つれづれなるままに心痛むあれこれ

知る事は幸福度を高める

自民「政治的中立」ネット調査は1954年「教育2法」成立前の状況と酷似

2023-06-24 22:31:37 | 教育

 自民党は公式HPで「学校教育における政治的中立性についての実態調査」なるものを、6月25日に開設し、7月18日付で閉鎖した。投稿の際には、投稿者の氏名や連絡先とともに「いつ、どこで、誰が、何を、どのように」を明らかにする事を要求していた。閉鎖に際し、作成を指示した木原稔・党文部科学部会長は「参院選が終わり、一通りの(事例)が出尽くした」と述べた。この調査では、「政治的中立を逸脱するような不適切な事例」を募集するとしていたが、その目的について木原氏は、「選挙年齢が18歳以上となった参院選前後で高校などで混乱がなかったかを調べるためである」と説明していた。またHPでは、「主権者教育が重要な意味を持つ、偏向した教育が行われる事で、生徒の多面的多角的な視点を失わせてしまう恐れがある」とか、「教育現場の中には『教育の政治的中立はありえない』と主張し中立性を逸脱した教育を行う先生方がいる事も事実」と断定し、「高校などで行われる模擬投票等で意図的に政治色の強い偏向教育を行う事で、特定のイデオロギーに染まった結論が導き出される」などと主張して情報提供を呼びかけていた。

逸脱しているか否かについては、「安保関連法は廃止にすべき」については「逸脱」するとしていた

部会内のPTは5月に、高校教員が政治的中立を逸脱場合に罰則を科せるように法改正を検討するという中間とりまとめをすでに発表している。また部会は「教育公務員特例法を改め、中立性を逸脱した教員に罰則を科す事を検討している。

さて、敗戦後の日本で、政府が、教育を「偏向」しているとみなし問題とした最初は、1953年の第5次自由党吉田内閣(1953年5月21日~1954年12月7日)の時である。6月、大達茂雄文部大臣が山口県教組の作成した小・中学生の夏休み日記帳に「偏向」記事があるとしたのである。

 1953年12月23日、文部省は「教育の中立性が保持されていない事例の調査について」という極秘通牒を全国の教育委員会に出した。その内容は、

「近時新聞等に、学校内において教育の中立性を阻害するがごとき事例が報ぜられているが、その実情を承知致したいので、貴都道府県内の公立学校等において、特定の立場に偏した内容を有する教材資料を使用している事例、または特定の政党の政治的主張を移して、児童・生徒の脳裏に印しようとしている事例、その他一部の利害関係や特定の政治的立場によって教育を利用し、歪曲している事例等、教育の中立性が保持されていない事例について至急調査の上、該当事例の有無ならびに該当事例があれば、その関係資料添付の上、できる限り具体的に、至急報告願います。」というものである。

 その動きを受けた中教審(53年1月発足)からは1954年1月に「教育の政治的中立維持に関する答申」が出された。

 その動きに対して同月の参院本会議で左派社会党の荒木正三郎が質問(教育規制の特別立法に対する質問)に立って述べた。その大まかな内容は、

「今回の措置は、吉田首相のいう占領政策の是正に名を借りて、占領中の諸制度を一挙に反動化しようとする現れの一環であって、教育と警察と知事を一手に掌握する事は、民主主義を崩壊させるものである。さらに、池田・ロバートソン会談(1953年10月共同声明、1954年3月MSA協定=日米相互防衛援助協定締結、内容は①日本は米国による軍事的・経済的援助を受ける ②日本は防衛力を強化する義務を負う)の目的である再軍備という深い関連性がある。

 さらに、会談の中で日本政府は教育及び広報によって日本に愛国心と自衛のための自発的精神が成長するような空気を助長する事に第一の責任を持つという了解がなされている。MSA再軍備を推進するために、日米双方において責任を持って愛国心を養成するとともに、自発的に再軍備に協力させようというものである。これを実施に移そうとすれば、政府に忠誠を尽くす教員でなければならないという事になるのである

  大達文部大臣は、平和教育は困ったものである。何とか今のうちに禁止しなければならないと言っているが、平和教育とは何の事か。何を指しているのか。日本国憲法は平和憲法と言われている。戦争を永久に放棄して恒久の平和を理想とする憲法だからである。この憲法に基づいて教育基本法第1条に教育の理想を掲げ、「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期す」とある。日本の教育は平和教育だと名づけても一向おかしい事はない。なぜいけないのか説明をしてもらいたい。」などである。

 しかし、「平和教育」が「偏向教育」の見本として攻撃され、1953年2月22日には「教育二法案」(①「教育公務員特例法の一部改を正する法律」と②「義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法」)が衆議院に提出され、参議院の議決を経て、1954年5月29日衆議院で「教育二法案」は成立したのである。二法案の①は「教育公務員の職務と責任の特性を逆用して、公立学校の教育公務員の政治的行為を地方公務員法ではなく、国家公務員法により制限すると規定」したものである。

 安倍自公政権による、教員を沈黙させ、抵抗を削ぐ弾圧は、さらにパワーアップしたものとなりそうである。権力で暴力で憲法改正(自民党改憲草案)を達成し、それに基づいた政策の実現をしようとしているのである。

 「天皇の生前譲位」も「改憲草案」実現の地ならしである。感情に流され騙されてはいけない。彼らは国民は理性的に考える事ができないと考えているのだ。それは彼らの常套手段である。そのためには、これまでの天皇のダブル・スタンダード(二枚舌ともいう)の動向を正確に把握しておかなければならない。彼らは権力維持のためには非常に悪賢いのであり、高度な知恵者であるから。それを打ち倒すためには、国民はそれ以上の悪賢さと、彼らの真実をしる努力が必要である。そして彼らを上回る知恵を持つ事が必要なのである。「悪人世にはばかる」にしてはいけない。

(2016年8月8日投稿)

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ごまかしの「政治的中立逸脱... | トップ | 自民「中立性逸脱」教育ネッ... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

教育」カテゴリの最新記事