岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

登山客の一極集中で登山道は変化している

2007-09-03 06:56:12 | Weblog
        ☆登山客の一極集中で登山道は変化している☆           

 よく、「登山道が荒れている」ということを聞く。これには二面性がある。一つは「殆ど利用者がいないことから草木の繁茂や無整備のために道が欠損していることによる廃道化」である。もう一つは「自然の保全力を越えた極端に多い登山客の利用によって草木の枯死や道の破壊による悪道化」だろう。
 岩木山の場合、前者は「追子森登山道」だろうし、後者はリフト終点から山頂までの道であるが、特に、鳳鳴小屋から山頂までの道が顕著である。
 40年以上岩木山に登っている者として、鳳鳴小屋の前に立って頂上方向の登山道を眺めるとその変化がよく解る。
 以前は西から東にかけて、登山道を含めた地形が丸みを帯びていた。そして登山道の中央部分がこころもち高くなっていたし、しかももっと狭い道だった。ところが、今は先ずその横広がりの拡大に驚いてしまうし、また中央が窪んできてもいる。山の地形で例えるならば、小さいV字谷を形成しているように見える。
 物体が転げ落ちるという物理的原理は明白である。たとえ、いくら緩やかでもV字的地形の両側上方から物を転がすとそれはV字の底部に落ちてくるし、底部に沿って下降していく。
 転がった石は動かない岩にぶつかり、跳ね返され薮へ紛れ込んで停止する場合もある。若し、動く岩にぶつかったとしたら、その岩も転がりだして更に、他の落石を誘発していくのである。

 まさにそのような時に、下方には、落石に全く対応出来ない人たちがいたのである。 私は大声で言った…。
 「登っている人は一歩一歩、ゆっくりと、前をよく見て下さい。降りている人は、前の人と離れないで、前の人が足を置いたところに足を置いて、そこに真直ぐに立つ気持ちでゆっくり縦一列です。怖がって腰を引いたり、尻を着いたりしないで下さい。」    

 そして、小屋の前で、降りてくる二つのグル-プを待った。安全の確認ともう少し言いたいことがあったからだ。落石を起こした三十代の女性には、富士山での落石事故を例にして次のようなことを話しをした。

 1980年(昭和55年)8月、富士山吉田口の9合目付近(吉田大沢)で落石があり、12人が死亡した事故があった。 落石が発生した時、家族登山をしていたある父親は『落ちてくる石に向かって自分を先頭に、家族を縦一列に並ばせて「右!左!」と指示を出し、落石を避けた』というのだ。とにかく、下にいる人に「落石」という事実を即座に知らせなければいけない。
 その三十代の女性は、「次に足を降ろす所が急で、その上つるつるしていたので、滑るのではないかと怖くなり横に斜め降りをした。その時、狭い階段状の部分に載っていた石を靴の横にあててしまいそれが落ちた。あっと声を出すのが精いっぱいで、どうすればいいのか解らなかった。申し訳ない。」というような意味のことを恐縮しながら答えてくれた。
 一方、下方を降りていた一人は「後ろには目がない。上で石を転ばしたら知らせてくれないと困る。本当のところ石が落ちてくるなどとは全く考えなかった。あなたが大声で叫んでいたが、何事かと思って足を止めてしまった。今度からは横に広がらず、石も転がさず、若し転がしてしまったら、落石と叫ぶ。」と話してくれた。

 ちなみに、富士山の吉田大沢には、その後3箇所に落石を防ぐシェルターが設置され、その他にも落石避けの設備があるそうだ。岩木山にもそのような「落石避難用シェルター」が設置されたら、まったくもって興ざめだろう。ああ、いやだ嫌だ。
 しかし、落石や落石事故は今でも結構あるといわれている。今年も発生している。その原因を、地質構造的な微振動や無感地震だとする人もいるようだが、これらが発生する時には、その前兆として「特殊な雲」(前兆雲)が出るそうだから、そう思う人は、目視による雲の観察や「動物予兆」などにも気を配ったほうがいいかも知れない。
 また、地球温暖化の影響で、富士山では「永久凍土」が縮小しているそうだ。これによって「土砂崩れ」が多発し、一般登山者の入山が禁止されている場所も増えているらしい。