2020年11月5、6日、大阪市民が行政に求めたわけではない大阪市「総合区設置案」と「広域行政の一元化条例案」を、大阪維新の会の松井市長と吉村知事が両議会に提案すると公表した。一般常識では先の住民投票の結果からこの手の件は落着したものと認識するものである。しかし、彼らは住民投票の結果は「賛成」が多数となるものと確信していたが、そうでない場合の事も考えて、次の手法も準備をしていたのである。それが上記の2つの「案」であり、二段構えの計画であったのだ。またそれを可能とするために、2014年にはすでに安倍自公政権により地方自治体法の改正を果たし、16年に施行という状況を整えていたのである。極めて周到に計画していたという事である。さすが狡猾な連中である。
「一元化条例案」とは、「都構想(大阪市廃止・4特別区設置)」で市から府へ移管するとしていた約430の事務を、市が財源約2000億円とともに府に委託したり代替執行してもらうとする内容であり、そのすべてを移管すれば、市民にとっては大阪市はその名称は残っても、先に実施した住民投票で「否決」と決まった都構想の内容と変わらない「改変」「変質」を被るものである。大阪府が、政令指定都市として大阪市のもつ自治権限と財源、その市民(住民)の自治権を奪取する内容であるが、この条例を制定する事により今回のように市民の意思を問う住民投票の実施をする必要のない手法を取ろうとしているのである。「広域一元化」のために知事が本部長として最終決定権をもつ「副首都推進本部会議」なるものを条例で制度化しようするものである。しかし、この条例は、上記のように市民の自治権を侵害するものであり、憲法違反である。
「総合区設置案」は、2016年施行の改正地方自治法を根拠とするもので、都構想(大阪市廃止・4特別区設置)に替えて、大阪市内の現在の24行政区を、8つの「総合区」に再編するものである。「総合区設置案」は、現行の「区」の権限と財源を強化し、地域の実情に応じた住民サービスを目指すものと市民にアピールしているが、この「案」の提案手法をみれば、それは到底市民の意思に沿おうとするものとは思われず、市民を欺く根拠のない偽善としか思えないとともに、市民生活の実情をまったく無視したもので、これまでの制度下で市民がそれぞれに築き上げてきた、人間関係や生活環境(憲法第13条「幸福追求の権利」)を破壊(侵害)してしまう事は明らかで、その事によって不安不幸が生じる事になるにもかかわらず、松井・吉村両氏にはそういう視点はまったく見られない。見る気もないと言って良い。大阪維新の会による行政の都合を、市民の自治の権利を無視して一方的に押し付けるものでしかなく、どう見ても決して主権者市民の立場考え方に立って提案しているものとは考えられないというべきである。市民の自治権を侵害するものである。
そもそも「総合区」制度(総合区設置は市議会の議決で可能で、住民投票を必要としない。総合区長は一般職でなく、4年任期の特別職で市長に解職権。2016年4月施行の改正地方自治法で導入)は、住民自治の強化や行政合理化を図る目的で新設されたというが、これまで政令指定都市には適していないと考えられているもので、設置を推進するところはどこにもないのである。改正地方自治体法自体が憲法違反といって良い。
それにもかかわらず設置しようとするのは、つまり、松井市長・吉村知事の両人(大阪維新の会)は明らかに、市民のためではなく、自分たちの目的(安倍や菅自公政権の目的のためでもある)のために何が何でも大阪市を換骨奪胎しようとしていると考えて良いのである。彼らの、主権者大阪市民を軽視する政治家として極めて非常識な倫理観を厳しく糾さなければならない。加えて、大阪維新の会と協力する公明党の同様な姿勢も厳しく糾さなければならない。
(2020年11月15日投稿)