フクロウは夕暮れに

接触場面研究の個人備忘録です

若い世代は会話をどのように構築していくか

2007-09-21 16:02:31 | Weblog
昨日は、私の所属する学部で年1回行われている公開講座で話をしました。今回の講座は3回連続で「日本語の揺れを考えるー若い世代の日本語はどこから来てどこへ行くのか」というテーマで行われていますが、私のお題は「若い世代は会話をどのように構築していくか」というものでした。夜7時から2時間でしたが、26名の熱心な聴講生の方々と楽しい議論のひとときを過ごしました。

4つの学生たちの会話をもとにして、共話的あいづち、会話協力の原則、ポライトネス、という3つの視点から会話データを見てみました。共話的あいづちは圧倒的で、中には共話的に話そうとしすぎたためと思われる「格助詞からの発話開始(e.g.「の、先生の研究室」)」など少々無理な構文が現れていることも指摘しました。

それから「私は...」と自分の話題を交代で話す、いわゆるspeaker's topicも見られました。話し手が自分の話題を話している間、聞き手は上手に共話をしていきます。それが終わると、今度は聞き手が自分の話題を話すわけです。

また、共感や関心を示すポジティブポライトネスのストラテジーが至るところで現れていました。ところが、自分の家族の内情を話した会話では、自分の領域に相手を入れるところで何度もその話をしても良いかを確認するとか、話が終わるところでは聞き手側がわざと共感を示さないようにして話し手の領域に入らなかったかのように見せるなどの興味深いネガティブポライトネスのストラテジーも見られたのです。

たった4つの会話なので結論めいたことは言えないのですが、表層で共話的、共感的な話し手の話題による会話が繰り広げられることと、相手との距離を重視してなかなか自分の領域に入れないし、入ろうとしないこととは、じつは同じことの裏表なのかもしれない、そんな話をさせてもらいました。
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