ON  MY  WAY

60代になっても、迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされながら、生きている日々を綴ります。

「コーチ」(堂場瞬一著;東京創元社)を読む

2023-11-26 21:55:54 | 読む

書店でもよく名前を見かける堂場瞬一。

だが、彼の書いた小説はまだ読んだことがなかった。

今回、手に取った1冊は「コーチ」という名の本だった。

「コーチ」なんて書名を見ると、どんなスポーツ小説かと思った。

ところが、警察小説というのだから、…?!?!

 

伸び悩む若手刑事たちのもとに

警視庁本部から送り込まれる

謎の男、向井光太郎

そのアドバイスで成長した刑事たちが挑む

女子大生殺害事件と彼の過去が交錯する。

 

そんなふうに、帯には書いてあった。

面白そうだな、とりあえず読んでみようかな、と思った。

 

本書は、2部構成になっている。

警視庁の人事部署から、あちこちの所轄署に派遣されるのが人事課所属の向井という男。

派遣先では、期待されながら、行き詰まっている若手刑事たちがいる。

彼らにコーチ役として派遣されるのが向井だった。

1部(前編)では、捜査中のミスで女性ゆえに悩む女性刑事、有名な俳優の取り調べに苦戦する刑事、尾行に失敗する大柄な刑事らが登場する。

適切な助言を与える向井によって、それぞれの事件が解決し、彼ら一人一人に自信がよみがえっていく。

そして、2部(後編)では、彼らが同じ職場に異動になり、向井との関わりを語り合って、彼が刑事課ではなく人事課にいることに疑問を抱き、彼の過去の謎を探る。

ある事件を通じて、その3人が向井と共に殺人事件にかかわっていく。

 

「コーチ」という題名からすると、前編だけでもよいとも思うが、後編があるから、そこで起こる事件と向井のもつ謎に関わりが生まれている。

どのような仕事であっても、若いときには何度も壁に当たり、挫折感に打ちひしがれ悩み苦しむものだ。

それは、警察でもそうだということを描きながら、コーチの大切さを示していく。

それだけで終わらないのが、この「コーチ」。

そのコーチに対する「生徒たち」からの、ある種の恩返しの要素も入れながら、後編のストーリーが展開していくことに、この小説の面白さがあった。

その後、堂場瞬一氏は、警察小説やスポーツ小説を書いているということが分かった。

なるほど。

それゆえにこんな小説が書けたのだな、と納得したのであった。

コメント
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