ON  MY  WAY

60代になっても、迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされながら、生きている日々を綴ります。

今さらながら「天国にいちばん近い島」(角川文庫)を読む

2019-12-03 21:35:08 | 読む


「天国にいちばん近い島」(角川文庫)という本が家の中から見つかった。
その名で覚えているのは、原田知世が主演で映画化したこと。
それは、まだ昭和60年になる前だったと思うのだが、薬師丸ひろ子に続いて、アイドルとして角川映画のヒロインになった原田知世に興味はなく、原作を読もうとは思わなかった。

見つかった本を見てみたら、昭和44年4月10日初版発行、平成5年11月20日65版発行、平成6年4月15日改訂初版発行となっていた。

えっ?昭和44年文庫本発行?
それなら、単行本で出たのはもっと前!?
とりあえず、読んでみようかと好奇心が湧いた。

小説なのかと思っていたら、そうではなく著者森村桂の経験に基づく話だった。
彼女が、その島ニューカレドニア島に行ったのは、昭和39年のことだったと知り、今さらながら驚いた。
原田知世主演で映画化されたのは、それから20年も後のことになるからだ。
1964年というと、東京五輪開催の年である。
その当時、海外へ旅に出るなんて、よっぽどの金持ちでもなければできなかった。
当時は、女子の初任給が1万数千円の時代であり、ヨーロッパまでの往復の飛行機代で48万円、アメリカ西海岸までの船代で往復24万円の時代だった。

ニューカレドニア島だって、その頃は、鉱石運搬船が行き来するくらいで、観光地ではなかったのだ。
そこを、天国にいちばん近い島だと信じて、大した資金もないのに行こうと決意したところから始まる主人公の旅行記というか冒険記というか、が展開される。
体験記なので、嘘のような本当のことが起こり、非常に面白い。

読んでみて、やはり素晴らしいのは人との出会いだ。
特に、言葉がよく分からなくても現地の人たちと交流できるところは、やっぱり人と人だなあと思ったりもした。
島に当時少なかった日本人に救われたり、現地の人たちとのふれあいに救われたりしている。
こともあろうに、そんな土地で盲腸炎になってしまうなど、様々な困難にもあうが、経験を通して、「天国にいちばん近い島」だと確信していく。

冒険心や、どんな人が相手でも人を尊重する気持ちが大切だということを思った。
初版から30年たっても改訂版が出た本書だったが、今は売られてはいないらしい。
また、映画でのストーリーも少し変えられていたらしい。

今とは時代背景が違うから、近ごろの若い女の子がこれを読んでも心は踊らないかもしれない。
でも、われわれ世代やそれより前の世代の、若い女性たちには珍しい行動力であったと思う。
このような行動力に勇気づけられた人はたくさんいたはずだ。
だから、この本が長く支持されたのだろうなあと思う。
読後感はさわやかだった。

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