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内田百閒 『御馳走帖』

2021年01月14日 | 読んだもの

内田百閒の『御馳走帖』を読む。

 蕎麦屋は近所の中村屋で、別にうまいも、まづいもない、ただ普通の盛りである。続けて食ってゐる内に、段段味がきまり、盛りを盛る釜前の手もきまってゐる為に、箸に縺れる事もなく、日がたつに従って、益うまくなる様であった。うまいから、うまいのではなく、うまい、まづいは別として、うまいのである。

 たかが盛りの一杯や二杯の為に、何もそんな事をしなくても、ここいらには、名代の砂場があるとか、つい向うの通に麻布の更科の支店があるではないかなどど云われても、そんなうまい蕎麦は、ふだんの盛りと味の違ふ点で、まづい。八銭の蕎麦の為に五十銭の車代を払って、あわてて帰る事を私は悔いない。

おいしい をしみじみと考える。
文章が私を思わぬところへ連れていってくれるときに、私はまだ大丈夫だと思う。
本を読むという功徳が、私に近しくあることが私を安堵させるからだ。

うまい、まづいは別として、うまいのである。

百閒先生には、まだまだ遙か遠いけれど。

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