goo blog サービス終了のお知らせ 

礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

「八紘一宇」は世界新秩序を希求するスローガン

2015-07-28 05:30:29 | コラムと名言

◎「八紘一宇」は世界新秩序を希求するスローガン

 必要があって、戦争中の『法律時報』(日本評論社)を、まとめて閲覧していたところ、藤澤親雄〈フジサワ・チカオ〉の「大東亜皇化共栄家族圏国際法の基礎理念」という論文に出会った。一九四二年(昭和一七)一月発行の第一四巻第一号(通巻一四五号)に掲載されていたものである。「大東亜皇化共栄家族圏国際法」という言葉は初めて聞いたが、欧米中心の「国際法」に対抗せんとして、藤澤親雄が打ち出した「新国際法」(真国際法)のことらしい。
 この論文に、「八紘一宇」(ハッコウイチウ)という言葉が出てくる。藤澤がこの言葉を、どういう意味で用いているか、注意して読んでいただきたいと思う。というのは、本年三月、参議院予算委員会の席上、ある参議院議員が、この言葉は、「世界が一つの家族のようにむつみあい、助け合う」といった意味であり、日本が建国以来、大切にしてきた言葉だという旨の発言をして、話題になったからである。

 今日の世界の現実に於てこの「国際法」こそは、実にわが惟神〈カムナガラ〉の大道そのものなのである。いままで、外国人は勿論、我が国知識層の大部分も不幸にして其の深き秘義を闡明〈センメイ〉し得なかつた。惟神の大道は、世界唯一絶対の「真理」であつて、之が国際関係に顕現したものが、横田〔喜三郎〕教授の暗中摸索して来られた「国際法」であり、之は確かに皇国〈スメラミクニ〉〔日本〕を除く世界各国の憲法の上に位するものである。惟神の道の国際的表現たる新国際法は「民族自決主義」と「帝国主義」との対立抗争を一元的に克服し得るのである。【中略】
 大政翼賛運動は、世界全人類をして、真の国際法が国際連盟規約ではなく、実に惟神の大道であることをはつきりと、且つ心から認識せしめんとする全人類的宇宙観徹底の運動なのである。
 されば、大政翼賛会の実践要綱に於ても「無上絶対普遍的真理の顕現たる国体を信仰し、歴代詔勅を奉戴し、職分奉公の誠を致し、ひたすら惟神の大道を顕揚す」と述べてあるのである。今後の世界に於ては万邦が天皇〈スメラミコト〉に対して「邦域奉公」をつくさねばならぬ。
 従来、惟神の大道は、日本民族の特殊なる民族信仰であつて、所謂「世界性」を有せず、之に反して、仏教キリスト教等は所謂「世界宗教」であつて、当然特殊なる一国家一民族の信仰に優位するものであると錯覚せられてきた。
 之は、具体的なるものは、すべて特殊であり、普遍的なるものは凡べて〈スベテ〉抽象的でありとする誤れる形式論理の思惟〈シイ〉的産物であつたのである。
 然し、最も正しい生命論理の原則に従へば、個と全と特殊と普遍とは生命的には一体不離でなければならない。之を「全個一体の原理」といひ、之が惟神の大道の現代的表現である。
 詳言すれば、わが惟神の大道こそは、仏教キリスト教その他の万教が帰一すべき「宗教中の宗教」であつて、之こそは真の意味に於ける唯一絶対の普遍的全人類的宗教である。キリスト教仏教は、之を特定の民族に伝承せんがために説かれた一方便であつたのである。今日奇しくもこの深遠たる御神策が次第に闡明せられつつある。
 十二月八日、対米英宣戦の御大詔が降り〈クダリ〉、間髪を容れずして、わが皇軍は英米海軍の主力を撃滅し更に彼等の太平洋に於ける航室基地を撃砕〈ゲキサイ〉したといふ事は、重大なる象徴的意義を有するものである。之は謂ふまでもなく九ケ国条約の中核たるスチムソン・ドクトリンが「偽国際法」であつて、我が惟神の大道が「真国際法」であると言ふ信念を一瞬にして、全人類の頭脳に叩きこんだ歴史的事件であり之によつて米英優位の「近代」が終了したのである。【中略】
 今日、一億大和民族の胸底に、八紘一宇、新秩序建設の大信念が不退転に湧起〈ユウキ〉しつつあるのは、決して偶然なことでない。それは、実に大和民族の隔世遺伝的潜在意識の全面的発露てある。
 即ち、太古神代に於ては如実に全人類が皇国を中心として世界一家体制を組織して居つたのであるが、その後度重なる天変地異によつて、この八紘一宇体制が崩壊せられ、人類は地理的にも精神的にも支離滅裂の状態に陥つたのである。
 その結果、万国は彼等の「魂の郷土」たる親国日本の指導と慈愛を失ひ、今日の如くにただよつてゐるのである。然し天地開闢〈カイビャク〉の時から万世一系に天神の霊統と血統を継承し給ふ 天皇に全人類一家体制の貴重なる太古の体験がそのままに伝はつてゐるのである。されば 天皇は地球を曾て在りし姿に還す〈カエス〉ことを以て天業の恢弘〈カイコウ〉〔おしひろめること〕と御考へになるのである。即ち、天之沼矛〈アマノヌホコ〉を以て、此のただよへる国を修理固成するとは、世界万国を親国たる皇国に帰一還元せしめるがために、聖戦を遂行すると謂ふことに外ならない。繰返して云へば、嘗て〈カツテ〉全人類一家体制が現実に存在してゐたからこそ、之が隔世遺伝的に八紘一宇の信念となつて、今日我々に復活再生してゐるのである。之が「温故知新」の深き意義である。実に皇道の世界経綸〈ケイリン〉とは地球を在りし姿に還して、坤輿〈コンヨ〉〔地球〕を一宇たらしむることであり、之がためには日本を、世界の絶対中心として、先づ大東亜より人類を家族的に再組織してゆかねばならない。之こそは日本精神の世界的宣揚であり、この大理想実現への巨歩は満洲国の建設によつて、既に力強くも進められたのである。【後略】

 筆者の藤澤親雄は、八紘一宇を、「世界一家体制」、「全人類一家体制」といった言葉で説明している。本来は、たしかに、そのように平和的、友好的な言葉だったのかもしれない。
 しかし、戦中、この言葉が、どのような脈絡で用いられていたかを知る必要がある。藤澤によれば、八紘一宇というのは、「惟神の大道」という超越的な規範を掲げる「親国日本」が、全地球を支配し、新秩序を築くという「大理想」を意味している。その理想を実現するための「聖戦」が大東亜戦争である。すなわち、八紘一宇というのは、大東亜戦争のスローガン以外の何者でもない。今さら、「世界が一つの家族のようにむつみあい、助け合う」といった意味で用いようとする神経には、驚かざるを得ない。

*このブログの人気記事 2015・7・28(7位に珍しいものがはいっています)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする