礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

こうすれば良かった安倍首相の危機管理

2017-07-29 03:15:17 | コラムと名言

◎こうすれば良かった安倍首相の危機管理

 テレビ・ニュースによれば、稲田朋美防衛大臣は、七月二八日午前、安倍晋三首相に辞表を提出したという。このことを聞いた私は、なぜ、こうなる前に、安倍首相は防衛相を罷免しておかなかったのだろうかと感じた。同時に、安倍首相の危機管理能力に(というより、「危機管理のセンス」に)、あらためて疑問を抱いたのである。
 この間、当ブログでは、三度ばかり(二〇一七年三月四日、三月一五日、六月二五日)、「安倍首相と危機管理」について論じた。本日は、そのまとめを兼ねて、安倍首相のこの間の危機管理は、「こうあるべきだった」ということについて書いてみよう。題して、「こうすれば良かった安倍首相の危機管理」。

1 安倍首相は、森友学園問題が浮上して間もない二〇一七年二月一七日、自分あるいは妻がこの問題に関係しているなら、「首相も議員も辞める」と言明した。これは、言う必要のない言葉であった。あえて、みずからの退路を断つ、危険な発言であった。また、同年三月一日には、「私は公人ですが、妻は私人です」とも述べた。これまた、無意味というか無益な発言であった。危機管理上は、問題が浮上した時点で、「妻のしでかした不始末は、私の責任です」と認め(「板垣英憲情報局」三月三日記事を参照した)、みずからの判断により、昭恵夫人に名誉校長を「辞退させた」旨を言明するのが良かったと思う。 
2 稲田朋美防衛大臣は、三月一三日の参議院予算委員会で、「籠池氏の事件を受任したこともなければ、法律相談を行ったこともありません」と答弁したが、翌一四日の衆議院本会議では、「今朝の報道において一三年前の裁判所の出廷記録が掲載されました。平成一六年一二月九日、夫の代わりに出廷したことが確認できましたので、訂正しお詫びいたします」と前言を撤回し、謝罪した。安倍首相は、この時点で、防衛相を罷免すべきであった。そうしていれば、そのあとに起きた、防衛相がらみの諸問題は回避できたし、自由民主党の支持率が急減することもなかったであろう。
3 森友学園問題の本質は、「日本会議」という政治的・宗教的組織にあった。安倍首相は、森友学園問題が大きく採り上げられるようになってきた段階で、「日本会議」との関係を断つべきであった。少なくとも、「日本会議国会議員懇談会」の特別顧問は、辞退しておくべきであった。
4 加計学園問題に対する政府の対応は、加計学園理事長・総長の加計孝太郎氏の証人喚問要求に応じないなど、森友学園問題の際の対応との違いがありすぎた。安倍首相は、加計学園問題が大きく採り上げられるようになってきた段階で、「不適切な行政指導」が存在したことを認め、認可手続きをいったん白紙に戻すべきであった。また、加計学園問題について、不適切な行政指導に関わった閣僚を更迭するとよかった。 
5 総じて言えば、安倍首相は、本年二月以降に浮上した問題に対して、「危機管理」という発想に立って、真剣に誠実に、かつ謙虚に対応すべきであった。対応の過程で、みずからの危機管理能力に自信を失った場合は、「危機管理専門家」に(周囲の「お友達」に、あるいは「日本会議」系の人に、ではなく)、助言などを求めるべきであった。

今日の名言 2017・7・29

◎炎上しているサイトは早く閉めるしかない

 2017年7月27日夕、稲田朋美防衛相は、官邸に首相を訪ね、辞意を表明したという。これについて、ある政府関係者は、「政権運営の歯車が狂い、負のスパイラルに陥っている。炎上しているサイトは早く閉めるしかない」と述べ、稲田氏の辞任は当然との見方を示したという(朝日新聞デジタル版:2017年7月27日23時32分)。

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