◎ローレライの歌とナチズム
本日は、新東宝映画『大東亜戦争と国際裁判』(一九五九)について、雑感でも述べようと思っていましたが、一昨日のコラム「ハイネ作詞『ローレライ』と清水幾太郎」に関わって、本日未明、畏敬する青木茂雄さんからメールをいただきましたので、そのメールの一部を転載させていただきます。
青木さんからは、右コラムにあったドイツ文の部分について、その日本語訳もご教示いただくことができました。その訳は、早速、右コラムの当該部分に補綴させていただきました。以下は、青木さんからメールです。
この詩が、ハイネのどの本にででいるのかしらべてみました。
『歌の本・下』(岩波文庫、井上正蔵訳)の「帰郷」の2番目の「かなしみに」がそれでした。
訳者の注には次のようにあります。
「有名なローレライの歌。ライは岩を意味しローレまたはルーレは妖魔を意味する。ライン川のこの美しい魔女の伝説は、前期浪漫詩人クレーメンス・ブレンターノの着想による譚詩を通じて知られ、ライン物語として発展したが、これに影響されて同じく浪漫派の詩人ヨゼフ・フォン・アイヒェンドルフの抒情詩『ローレライ』ともなった。ハイネは、同詩人の詩篇を知っていたが、ハイネの作品は、むしろ今日ではほとんど知られていないアイヒェンドルフの友オットー・ハインリヒ・レーベン伯の『ルールライの歌』から直接刺激されて作られたと推定されている。(略)ことに、何よりもハイネの一字一句は流麗で、まさしく佳調そのものであって、芸術歌謡として従来のいずれの作をも凌駕し、ジルヒェルの印象的な作曲とともに最も人口に膾炙していることはいうまでもない。」
レコードの解説文によると「ドイツ民謡」として紹介されている例が多いようですが、作曲者も特定されているようです。しかし「ドイツ民謡」としてもまったく違和感がありません。
まさに、ドイツの心の歌となっていますが、これを禁止してしまうとは、ナチズムがいかにドイツの伝統や文化に無理解であったかを示しています。
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