みんなで学ぼう！バルカン半島ⅩⅣⅩⅣ

　カール・シュミット「政治の本質は敵と味方の峻別である」

バルカンでは敵と味方が一瞬で入れ替わります。
ドイツのビスマルクはロシアと同盟結んで5年ほどロシアのご機嫌を伺い、
いきなり手のひら返しで英国に寝返る大技を見せます。

『誠実な平和の仲介者』がイギリスとオーストリアの言い分を全て認め、

ビスマルク「この会議ぶちこわすなら、俺は戦争するぞ！」

しかし、ロシアはここで短気を起こしません。

☆2月のお知らせ：16日（金）、17日（土）は学術集会出席のため獣医師不在です。スタッフは常勤しておりますので可能なサービスはお問い合わせ下さい。大変ご迷惑おかけします。お許し下さい。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅩⅣⅩⅢ

教訓「同盟とは形式的なもので、平時はそれでいいが、いざという時に裏切る準備をしなければいけない」

　例えば、現在韓国はアメリカと同盟関係にあります。
では中国と韓国の結びつきはアメリカと比べどう評価すべきでしょうか。
結局、地政学とか国際政治っていうのは「線」を結んでいるかどうか、どことどこが繋がっているのか見ることです。
形式的に見るのは容易いことです。実質的に誰と誰が敵味方関係かを見極めておかないと国の行く末を誤ってしまいます。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅩⅣⅩⅡ

　ロシア「俺が戦争でぶんどったブルガリアに何でオスマンの主権を認めなきゃいけないの？（怒）」

これは事実上の三国干渉なのです。イギリス＋オーストリアにドイツがくっついている状態です。
ドイツとロシアは正式な同盟国です。ドイツとイギリスは正式な同盟ではありません。
でも肝心なときはドイツはイギリスにくっつきます。普段はロシアの機嫌を取りながら最後にイギリスに取り入るのです。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅩⅣⅩⅠ

　ベルリン条約では、ブルガリアは広範な自治権を有するが主権はオスマントルコです。
露土戦争で獲得したロシアの権益は全て認めます。
ブルガリアが独立と言うことはトルコ支配を離れると言うことなので、ロシアの成果ということになります。
ただし、トルコの面対だけは立ててくれということでブルガリアの主権はオスマントルコということです。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅩⅣⅩ

　ブルガリアの南に東ルメリアがあり、その南にトルコが接しています。
東ルメリアは事実上トルコが支配しています。セルビアはブルガリアの北東に接して、東ルメリアの対側に当たります。
セルビアは東ルメリアとは全く接していません。でも･･･、

ブルガリア「東ルメリアは俺のもんだ！」
セルビア「なんでお前の物なんだよ。俺のだ」

と、また戦争になります。接しているとかはバルカンでは関係ありません。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅩⅢⅩⅨ

　露土戦争によるサン＝ステファノ条約において、
あまりにもロシアに都合の良い内容だったためイギリスとオーストリアがぶち切れて、
各々の子分格であるブルガリアとセルビアが文句をいい、
関係の無いアルバニアが「俺たちにも国作らせろ」と叫び、混乱の中で


ビスマルク「私は誠実な平和の使者になる。アルバニア民族は存在しない」


　　　　･･･な～んてこと言う人はたいがい信用できませんわ。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅩⅢⅩⅧ

　ここで少々当時の日本を振り返ってみましょう。
露土戦争があったから日本は明治維新後の時間稼ぎができたといえるでしょう。
大ロシアと対等交渉できました。
また、ロシアと交渉しながら清国と朝鮮問題、琉球問題、台湾問題をずっと交渉してきました。

　また英米とは小笠原において日本に一方的に有利に交渉をまとめました。
ボニン諸島を日本領土と認めさせて小笠原諸島としました。小笠原には未だに青い眼の日本人がいます。
マーカス島は南鳥島になりました。

　ペリーが来た頃、ヨーロッパの眼は日本に向いていましたがクリミア戦争勃発によってバルカン半島に移ってしまいます。
その狭間に日本は幕末維新の大改革、国造りをやっているのです。
日本はたまたま運が良かっただけなのでしょうか。でも同様の状況だった清国、朝鮮半島は何もできませんでした。
そこは素直に誇りに思うべきでしょう。
日本は見事生き残り、末期清朝と李氏朝鮮は滅んでいきます。

　ここで現代の我々はこの2国を笑っている場合ではありません。
現代の日本はそれに近いとも見えるからです。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅩⅢⅩⅦ

　また、ギリシャの北西部、オスマントルコ領にあるアルバニア地方が独立を主張し出します。
ここは山続きでモンテネグロ、ボスニアヘルツェゴビナ、そしてコソボにも繋がる地域です。
関係の無いところで騒ぎを起こすバルカン法則です。さらに話が複雑化していきます。
結果的に、ビスマルクはこの状態からバルカンをまとめきってしまいます。
ヨーロッパにおける複雑なビスマルク外交の小型版をバルカン半島で作るのです。


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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅩⅢⅩⅥ

　ブルガリアはバルカン半島においてオスマンから領土を奪い取りました。
ブルガリア大公国なんてものはロシアの勢力がトルコに対して伸びるだけなので
こんなことをイギリス・オーストリアは認めるわけにはいかないのです。
ドイツは形式上ロシアの同盟国です。オーストリアとイギリスは友好国同士です。
結局ドイツ・オーストリア・ロシアの三帝同盟が揉め始めました。

　ここでドイツのビスマルクは･･･
「私は誠実な平和の仲介者になる」などと白々しいきれい事を言ってのけます。


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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅩⅢⅩⅤ

　もうひとり、フランツ・ヨーゼフⅠ世はオーストリア帝国皇帝にしてハンガリー国王。
オーストリア・ハンガリーの二重帝国のことです。
この人はこの世の不幸を全て一身に背負ったみたいな人で、親族全員変死です。
象徴的なのは息子マクシミリアン。
ナポレオン三世の寸借詐欺に引っかかって、
「へへへっ旦那、メキシコで皇帝の職があるんですが、どうです？」
マクシミリアンはメキシコへのこのこ皇帝をやりに行った途端に革命が起きて殺されてしまいました。
「顔だけは撃たないで･･･」、彼の願いもむなしく情け容赦なく顔を蜂の巣にされたそうです（泣）。
奥さんは助けに行くと言いつつヨーロッパ各地宮殿を転々と逃げ回っていました。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅩⅢⅩⅣ

　また、外部に大ブルガリア帝国を許せない国が出てきます。
イギリス、オーストリアです。
「そんなもの認められるか！」、まずはイギリス首相ベンジャミン・ディズレーリ、
この人は『ディ・イズラエル』と言う名前からしても典型的ユダヤ人です。当然ただ者じゃありません。
フランスのフェルデナンド・レセップスがスエズ運河を作ったとき、
ディズレーリはエジプトの国王を恫喝して
「金額いくらでもいいから俺に売れ」
「担保は大英帝国だ」と瞬時にスエズ運河を手に入れてしまいます。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅩⅢⅩⅢ

　それに呼応するかのようにセルビア、モンテネグロ、ボスニア-ヘルツェゴビナでも
「トルコを倒せ！」と武装蜂起が勃発します。関係ないところで騒ぎを起こすバルカン法則です。
バルカンのスラブ民族は「トルコを倒せ！」と一斉蜂起します。ただし、ギリシャだけは「俺は利益が無いからヤダ」。
結局ロシアが勝利。大ブルガリア公国をトルコに認めさせる（サン＝ステファノ条約）。

　ところが
セルビア・モンテネグロ「えぇっ～～、俺たちが始めた戦争なのに･･･、ブルガリアだけずるいじゃん」
ロシア「お前ら負けそうだったから助けてやったんだろ。文句言うな！」
セルビア・モンテネグロ「やだぁ～～！。俺たちの戦争なのに･･･」すねちゃいます。


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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅩⅢⅩⅡ

　ラスボス、ロシア参戦！に呼応するようにセルビア、モンテネグロ、ボスニア-ヘルツェゴビナでも
「トルコを倒せ！」と武装蜂起が勃発します。
関係ないところで騒ぎを起こすバルカン法則です。
バルカンのスラブ民族は「トルコを倒せ！」と一斉蜂起となりました。
ただし、ギリシャだけは「俺は利益が無いからヤダ」。
結局ロシアが勝利で終わります。サン＝ステファノ条約により大ブルガリア公国をトルコに認めさせることになります。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅩⅢⅩⅠ

露土戦争とベルリン会議

　露土戦争後の講和会議がベルリン会議です。
サンステファン条約をトルコ大使が涙ながらに署名して、
「ブルガリアを大勢力にするぞ！」という妄想をロシアが描き出します。
無理矢理トルコの北東、ブルガリアの南部に当たる東ルメリア地方をブルガリア領にしてしまいます。

　そのころの国際情勢はドイツがビスマルクの元で強国になり、フランスに普仏戦争で勝利し、フランスの恨みを買います。
その対策としてドイツはフランスを孤立させるために複雑怪奇なビスマルク同盟網を構築します。
ドイツはオーストリア・ロシアと三帝同盟を結び、バルカン半島で奥露がもめるのを止めようとします。
また、ドイツはイタリア・オーストリアの三国同盟で伊奥のもめ事を止めようとします。
イギリスはイタリア・オーストリアを結ばせます。イギリスとロシアは仲悪いので自分では直接結びません。
とにかくドイツにだけに都合が良くてフランスにだけ都合が悪いのがこの同盟網です。

　スペイン・セルビア・ルーマニアは付け足し程度にビスマルク同盟網に入っています。
その目的は「バルカンでもめ事起こすなよ」に尽きます。
それでももめ事起こすのがバルカンです。露土戦争は止まりません。
ロシア・オーストリアは仲良くてもロシア・トルコは宿敵です。
セルビア・モンテネグロvsトルコで露土戦争のゴングが鳴り、トルコに返り討ちに遭ったと思ったら、
そこにラスボス、ロシア様の登場です。

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