10月10日(火)、夜の部の上演時間。
(公演プログラムより)
「Not Borders,But Flowers
~優しさを求める時代~
植田景子(作・演出)
本日は、TBS赤坂ACTシアター公演『ハンナのお花屋さん』にお越し頂き、有難うございます。今回の作品は、明日海りお率いる花組の魅力と、2017年という今の時代から感じる様々な想いを、それぞれのキャラクターやストーリーラインに散りばめたオリジナルミュージカルです。
昨年のイギリスのEU離脱、アメリカでのトランプ政権誕生、世界のどこでいつテロが起きるかわからないこの時代・・・、シェイクスピアの“ロミオとジュリエット”に込められた、“何故、人は憎しみあうのか?何故、人は争い続けるのか?”というテーマを考えずにはいられません。憎しみから悲劇が生れる。とても悲しい事です。でもこれは、単なるお芝居の中の出来事でも、遠い世界の出来事でもなく、いつどんな時代のどこでも起こりうる普通の現実であり、今、世界が、自国の利益の為に寛容性を失う方向に動こうとしているならば、心が痛いです。
人が生き続ける限り、この世に憎しみや争いが絶えることはない・・・それが、どうしようもない現実であったとしても、この地上から花が消えることはない、そして、花は私たちの心に優しさをもたらしてくれる、このささやかな出来事もまた、人が生き続ける限り変わらない普遍の事実です。少なくとも、私は、そう信じます。取るに足りない小さな花の美しさが、私たちに与えてくれるもの、自然から与えられる豊かさの、なんと大きいこと。日々の生活の中で、目の前の事にあくせくし、自己の利潤や欲求の為に走り続けると、人は、本当に大切なものや心の豊かさを見失いがちになります。そういった世界に幸せはない。人は、誰でも幸せになれるはずなのに・・・。
今回、明日海りおの為のオリジナル作品を創ると決まった時、直感的に、“お花屋さん”の話にしようと思いました。そして、花をテーマに、自分自身が感じること、彼女の心の持つ温かさや優しさからのインスピレーションで、ドラマがどんどん膨らんでいきました。そして今、稽古場で、一緒に芝居を創り上げながら、改めて、花組トップスターとして成熟期にさしかかった彼女の、舞台人として男役としての実力、何より感性とヒューマニティの豊かさに、感銘を受けています。そして、彼女を支える個性溢れる明るい花組の生徒たち。一人一人が真摯に芝居と向き合い、取り組んでくれています。
また、今回の作品に関わって下さっているクリエイティブスタッフの方々、この作品がミュージカル作曲家としての処女作となる音楽の瓜生明希葉さんはじめ、才能豊かなアーティストたちとオリジナルな世界観を生み出していくのは、とてもエキサイティングな作業です。
人は誰も一人では何も出来なくて、人と人との関わりやつながりの中に幸せはある、そこに少しの優しさがあれば・・・そんな作品のテーマを、日々、自分自身も実感する稽古場です。この素敵な仲間たちに出会えたことに心からの感謝を・・・。」
お花屋さんは閉店してしまいましたが、癒しボイスの明日海りおさんクリスの「幸せになっていいんだよ」「人は幸せになるために生まれてきたはずなんだ」がずっと頭の中でリフレイン。明日海さんクリスなくしてこの作品は生まれなかったと思いますが、舞台セットも音楽も優しくて素敵でした。全てに植田景子景子先生の熱い想いが結実した舞台だったと思います。宙組に組み替えした芹香斗亜さんの花組としての最後の作品がこんな優しい舞台だったのもよかったです。(クコチヒコもかっこよかったですが、タケヒコと対決して倒れて終わりではさみしかった・・・)。
自分のせいで弟はなくなったと自分を責め続けるミア(仙名彩世さん)、自分の判断がハンナを失うことになったという重すぎる荷物を背負い続けたアベル(芹香斗亜さん)、父アベルとの確執、アベルが亡くなったことをきっかけに少年時代の自分と出会い直し自分が進むべき道をみつけていくクリス、それぞれに自分の姿が重なりました。青年クリスが若き日の父アベルと舞台の上で、ハンナと少年クリスを見つめながら言葉を交わしそうになりながら言葉を交わすことはなく、でも青年クリスには父アベルの心の声がきこえていたに違いない、そんなことを思わせる場面を思い出すとなみだがにじみます。ミアとアベルが自分を責める姿は苦しかった、過去の自分と重なって苦しかった。クリスの「幸せになっていいんだよ」に救われています。過去を変えることはできないけれど、クリスはきっとハンナと少年アベルを愛しく想いながらも育ててくれた父の想いを引き継いでいくという役割を果たそうと必死に生きたアベルを想いを受け継ぎながら精一杯これからも生きていくだろうと思います。ミアも必死に生きていくだろうと思います。クリスとミアの恋愛物語が軸というよりも、喪失と再生の物語のようにわたしには思えました。
クリスの大学時代の同級生でお花屋さんのマネジメント担当ジェフ(瀬戸かずやさん)は金融機関に勤めていたという設定。「あの頃は目の前の数字に追われて自分がみえなくなっていた」という意味の台詞がありました。そのとおりだなあと思う方たくさんいらっしゃると思いますが、大会社の数字数字数字のリスクを背負い続け最後は使い捨てのボロボロとなり、もう二度と会社で働くことはできなくなったわたしにはとりわけ沁みました。そのとおりだあ~、数字じゃない世界に運とタイミングで出会えてよかったなあ~、と心の中でひとり叫んでいました。瀬戸かずやさんのスーツの着こなしが素敵すぎました。ジェフのパートナー、サラ(乙羽映美さん)も、ノースリーブのパンツスーツ姿かっこよくて素敵でした。よ頭がよくってしっかりしていて姉さん女房的な雰囲気。毎回二人の熱々ぶりがわかる場面はアドリブで楽しませてくれました。
お花屋さんで働く人々もそれぞれヨーロッパ各地の出身地が設定されていて個性的な人ばかりで、どのキャラも役者さんのナチュラルな持ち味にすごくあっている感じがしました。コスチュームプレイじゃないと役者さんたちの素がよく伝わってきます。台湾出身のチェン・リンとWEB・カフェ担当のトーマスのカップル。チェン・リンの黒髪にお団子を作ったヘアスタイルが可愛くって毎回アクセサリーが変わっていたみたいだし、なりきりぶりが素敵でした。トーマスは、物語の始まりでお花屋さんのメンバーを紹介していき、最後に自己紹介して「僕に会いたかったらカフェもやっているからたずねてきてな」って言うんですが、声がよく通っていて素敵でした。ベテランフローリストのライアンは強く個性は出ていなかったけれど、それがかえって存在感を持たせている感じがしました。アナベルとカップルになっていくのかな、なっていってほしい。薔薇の花をくわえて登場してくるヤニスはチャラいですが、明るい雰囲気をつくる優しいキャラクター。ちょっと色気もあってかっこよく、これから伸びていく役者さんなんだろうなと思いました。アナベルに仕事のミスを厳しく指摘されたナディアが自分自身を見つめ直して、お花屋さんで働くことに真剣になり夜学校へ通い始めたというくだりがきちんと描かれているのもよかったです。デリバリー担当はジェフ、かわいいマッチョでした。お花屋さんで、クリス、ジェフをはじめとする面々が歌い踊り、足上げダンスをする場面があったのは希少。大劇場で上級生になった方々が、ましてトップスターがラインダンスをすることなんてないので目福で楽しかったなあ。舞台上のみなさんがほんとに楽しそうなのが伝わってきて幸せな場面でした。
きりがありません。花組は次の『ポーの一族』へと動きはじめましたが、わたしの頭の中はまだまだお花屋さん。でも1月3日大劇場遠征の帰りの飛行機のチケットも確保したし、あと一週間で仕事スタートだし、マイルで充足できるチケットは早々に売り切れたのでちょっとお金かかりますが生きている間の楽しみ。働かねばね。宙組東京宝塚劇場の千穐楽ライブビューイングのチケット、当選したので働き始めてからの心のエネルギーチャージもまずは確保できました。あとは12月の蘭ちゃん出演の『pukulu』と星組のライブビューイングで今年は終わりの予定。早いですね。
あと一週間、断捨離はまだまだ終わりませんが与えられた役割へと踏み出していかなければなりません。外に出ると部屋に帰りたくないので夜型生活になっているこの頃。一時間早く就寝して二時間早く起床しなければなりません。修正できる範囲かな、大丈夫、大丈夫。二年前のすり減った自分からは想像できなかったところに気がついたら辿りついていました。「幸せになっていいんだよ」、わたし。
今日もオタクにしかわからない話を長々と失礼しました。
稽古場写真はツィッターからの拾い画です。
明日海さんクリスの写真は、宝塚ジャーナルより転用しています。
(公演プログラムより)
「Not Borders,But Flowers
~優しさを求める時代~
植田景子(作・演出)
本日は、TBS赤坂ACTシアター公演『ハンナのお花屋さん』にお越し頂き、有難うございます。今回の作品は、明日海りお率いる花組の魅力と、2017年という今の時代から感じる様々な想いを、それぞれのキャラクターやストーリーラインに散りばめたオリジナルミュージカルです。
昨年のイギリスのEU離脱、アメリカでのトランプ政権誕生、世界のどこでいつテロが起きるかわからないこの時代・・・、シェイクスピアの“ロミオとジュリエット”に込められた、“何故、人は憎しみあうのか?何故、人は争い続けるのか?”というテーマを考えずにはいられません。憎しみから悲劇が生れる。とても悲しい事です。でもこれは、単なるお芝居の中の出来事でも、遠い世界の出来事でもなく、いつどんな時代のどこでも起こりうる普通の現実であり、今、世界が、自国の利益の為に寛容性を失う方向に動こうとしているならば、心が痛いです。
人が生き続ける限り、この世に憎しみや争いが絶えることはない・・・それが、どうしようもない現実であったとしても、この地上から花が消えることはない、そして、花は私たちの心に優しさをもたらしてくれる、このささやかな出来事もまた、人が生き続ける限り変わらない普遍の事実です。少なくとも、私は、そう信じます。取るに足りない小さな花の美しさが、私たちに与えてくれるもの、自然から与えられる豊かさの、なんと大きいこと。日々の生活の中で、目の前の事にあくせくし、自己の利潤や欲求の為に走り続けると、人は、本当に大切なものや心の豊かさを見失いがちになります。そういった世界に幸せはない。人は、誰でも幸せになれるはずなのに・・・。
今回、明日海りおの為のオリジナル作品を創ると決まった時、直感的に、“お花屋さん”の話にしようと思いました。そして、花をテーマに、自分自身が感じること、彼女の心の持つ温かさや優しさからのインスピレーションで、ドラマがどんどん膨らんでいきました。そして今、稽古場で、一緒に芝居を創り上げながら、改めて、花組トップスターとして成熟期にさしかかった彼女の、舞台人として男役としての実力、何より感性とヒューマニティの豊かさに、感銘を受けています。そして、彼女を支える個性溢れる明るい花組の生徒たち。一人一人が真摯に芝居と向き合い、取り組んでくれています。
また、今回の作品に関わって下さっているクリエイティブスタッフの方々、この作品がミュージカル作曲家としての処女作となる音楽の瓜生明希葉さんはじめ、才能豊かなアーティストたちとオリジナルな世界観を生み出していくのは、とてもエキサイティングな作業です。
人は誰も一人では何も出来なくて、人と人との関わりやつながりの中に幸せはある、そこに少しの優しさがあれば・・・そんな作品のテーマを、日々、自分自身も実感する稽古場です。この素敵な仲間たちに出会えたことに心からの感謝を・・・。」
お花屋さんは閉店してしまいましたが、癒しボイスの明日海りおさんクリスの「幸せになっていいんだよ」「人は幸せになるために生まれてきたはずなんだ」がずっと頭の中でリフレイン。明日海さんクリスなくしてこの作品は生まれなかったと思いますが、舞台セットも音楽も優しくて素敵でした。全てに植田景子景子先生の熱い想いが結実した舞台だったと思います。宙組に組み替えした芹香斗亜さんの花組としての最後の作品がこんな優しい舞台だったのもよかったです。(クコチヒコもかっこよかったですが、タケヒコと対決して倒れて終わりではさみしかった・・・)。
自分のせいで弟はなくなったと自分を責め続けるミア(仙名彩世さん)、自分の判断がハンナを失うことになったという重すぎる荷物を背負い続けたアベル(芹香斗亜さん)、父アベルとの確執、アベルが亡くなったことをきっかけに少年時代の自分と出会い直し自分が進むべき道をみつけていくクリス、それぞれに自分の姿が重なりました。青年クリスが若き日の父アベルと舞台の上で、ハンナと少年クリスを見つめながら言葉を交わしそうになりながら言葉を交わすことはなく、でも青年クリスには父アベルの心の声がきこえていたに違いない、そんなことを思わせる場面を思い出すとなみだがにじみます。ミアとアベルが自分を責める姿は苦しかった、過去の自分と重なって苦しかった。クリスの「幸せになっていいんだよ」に救われています。過去を変えることはできないけれど、クリスはきっとハンナと少年アベルを愛しく想いながらも育ててくれた父の想いを引き継いでいくという役割を果たそうと必死に生きたアベルを想いを受け継ぎながら精一杯これからも生きていくだろうと思います。ミアも必死に生きていくだろうと思います。クリスとミアの恋愛物語が軸というよりも、喪失と再生の物語のようにわたしには思えました。
クリスの大学時代の同級生でお花屋さんのマネジメント担当ジェフ(瀬戸かずやさん)は金融機関に勤めていたという設定。「あの頃は目の前の数字に追われて自分がみえなくなっていた」という意味の台詞がありました。そのとおりだなあと思う方たくさんいらっしゃると思いますが、大会社の数字数字数字のリスクを背負い続け最後は使い捨てのボロボロとなり、もう二度と会社で働くことはできなくなったわたしにはとりわけ沁みました。そのとおりだあ~、数字じゃない世界に運とタイミングで出会えてよかったなあ~、と心の中でひとり叫んでいました。瀬戸かずやさんのスーツの着こなしが素敵すぎました。ジェフのパートナー、サラ(乙羽映美さん)も、ノースリーブのパンツスーツ姿かっこよくて素敵でした。よ頭がよくってしっかりしていて姉さん女房的な雰囲気。毎回二人の熱々ぶりがわかる場面はアドリブで楽しませてくれました。
お花屋さんで働く人々もそれぞれヨーロッパ各地の出身地が設定されていて個性的な人ばかりで、どのキャラも役者さんのナチュラルな持ち味にすごくあっている感じがしました。コスチュームプレイじゃないと役者さんたちの素がよく伝わってきます。台湾出身のチェン・リンとWEB・カフェ担当のトーマスのカップル。チェン・リンの黒髪にお団子を作ったヘアスタイルが可愛くって毎回アクセサリーが変わっていたみたいだし、なりきりぶりが素敵でした。トーマスは、物語の始まりでお花屋さんのメンバーを紹介していき、最後に自己紹介して「僕に会いたかったらカフェもやっているからたずねてきてな」って言うんですが、声がよく通っていて素敵でした。ベテランフローリストのライアンは強く個性は出ていなかったけれど、それがかえって存在感を持たせている感じがしました。アナベルとカップルになっていくのかな、なっていってほしい。薔薇の花をくわえて登場してくるヤニスはチャラいですが、明るい雰囲気をつくる優しいキャラクター。ちょっと色気もあってかっこよく、これから伸びていく役者さんなんだろうなと思いました。アナベルに仕事のミスを厳しく指摘されたナディアが自分自身を見つめ直して、お花屋さんで働くことに真剣になり夜学校へ通い始めたというくだりがきちんと描かれているのもよかったです。デリバリー担当はジェフ、かわいいマッチョでした。お花屋さんで、クリス、ジェフをはじめとする面々が歌い踊り、足上げダンスをする場面があったのは希少。大劇場で上級生になった方々が、ましてトップスターがラインダンスをすることなんてないので目福で楽しかったなあ。舞台上のみなさんがほんとに楽しそうなのが伝わってきて幸せな場面でした。
きりがありません。花組は次の『ポーの一族』へと動きはじめましたが、わたしの頭の中はまだまだお花屋さん。でも1月3日大劇場遠征の帰りの飛行機のチケットも確保したし、あと一週間で仕事スタートだし、マイルで充足できるチケットは早々に売り切れたのでちょっとお金かかりますが生きている間の楽しみ。働かねばね。宙組東京宝塚劇場の千穐楽ライブビューイングのチケット、当選したので働き始めてからの心のエネルギーチャージもまずは確保できました。あとは12月の蘭ちゃん出演の『pukulu』と星組のライブビューイングで今年は終わりの予定。早いですね。
あと一週間、断捨離はまだまだ終わりませんが与えられた役割へと踏み出していかなければなりません。外に出ると部屋に帰りたくないので夜型生活になっているこの頃。一時間早く就寝して二時間早く起床しなければなりません。修正できる範囲かな、大丈夫、大丈夫。二年前のすり減った自分からは想像できなかったところに気がついたら辿りついていました。「幸せになっていいんだよ」、わたし。
今日もオタクにしかわからない話を長々と失礼しました。
稽古場写真はツィッターからの拾い画です。
明日海さんクリスの写真は、宝塚ジャーナルより転用しています。