…
1.・民俗学者、柳田国男の葉を含めた全体を上から見ると鼓面に似ているところから、鼓を打つ音「タン、ポンポン」からであるとする説。
2.・綿毛が「たんぽ(拓本などに使用する)」に似ているからとする説。
3.・稽古用のたんぽ槍に似ているからとする説。
…などがある。また、別名は「鼓草」、「ふじな」などがある。

 在来種のタンポポとセイヨウタンポポの見分け方

 頭花を支える緑の部分(総苞片)を見て、それがまくれていればセイヨウタンポポであり、まくれていなければ在来種である。現在は殆どがセイヨウタンポポである。
 在来種タンポポの特徴
1.丈が高く、葉も長い 2.総苞外片は下方に反り返らない 3.蕾みの総苞外片も下方に反り返らない 

 花言葉は「別離」・「田舎の神託」である。ともに綿毛からの発想である。イギリスでは綿毛を使って吉凶を占ったことから「田舎の神託」という花言葉になった。花は日が照ると開き、日が沈むと閉じる。故に西洋では「牧童の時計」と愛称される。
 若い葉は水にさらして食用とすることが出来る。フランスではベーコンとそれから出た油で炒めて食べる。
 また、健胃・解熱、消炎作用があり、蒲公英湯は乳の出をよくする漢方薬にもなる。

◆岩木山の南麓に立つ「森山」入山禁止・自然観察会の場所、やむを得ず変更(4)◆

(承前)
 K氏に電話で「森山」入山の許可をお願いした時に、当然、その日に断りの手段がなかったので事後承諾を得る覚悟で「森山」に入山したことは報告したし、事後の了承は得たと思っている。
 入山許可が出来ない理由は、まず「私有地であること」、次いで「野草や山菜採りによって、山が荒らされること」や「勝手に入山されると安全管理が行き届かなくなること」「ゲートの施錠や開放に人手と手間がかかる」などであった。よって、「入山は禁止である」となるのである。
 私はそのような理由を認めながらも「山は荒らさない」し、「森山内のどこで事故が発生してもそれは観察会を実施する側の責任で処理するので、安全管理面での責任はあなた方にはない」ので、何とか18日に森山で「自然観察会の実施」を認めて欲しい。また、ゲートの錠は朝に開けておいてくれると、私たちが施錠して帰るので何とか認めて下さいとお願いした。
 だが、やはり答えは「ノー」であった。それに加えて「18日は日曜日だ。日曜日はお客さんが多くて店の方が忙しくて、それでなくても人手が足りないのに、あなた方のために錠を開けたり、施錠したり、また、あなた方の管理・監督のために行っていられないのだ。」とも言った。また、「あなた方に入山を認めると、それを見た他の人がどんどん入ってくる。収拾がつかなくなる。だから駄目なんだ。」とも言うのである。(明日に続く)