礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

伊藤博文暗殺事件と安倍元首相銃撃事件の共通点

2023-02-11 05:35:35 | コラムと名言

◎伊藤博文暗殺事件と安倍元首相銃撃事件の共通点

 昨年七月一〇日、当ブログに「伊藤博文暗殺事件と安倍元首相銃撃事件」という記事を載せた。その中で私は、次のように書いた。

 以前、伊藤博文暗殺事件について調べたことがあるが、この事件は、今回の安倍元首相銃撃事件と、共通する点が多い。
 1 両者とも、至近距離から銃撃され、その日のうちに亡くなっている。
 2 両者とも、首相を辞したあとも、政界に対して大きな影響力を保持していた。
 3 伊藤博文は、長州出身の政治家であった。一方、安倍元首相は、山口県出身の岸信介元首相の孫にあたり、山口県を選挙区としていた。
 4 伊藤博文を銃撃した安重根は、独立運動の「義兵」と自称していた。安倍元首相を撃った容疑者は、「元海上自衛官」である。
 5 伊藤博文は、外交面では親ロシア派で、ロシアの要人に人脈があった。ロシアのココツェフ蔵相と会談をおこなうためにハルビン駅を訪れ、その会談の直前に銃撃されている。一方、安倍元首相は、現職時代、ロシアとの外交を重視し、プーチン大統領と会談を重ねた。
 
 同月一七日になって、一〇日の記事を補足する形で、私は次のように書いた。

 この記事を書いた時点では、安倍元首相を銃撃した容疑者の「犯行理由」が、まだ報じられていなかった。その後の報道によれば、容疑者の母親が某宗教団体への信仰にのめりこんだために家庭が崩壊したこと、安倍元首相がその宗教団体を支持していると容疑者が思いこんだことが、犯行の理由だったらしい。また、インターネット情報によると、その宗教団体は、韓国で創始されたものであり、その教義には、「エバ国」たる日本は「アダム国」たる韓国に「貢ぐ」義務がある、というものが含まれているという。これは私見だが、その宗教団体が、本当にそうした教義を持っているとすれば、その教義の根底には、日本が過去に朝鮮を支配したことに対する「怨恨」があるのだろう。
 前回、私は、伊藤博文暗殺事件と安倍元首相銃撃事件との共通点を、五点、挙げた。今回、それに次の点を、付け加えたい。

 6 両事件とも、その背景に、近代における日韓関係(日朝関係)がある。

 なお、伊藤博文暗殺事件の公判において、被告側の主任弁護人・水野吉太郎は、被告・安重根の行動を明治維新の志士に擬すという大胆な弁論を展開した。また、安重根による過激な(危険な)発言が飛び出し、即時、傍聴が禁止されるという一幕もあった。
 おそらく、今回の事件の公判においても、その展開に、人々が注目することになろう。

 ――以上が、昨年七月一〇日、および一七日の記事である。
 ところで、『週刊文春』の二月一六日号(二月九日発売)に、゛安倍元首相暗殺「疑惑の銃弾」徹底検証〟という記事が載った。一読したところ、安倍元首相を死にいたらしめた「銃弾」についての警察側の説明には合理的でない点がある、という内容であった。
 かつての伊藤博文暗殺事件の際も、「疑惑の銃弾」説が出たことがある。事件のとき、伊藤博文に同行してしていた室田義文(むろた・よしあや)貴族院議員によれば、安重根による銃撃とは別に、二階の食堂からフランス騎兵銃で撃った者があったという。「第三者狙撃説」である。
 今回の週刊文春記事は、「疑惑の銃弾」について検証しようとしたものであって、「第三者狙撃説」を示唆したものではない。しかし、週刊文春という有力なメディアが「疑惑の銃弾」について報じたことは、それ自体、ひとつの事件である。
 伊藤博文暗殺事件と安倍元首相銃撃事件との共通点を、私は前回までに、六点、挙げている。今回、それに、次の七点目を付け加えなければならない。

 7 両事件とも、事件後に、銃弾に関する「疑惑」が提示された。

*このブログの人気記事 2023・2・11(9位になぜか西部邁氏)

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