礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

鵜崎巨石氏評『独学の冒険』

2015-12-06 05:19:21 | コラムと名言

◎鵜崎巨石氏評『独学の冒険』

 鵜崎巨石氏が、昨日、そのブログ「鵜崎巨石のブログ」で、拙著を採り上げてくださいました。光栄なことです。例によって、眼光紙背に徹した書評です。ご本人から許可をいただきましたので、以下に転載いたします。

礫川全次著「独学の冒険 浪費する情報から知の発見へ」

今日は、礫川全次著「独学の冒険 浪費する情報から知の発見へ」2015年10月批評社刊。
本書は、同氏のブログ「礫川全次のコラムと名言」を読んでいて、今日紹介書籍に対する識者の批評が転載されているのを発見した。
礫川氏も、自分の本ぐらいブログに宣伝しても罰は当たらなかろう。

早速図書館に借り入れを申し込んだが、すでに予約者があったため、購入に切り替えた。
小遣い一万円の年金老人にも買える金額ではあるが、しみったれ爺さんの久々の新本購入となる。

さて、本書は標題のとおり、「独学のすすめ」である。
しかし世の人おしなべてに「独学」を奨めるものではない。また、ここでいう「独学」には、ある種の「検定合格」を含めない。

自らの知的「体系」を打ち立て、勇気を持ってそれを世に問う覚悟を持つことである。

このためには、
人生のいつでも良い、ある時大きな関心を持ったり、疑問を感じたある課題について、何でも良いから、まずはそれを特定し、
この解決を図り、ないしは自ら納得すべく、目標を立てること。
そのために読書や社会的活動を含めて知的な訓練、蓄積を重ね、
これを文章にする訓練を自らに課すこと。
その間何らかの形で、この文章を公表しつつ進めることが重要である。
そのうちに自分の解きつつある課題が、真に「独創的」なものであるか如何が了解されるであろう。
その上では、「自費出版」に止まらず、さらに広い「公表」を試みることをためらうべきではない。
このためにアカデミズムや学問的権威を活用することは良いが、利用されてはならぬ。
「独学者よ大志を抱け」とある。

以上の思想の許に、本書では、まずこうした志を持つに至った者を対象に幾つかの擬問擬答を試み、そのうえで、何人かの「独学者精神」が明かな知的先達を紹介して読者の参考に供する。

それは、5章にわたって述べられる、柳田國男、家永三郎、千葉徳爾、佐藤忠男、並びに第5章で「八人の独学者に学ぶ」として紹介される、清水文弥・南方熊楠・中山太郎・佐々木喜善・橋本義夫・谷川健一・吉本隆明・杉本つとむである。
このほか各章には、コラムを設けて関連事項・人物についての記載がある。

わたしはここ一年半ほど、本著著者のブログに目を通しており、著作もかなりは読んでいるので、本著における論理展開には馴染みがあるし、記述の個々に思い当たるところが多い。
しかし、本書に述べられる、著者自らの「独学者」としてのきっかけは、興味深かった。

本書の「前書き」では、「若い人」を想定して本書を著したとしている。
しかし、読み進めるに従い、中高年を意識していると考える記述が多いことに気がつく。
考えるに、本書は、著者礫川氏自身が「独学」を思い立ち、貫いた、自己点検作業の確認書である。
かつは、「どうしても書かねばならぬ」という気迫を自らに示すためのものでもある。

礫川氏は、わたしと同年である。
これから当然に転げ落ちるしかない「老いの坂」を、なんとか踏み堪えて生きていこうとされているのだろう。

わたしも、ブログを開始して一年半余。散漫なテーマを採り上げ、十分な推敲もなく書き散らしてきた。読み返してはとんちんかんな間違えに気づいて修正する。その繰り返しである。
読者の便宜と言うことを考えずに、自分だけに通ずる論理と語彙を以てである。
さらにはブログをつうじて礫川氏に勝手な注文をつけ、「おまえが書いて世に問うべき」と叱られてきた。

かつてわたしは、五十嵐清さんという法学者が、85歳の時に著書「比較法ハンドブック」を出した際に、「学者としての能力の衰えないうちに、なんとかもう1冊書きたい」としたのを読んで、「あやかりたし」と賛嘆したことがある。

こう言うと、本書「独学の冒険」で警告されていることそのものであるが、現在わたしはまだ「教養課程」にあると思っている。まだまだ先は長い(だろう)。
いずれ学部に入ってから卒論として書くことを考えよう。

*このブログの人気記事 2015・12・6(9位に珍しいものが入っています)

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