『天竜川下り船』の転覆事故について昨日の続きです。
今日事故のあった少し下流を見てきました。
小雨のなか、川原で消防署員がテントの撤収作業をしていました。
100mくらい下流の鉄橋を天浜腺のジーゼル電車が過ぎて行きました。
私は随分前ですが
この天竜市(現浜松市天竜区)で仕事をしていた時期があります。
その当時は『川下り船』は、
地元の観光業者と林業関係者等のそれこそ”有志”がやっておられました。
営業期間も短く、船も少なくて、細ぼそという感じで、
停年したバスの運転手さんなどが何人か手伝ったり
船頭をされていたような記憶があります。
『川下り船』の職場というか現場の事業は、今もその頃と同じようで、
『地元の長老の船頭』が仕切っておられるようです。
だから経営者は、
観光業として宣伝や誘客、運輸業として官庁関係をこなしていれば
あとは、なんとなく上手くまわっていたのではないでしょうか。
そう考えると規模や組織とかは貧弱でも
『川下り船』の『現場力』は優れたものだったと思われます。
1.ライフジャケットを着用させなかったことについて
名倉社長さんと船頭さん達とこんな会話があったとすれば、
転覆してもこのような死傷者は出なかったかもしれません。
(社長)「今日は暑いね。でも船の上は風が涼しくて快適でしょう。」
(船頭A)「私は船で立ってるから涼しいけど、座ってるお客さんは暑いですよ。」
(船頭B)「せめて日除けの屋根があると良いですけどね。」
(船頭C)救命用具が熱くなって、お客さんに着ていろと言えないですよ。」
名倉社長さんの前職は遠州鉄道㈱の取締役です。
『顧客最優先』を社是にしている地元の超大企業です。
船頭さんの話を聞いて、名倉社長さんはすぐに行動されたでしょう。
遠鉄百貨店の常務をされていましたから、
熱くならない上質の救命用具を直ぐにも探させたでしょう。
遠州鉄道には、他にも20数社の関連企業がありますから、
そちらでちょっと情報を集めれば、
船の簡易日除けなど朝飯前で設置できたでしょう。
だけどもそうは行かなかった。
いわゆる社内の風通しが悪く、会話が無かったかもしれない。
名倉社長さんが就任以来赤字経営からの脱皮を掲げて、
経費節減ばかりを社員に迫っていたので、
それで社員の口が硬くなっていたのかもしれない。
あるいは『川下り船』事業は
地元の知り合いの人間で家族的な運営をしてきたので、
従来から経営者は、本業の鉄道業以外には
口を出せない雰囲気になっていたのかもしれない。
この点では、経営者の慢心が感じられ、経営者に問題があると思われます。
2.船頭の操船ミスについて
これまで数十年間『川下り船』事業を無事故でやって」こられた。
運営会社が鉄道会社に代わってからも
以前通りに長老の船頭が仕切って来て、無事故だった。
では何故、今度初めて操船ミスで事故が起きたのか。
考えられる事の一つは、
『川下り船』事業をいつまでも船頭に任せっぱなしではいけない、と考えた経営幹部側が、
船頭の採用をはじめ、色々に改革に乗り出していたのではないか』という事です。
張り切った社長さんの新方針に、長老の船頭さんは自分の主張があまりできなくなって、
事業の進め方がどっちつかずの中途半端で進められていたのではないでしょうか。
1隻30数人の乗客の命を預かるのは、船頭です。
失敗して業務上の責任を問われるのは、人を乗せて小型船舶を操縦した船頭にきます。
もしこういう事でしたら、経営側はもう少し謙虚に船頭の意見に耳を傾けるべきだったでしょう。
もうひとつ考えられるのは
船頭さん達の『現場力』はそんなに優れた能力や統制力を
ほんとうは持っていなかったかもしれない、ということです。
これまでは、気心が知れた知人を船頭に誘って、
手取り足取りで、のんびり時間をかけて養成してきたが、
公募で、ちょっと熱心で努力家の新人が入ってきた。
お客さんも増えて仕事も増えたので、思い切ってこの新人を抜擢してみた。
もしこういうことであれば、そこには『現場力』は元々なかったことになります。
今回の事故は二つのどっちも理由になったように思えます。
と言うのは、どこかで船頭さんが小声でつぶやいているのが私には聞こえるからです。
「どの船頭もみんな5回に1回くらいは、怖くて渦をを避けて下っちゃってるのに
誰もそれをお互いに口に出さない事にしているからね。
今度の新人船頭さんに誰かそう囁いてあげれば良かったのにね。」
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今年の春に天龍浜名湖鉄道主催のウォーキングに参加しました。
コース途中の道路に
このようなライン引きで書いた白い粉の矢印がありました。
少しは木の立て札の矢印も見受けましたが、殆どこれでした。
まさかと思って、ゴールで係員に聞いたら、
やはり同社がマーキングしたものでした。
こんなことで、公共の道路を汚すとは。
同社の古い駅舎は国の文化遺産に指定されたようですが、、
その駅舎や線路の掃除や草刈などの美化を
沿線の人たちの善意でなされているのに、
自分達は地元の道路を汚しっぱなしですか。
この会社は、
本業の鉄道部門の『現場力』こそ何かひとつ足りないようです。
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