◎島村虎猪、藤井一両氏によるアスカロンの発見
吉田貞雄『大東亜熱帯圏の寄生虫病』(1944)から、第五章第六節「本邦に於ける寄生虫病学の進歩」を紹介している。本日は、その五回目。
四 第三期―その他の方面の研究
発育感染径路の研究に続き学者の注意を引いたのは感染予防である。之がためには寄生虫体又は卵子の如き感染元となるものゝ抵抗力研究、撲滅法の考案、中間宿主の撲滅等疫学的衛生的事項の研究、屎尿の処置、便所の改良等研究は広汎の範囲に及ぶに至つた。更に駆虫法として駆虫剤の研究、製剤等が盛に行はれた。
一方病理学的研究の進むにつれ諸種の寄生虫病に現るゝ症状から毒素説が起り、毒素の研究が盛に行はるゝに至つた。島村虎猪〈トライ〉、藤井一両氏のアスカロン〔Askaron〕発見の如きその著名なものである。この外虫体液の毒素研究を試むるものが少くない。就中最も秩序的に之が研究を進めてゐるのは慶應大学の小泉〔丹〕教室である。
毒素研究に関連してゐるものは血清学的研究で、或は補体結合作用と云ひ或は沈降反応と云ひ、或は凝集反応と云ひ、各種の研究が行はるゝと共に、寄生虫の免疫問題迄攻究されてゐるが、寄生蠕虫〈ゼンチュウ〉に対する血清学並びに免疫学的研究は世界のそれと同じく、日本に於ても極めて幼稚なものであると言はねばならぬ。
最後に、以上述べた寄生虫病学的方面の外一般寄生虫の研究として忘れてならぬことは、山口左仲〈サチュウ〉、福井玉夫、尾形藤治〈トウジ〉の如き分類学的研究に於て学界に貢献してゐる重要なものあることである。〈287~288ページ〉【以下、次回】
吉田貞雄『大東亜熱帯圏の寄生虫病』(1944)から、第五章第六節「本邦に於ける寄生虫病学の進歩」を紹介している。本日は、その五回目。
四 第三期―その他の方面の研究
発育感染径路の研究に続き学者の注意を引いたのは感染予防である。之がためには寄生虫体又は卵子の如き感染元となるものゝ抵抗力研究、撲滅法の考案、中間宿主の撲滅等疫学的衛生的事項の研究、屎尿の処置、便所の改良等研究は広汎の範囲に及ぶに至つた。更に駆虫法として駆虫剤の研究、製剤等が盛に行はれた。
一方病理学的研究の進むにつれ諸種の寄生虫病に現るゝ症状から毒素説が起り、毒素の研究が盛に行はるゝに至つた。島村虎猪〈トライ〉、藤井一両氏のアスカロン〔Askaron〕発見の如きその著名なものである。この外虫体液の毒素研究を試むるものが少くない。就中最も秩序的に之が研究を進めてゐるのは慶應大学の小泉〔丹〕教室である。
毒素研究に関連してゐるものは血清学的研究で、或は補体結合作用と云ひ或は沈降反応と云ひ、或は凝集反応と云ひ、各種の研究が行はるゝと共に、寄生虫の免疫問題迄攻究されてゐるが、寄生蠕虫〈ゼンチュウ〉に対する血清学並びに免疫学的研究は世界のそれと同じく、日本に於ても極めて幼稚なものであると言はねばならぬ。
最後に、以上述べた寄生虫病学的方面の外一般寄生虫の研究として忘れてならぬことは、山口左仲〈サチュウ〉、福井玉夫、尾形藤治〈トウジ〉の如き分類学的研究に於て学界に貢献してゐる重要なものあることである。〈287~288ページ〉【以下、次回】
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