サントリーで、再度シアトル美コレクションを見る。
やはり、充実のハイレベルコレクション。
日本の美に熱い視線を送った、海外の人々の審美眼に
改めて敬意を持った。
ここは大きなアートトライアングルなのだが、
神谷町からも小振りなトライアングルがある。
泉屋、大倉、智。
小さめではあるけれど、
どこもすてきな雰囲気があって、お気に入りなところだ。
今回は、智、大倉、泉屋と回って、六本木一丁目に出るか
悩んだのだが、自分の気分を大切にして、
智を一番後にした。
これが、大正解だった。
我ながら、動物的な勘にほくそ笑んだ。
智美術館は陶芸の専門美術館で、
現代作家の登龍門的存在。
館長はあの、林屋晴三氏。
やきものについて、学ぶとき、この人がいなければ、
何も始まらない。
東博、大阪の東洋陶磁、楽、五島、畠山、三井記念などに
深く関係していらっしゃる。
その林屋氏が「アート・コレクター」という雑誌で、
東京美術倶楽部で開かれる東美アートフェアに
期待を込めた談話を載せていた。
現代の作家さん達はお茶をやらず、作ることに懸命、
お茶人口も減少していて、茶の湯離れが進んでいる。
伝統的なものを大事にする一方で、自由な心で
自分の美的表現を茶の世界でやれるようにして欲しい。
もっと自由な一碗のお茶を飲みながら
美術を楽しもうという雰囲気のお茶席を作るとおもしろい。
だいたいそんなところ。
現代工芸展で思うことを優しく丸くおっしゃっていた。
お茶人口が減っているのに、需要が伸びることはなく、
それでもお茶器の人気は下がらない。
現代の作品は古陶から学んだものの殻がつい目についたりするし、
はたまた俄然爆発して、茶室とのコラボに疑問を感じたりも。
だから、私のようにお茶をしない人が
お茶のための器を鑑賞するだけになってしまう。
さびしい連鎖だ。
お茶器は茶会でこそ、生きるものだと思うのに。
その穏やかなインタビュー記事を読んで、
ますます林屋氏のファンになった。
その記事から少し前のページで
「林屋晴三の眼」というコラムで
「前田正博 色茶盌」と題して、
智美術館で開催中の前田正博のやきものを紹介していた。
近いうちに大倉めぐりしたいと思っていた矢先。
いたく前田氏のチャレンジをお褒めになっているし、
取り上げた写真の色茶盌の姿がとても現代的で、
スマートで、でも薄っぺらじゃない、
つむぎのいい織物のような、
それも、色を取り除いた、銀色と黒の二色使い。
姿、成りもキューブのようで、温かさも失われていない。
こりゃ、見に行きたい、そう思わせてくれた。
先に泉屋、大倉を見て、それぞれの持ち味に満足して、
智美術館に入った。
今日は、静かだ。
螺旋階段を下りると、遠いところから説明をしている
学芸員さんらしき方の話し声。
ほ~これは、と思い、見学を端折って
奥に進んだ。
はたして、目指した、銀色の黒光りする茶碗の目の前で
説明が進んでいたのだった。
心躍らせ、息を整えながら、聞き耳を立てる。
茶碗に浮かんだ白い格子の線は、
マスキングテープを使っているとか。
それも、なんと細い線で、マスキングテープ自体も相当細い。
気が遠くなる手作業をうっとりするほど細やかに
丁寧に張っていくのだろう。
学芸員さんは、ダウンライトの中、場所を変えたりして
色の変化を見せてくれていたが、
なにげなく、こともなげに
「じゃぁ、お手元でご覧になりますか?」
とおっしゃるではありませんか。
それも、アート・コレクションのあの写真と同じもの。
ゴクリ!
10人ほどの同行者たちの間を縫って、
私の手元に届いた。
手のひらにすっぽりと落ち込む。
丸い角。ざらついた表面。
裏を返せば、高台周りにも銀線が施されている。
見込みは黒く、漆が落ちたような擦れた感じ。
写真よりずっと、黒い。深みのある銀のラインが
光に当たったときだけ、きらめく。
1分ほど私の手のひらのものとなった
その至福は落ち着きを失わせた。
ギャラリートークが終了してから、
学芸員さんにお尋ねした。
あれは、アート・コレクターの林屋先生の記事に紹介された
お茶碗ですか?と。
ご覧になってくださったのですか?
あれは実際、そのものです。
このやり取りがまた嬉しいじゃありませんか。
林屋氏は記事で、前田氏が新しい茶碗を持って、
どうだろうかという質問に
茶碗の造形に重厚味と存在感を持たせるべきだと
助言され、そのとおりにされた、とのこと。
去年還暦を迎えた、前田氏。
どんな方だろう。
展覧の前半からの色絵の変遷は興味深いものだったが、
最後のコーナーで、
いぶし銀の茶碗と変化したそのチャレンジに
絶賛をささげたい。
最高におしゃれで、今の時代にかなった、
現代の茶碗と出会った、そのことに一日中わくわくしていた。
9月23日まで。ギャラリートークはとてもフレンドリー。
ぜひお茶碗の手触りをご自分の手で。
そのとき、してくださるか、不明ですけれど。
楽しい、学芸員さんでした。
この場を借りて感謝申し上げます!
あかくろ・きんぎん・みどりあお。
数え歌のようなタイトルも色絵の変遷があって、楽しいし、
時々いる、動物たちもかわいらしい。
やはり、充実のハイレベルコレクション。
日本の美に熱い視線を送った、海外の人々の審美眼に
改めて敬意を持った。
ここは大きなアートトライアングルなのだが、
神谷町からも小振りなトライアングルがある。
泉屋、大倉、智。
小さめではあるけれど、
どこもすてきな雰囲気があって、お気に入りなところだ。
今回は、智、大倉、泉屋と回って、六本木一丁目に出るか
悩んだのだが、自分の気分を大切にして、
智を一番後にした。
これが、大正解だった。
我ながら、動物的な勘にほくそ笑んだ。
智美術館は陶芸の専門美術館で、
現代作家の登龍門的存在。
館長はあの、林屋晴三氏。
やきものについて、学ぶとき、この人がいなければ、
何も始まらない。
東博、大阪の東洋陶磁、楽、五島、畠山、三井記念などに
深く関係していらっしゃる。
その林屋氏が「アート・コレクター」という雑誌で、
東京美術倶楽部で開かれる東美アートフェアに
期待を込めた談話を載せていた。
現代の作家さん達はお茶をやらず、作ることに懸命、
お茶人口も減少していて、茶の湯離れが進んでいる。
伝統的なものを大事にする一方で、自由な心で
自分の美的表現を茶の世界でやれるようにして欲しい。
もっと自由な一碗のお茶を飲みながら
美術を楽しもうという雰囲気のお茶席を作るとおもしろい。
だいたいそんなところ。
現代工芸展で思うことを優しく丸くおっしゃっていた。
お茶人口が減っているのに、需要が伸びることはなく、
それでもお茶器の人気は下がらない。
現代の作品は古陶から学んだものの殻がつい目についたりするし、
はたまた俄然爆発して、茶室とのコラボに疑問を感じたりも。
だから、私のようにお茶をしない人が
お茶のための器を鑑賞するだけになってしまう。
さびしい連鎖だ。
お茶器は茶会でこそ、生きるものだと思うのに。
その穏やかなインタビュー記事を読んで、
ますます林屋氏のファンになった。
その記事から少し前のページで
「林屋晴三の眼」というコラムで
「前田正博 色茶盌」と題して、
智美術館で開催中の前田正博のやきものを紹介していた。
近いうちに大倉めぐりしたいと思っていた矢先。
いたく前田氏のチャレンジをお褒めになっているし、
取り上げた写真の色茶盌の姿がとても現代的で、
スマートで、でも薄っぺらじゃない、
つむぎのいい織物のような、
それも、色を取り除いた、銀色と黒の二色使い。
姿、成りもキューブのようで、温かさも失われていない。
こりゃ、見に行きたい、そう思わせてくれた。
先に泉屋、大倉を見て、それぞれの持ち味に満足して、
智美術館に入った。
今日は、静かだ。
螺旋階段を下りると、遠いところから説明をしている
学芸員さんらしき方の話し声。
ほ~これは、と思い、見学を端折って
奥に進んだ。
はたして、目指した、銀色の黒光りする茶碗の目の前で
説明が進んでいたのだった。
心躍らせ、息を整えながら、聞き耳を立てる。
茶碗に浮かんだ白い格子の線は、
マスキングテープを使っているとか。
それも、なんと細い線で、マスキングテープ自体も相当細い。
気が遠くなる手作業をうっとりするほど細やかに
丁寧に張っていくのだろう。
学芸員さんは、ダウンライトの中、場所を変えたりして
色の変化を見せてくれていたが、
なにげなく、こともなげに
「じゃぁ、お手元でご覧になりますか?」
とおっしゃるではありませんか。
それも、アート・コレクションのあの写真と同じもの。
ゴクリ!
10人ほどの同行者たちの間を縫って、
私の手元に届いた。
手のひらにすっぽりと落ち込む。
丸い角。ざらついた表面。
裏を返せば、高台周りにも銀線が施されている。
見込みは黒く、漆が落ちたような擦れた感じ。
写真よりずっと、黒い。深みのある銀のラインが
光に当たったときだけ、きらめく。
1分ほど私の手のひらのものとなった
その至福は落ち着きを失わせた。
ギャラリートークが終了してから、
学芸員さんにお尋ねした。
あれは、アート・コレクターの林屋先生の記事に紹介された
お茶碗ですか?と。
ご覧になってくださったのですか?
あれは実際、そのものです。
このやり取りがまた嬉しいじゃありませんか。
林屋氏は記事で、前田氏が新しい茶碗を持って、
どうだろうかという質問に
茶碗の造形に重厚味と存在感を持たせるべきだと
助言され、そのとおりにされた、とのこと。
去年還暦を迎えた、前田氏。
どんな方だろう。
展覧の前半からの色絵の変遷は興味深いものだったが、
最後のコーナーで、
いぶし銀の茶碗と変化したそのチャレンジに
絶賛をささげたい。
最高におしゃれで、今の時代にかなった、
現代の茶碗と出会った、そのことに一日中わくわくしていた。
9月23日まで。ギャラリートークはとてもフレンドリー。
ぜひお茶碗の手触りをご自分の手で。
そのとき、してくださるか、不明ですけれど。
楽しい、学芸員さんでした。
この場を借りて感謝申し上げます!
あかくろ・きんぎん・みどりあお。
数え歌のようなタイトルも色絵の変遷があって、楽しいし、
時々いる、動物たちもかわいらしい。
林屋氏は、古美術はもちろんですが、新しいものにも眼を向けられていて安心、信頼しています。場内の雰囲気も独特です。ぜひ!
白々とした照明で見るより、ずっと美しいです。
そうそう、魯山人、見に行きたいと切望しているところです。
学芸員さんからのお話でなければ、マスキングテープとは気がつきませんでした。
何層にも焼き上がりの偶然など楽しまれる前田さん、の様でした。
ザラザラで、でもゴツゴツしていない、不思議な暖かさもありました。
ぐるっとパスで入れるのも魅力の一つ!
時間あるかなあ、トリノエジプトにも行かなきゃならないし、八王子夢美術館で始まる魯山人で我慢しようか思案中。しかし次から次へといろんな展覧会が出てくるものですね。
今日は東京新聞で当たったリヴィエールをみに神奈川県立近代美術館葉山に行って疲れきりました。
マスキングテープで作られたものだったのですね。
実際に触られて、きっとザラザラとしていたでしょうね。
私もあの展示品の数々を触る誘惑を抑えるのに必死でした。
良い体験でしたね。
本当にきゃ~な体験させて頂きました。
学芸員さんからは、
こんなニュースも。
日本工芸会総裁賞受賞!「色絵銀彩角鉢」
これは驚きですね。
三越で25日からでしたか、日本工芸展に出品されるようです。
使う目的と、使う人の思いと、それを一番美しくする作家のコラボレーションが最高にそのものを輝かせてくれますね!!
本当に織物のような、素敵な質感の焼き物でした。
手に取られたとは、真剣にうらやましいです~。
超ラッキーでした。
こんな事があるなんて、です!!
Takさんの日頃の行いは違うところに
現れているのですよ~
館内が静かだったのは、
Takさんのブログ記事のお陰じゃないかと。
密かに感謝してます。
う、羨まし過ぎます。。。
その展開。。
私の時とは大違い。
これも普段の行いのせいですね。