フクロウは夕暮れに

接触場面研究の個人備忘録です

昔の留学、最近の留学

2008-03-22 23:08:42 | old stories
3月に湖南大の先生をお招きして開いていた会議で少し留学ということについて考える機会がありました。現在の短期留学と私のときの交換留学とは、ともに留学が体験型であるという意味で、学位を取ろうとする留学とは区別されて、価値付与型留学と名付けられるものです。異文化の環境との接触、その土地の人とのパーソナルな接触が中心であって、学位を取ろうとして制度の中に入っていく社会との接触はあまりないのが特徴だろうと思います。

私自身は英語がうまくなったわけでも新たな知見を身につけてきたわけでもなかったし、さらにはカルチャーショックなども受けなかったんですね。しかし、1年アメリカにいて、何か自分の芯のようなものが出来た気はしたのです。それは小さくて微かな感覚だったけど、その後少しずつ確かなものになっていったのですね。つまり、たいした異文化体験をしたわけでもないのですが、それでも日本にいるときとは質の異なる接触があって、最近の流行の言葉なら「自分探し」とでも言えそうな変化があったのだと思います(正確に言うと、自分探しばかりやっていた時期から、自分探しをやらないことにした時期への変化で、逆の事態が起こっていたのですけど)。

そこで、最近の留学ですけど、きっと同じような過程を経験している人もいるだろうなとは思っています。ただ、インターネットの普及などにともなう国境の敷居の低さや、海外旅行が当たり前になっている時勢、そして留学そのものが大学産業の重要な商品となっている現在の状況では、おそらく留学しようとする人の気持ちにも、また留学生活にも、何らかの影響があるのだろうとも思うわけです。

それがどんな影響かはわからないのですが、短期留学が国際交流・異文化接触を促進する目的で実施されているにもかかわらず、短期留学生にどうやって異文化接触を経験させてあげればよいかを議論しなければならないとしたら、一概に良い影響だけとは言えない、とも思ってしまいます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする