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礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

本邦に独特なツツガムシの研究

2025-04-28 00:36:00 | コラムと名言
◎本邦に独特なツツガムシの研究

 吉田貞雄『大東亜熱帯圏の寄生虫病』(1944)から、第五章第六節「本邦に於ける寄生虫病学の進歩」を紹介している。本日は、その二回目

   第三期―病原原虫学と医用昆虫学
 本期は明治の末葉から大正を経て昭和の今日に至る約三十有余年間で、本期間に於ては前期の寂莫〈セキバク〉に引きかへ、著しき躍進を見、その研究の如き質に於て優に世界に誇るべき業績が続出したのである。
 本期に於ては世界のそれと同じく第一に注目すべきは寄生虫学の範囲が拡張した事で、従来主とし蠕虫〈ゼンチュウ〉に限られてゐたのが、茲に新しく病原原虫の研究が勃興し、更に之に付随して医用昆虫学の研究が行はるゝやうになつた。病原原虫を最も初めに研究した主な人として動物学方面では,先づ飯島〔魁〕氏門下の宮島幹之助を推さねばならぬ。その後小泉丹〈マコト〉出でて最も多くの有力な業績を挙げた。この意味に於て両氏は日本に於ける病原原虫学の創設者と見るべきであらう。之と同じく医学方面では宮入慶之助〈ミヤイリ・ケイノスケ〉を先達に小川政修〈マサナガ〉がある。更にその後の研究者として稗田憲太郎、田邊操、森下薫〈カオル〉、大井司等はそれぞれ、満洲、朝鮮、台湾で有力な研究を続けてゐる。
 医用昆虫学は本邦ではあまり発達してゐないが、先づ宮島幹之肋、小泉丹、森下薫及び山田信一郎等のマラリアに関係ある蚊の研究は最も有益なもので、望月代次のフィラリアと蚊の関係の如き、又最近矮小絛虫及び縮小絛虫の中間宿主〈シュクシュ〉が諸種の昆虫であることが知られて来た。之等研究中最も著名なものは小林晴治郎〈ハルジロウ〉の蝿の研究であらう。又小泉浩吉氏の蝿の研究、小野定雄の牛蝿〈ウシバエ〉の研究、戸田亨の床虱〈トコジラミ〉研究の如き注目すべき業績である。
 本邦に独特で最も有名なものは恙虫〈ツツガムシ〉の研究で、長与又郎〈ナガヨ・マタオ〉、林直助〈ナオスケ〉、緒方規雄〈ノリオ〉及び川村麟也〈リンヤ〉の各教室の研究になる恙虫病々原体の発見研究は、最近に於ける最も偉大なる業績の一に数へられてゐる。田中敬助、長与又郎、宮島幹之助、川村麟也の諸氏並びにその教室の研究によつて本虫の生活史が明かにせられたことは、本邦学者の一つの誇りであらう。
 更に最近「イへダニ」や家畜・家禽〈カキン〉の「ダニ」類研究も相当盛で、第三期以前には見られなかつた現象である。〈280~282ページ〉【以下、次回】

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