種子法廃止は日本農業を滅ぼすのか？ⅦⅩⅦ

　また、政治には構造的な問題もあります。
小選挙区、内閣人事局、安倍一強と言われる安定政権、
諮問会議や推進会議が勝手に結論ありきの議論をして決めてしまう現状です。
そしていかにも民間に意見を聞いたような形を取って、そのまま放り出して、
議員本人があまりよく分からないままOKを出してしまいます。
この構造は小さな法案ならどうということはないのかもしれませんが、
日本の農業の根幹に関わるような問題に際しては大変な事態なのです。

☆９月のお知らせ：今年も秋の健康診断を行います。秋は画像診断を中心に。値段は変わらず5400円（税込み）。報告レポートは大幅アップ。9月1日（金）～22日（金）、ただし15日（金）と16日（土）は出張のためお休みします。その代わり18日（月）敬老の日は特別営業いたします。ご利用下さい。予約はお早めに。 ↓のバナーもご参考に。

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種子法廃止は日本農業を滅ぼすのか？ⅦⅩⅥ

　官庁における技官の処遇改善は長年の課題です。優秀な技官が昇進において課長補佐で止まってしまう現状があります。
最も残念だったのは土地改革を担っていたある農業土木の技官でした。
彼は京都大学出身の極めて優秀な技官で、同期が局長なのに彼らは技長で終わってしまいました。これは給料が違うのです。
長官なら8号報まで行けますが、技長だと4号報くらいです。退職金も違います。こんな差別はないだろうと思います。
農学、農芸化学の皆さんも恩恵を与えたらやる気を出して、種子法や特許の問題に挑戦してくれるのではないかと思うのです。

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種子法廃止は日本農業を滅ぼすのか？ⅦⅩⅤ

　今回の種子法の廃止についての議論、それに関する大手メディア報道はほとんど見かけることはありませんでした。
それでも日本農業新聞は別として、最も種子法を取り上げてくれたのはなんと赤旗でした。たまに役に立つのです。
議会で一応審議をやっていたのにメディアはなぜこんな重要な問題が報じられないのでしょう。
農協改革の時も全く同じでした。全く報じられない状況で法案が決まっていきました。
農業新聞でさえ、法案が決まった翌日の記事は10行ほどの記事でした。まして全国紙は数行程度でした。
農業新聞は以前から社説で何度か言及されていました。学識経験者の優秀な論文の掲載も行なわれました。
朝日はまったく出していません。毎日は少々出していました。

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種子法廃止は日本農業を滅ぼすのか？ⅦⅩⅣ

　ここに根源的な問題があります。国家公務員のヒエラルヒーは東大法学部中心主義になっていることです。
事務官中心主義なのです。採用時は55％が技官、45％が事務官で法学部経済学部中心となっています。
ピラミッド型の上に行くに従って事務官が大部分を占めるようになります。
例外は林野庁長官、国土交通省の技官、事務次官です。それ以外は局長級のポストすらないのです。
それを台形組織にしてどの大学出ても能力と意欲のある人は事務官と同じように扱ったらどうかと国会で論争しました。
自民党の政調にもレポートを提出しました。
農林省の技術会議を中心とした生物系の研究機関が勇気を持ってもう少し発言力を上げることです。
そうなれば種子法廃止の問題点を誰も知らないなんて現実はなかったでしょう。

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種子法廃止は日本農業を滅ぼすのか？ⅦⅩⅢ

　日本では隣百姓と言って、種をもらってきて隣の真似して、新技術を普及させていく方法がありました。
青木昆陽のサツマイモが良い例で、日本の農家は立派で、3年でサツマイモが全国に広まりました。
それだけ伝播力があります。農家は研究熱心です。そんなところに強引に特許だとかが出てくるのはおかしいことです。
農林省の研究者が職務として今までやってきて、その結果が特許を取れるとなり、申請して国の収入になりそうだ、
そして独立法人化しましょうという流れがあります。
しかし彼らは「そんなのいらない。その成果を早くみんなに使ってほしい」と言うのです。
給料もらって自分の好きな研究させてもらってきた結果、偶然良い物が出來た。
そうならみんなが喜んでくれれば良いというのです。
それに対してある主査が「農水も経営感覚ないが、農業研究者も同じだ」と言ったので怒鳴りつけてやりました。
この精神が正しいのです。特許要らないという学者は大勢いいます。
大村智教授のイベルメクチンという象皮症の特効薬の開発も特許を放棄されました。それがあって当然なのです。
この病気は主に貧しい発展途上国の風土病なのです。極めて日本人らしい考えです。
しかしそうではない人間も世の中に大勢いて、金儲けの種を探しているのが現状です。

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種子法廃止は日本農業を滅ぼすのか？ⅦⅩⅡ

　遺伝子はご先祖様であり、山川草木悉皆成仏、みんな一緒なのです。
昔からある遺伝子をちょっと取り出してそれを特許登録という件もあります。これは許しがたい行為です。
今は誰も言わなくなりましたが、ウルグアイラウンドの時、新分野といわれた、
海外投資とサービス貿易、知的財産で議論された話です。
最後は決着できませんでしたが議論を深めることは出來ました。
その時に、インドブラジルを初めBricsの国々は食料と医療は特許から外せと議論していました。
なぜなら人が生きていくためにこれらは基本的なことだからです。
新しい薬を作るには大変な資金がいるのは事実です。次の薬の開発にも資金調達が必要です。
しかし、それは別途手当てをして、発展途上国では高額な特許使用料はなくすべきだと言う意見です。
食料というのは遺伝子組換えでなくても新しい品種が出來たら世界全体の財産であり、生きていくためには必要なものです。
この議論は根源的で正しいことではないでしょうか。

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種子法廃止は日本農業を滅ぼすのか？ⅦⅩⅠ

種子法は廃止されてしまいましたが、今からの現実的な対処として公的な種子をきちんと残せるような、
予算を確保できるような法律を議員立法で作らなければいけません。
これは多くの国会議員に共感は得られると思います。
また、民間企業がやっていくし、検査業務をそれほど公的機関がやる意味もない農業機械化促進法は廃止でも良いのかも知れません。
でも種子法廃止は何とか阻止するべきでした。
自民党にも同じ考えの方も大勢いましたが、安倍一強体制に押されてしまいました。
自民党の幹部クラスですら反対でも声を出せませんでした。新法を作るには今の国会内では時間がありません。
来年の4月に執行される予定ですからそれまでに新公的品種保全法なるものを作る必要があります。
どの国でも公共品種があります。せめてその種子は国の物だということを法律ではっきり明記すべきです。
そしてもう一つ、遺伝子組換えの一般栽培は禁止する必要があります。
花粉が飛ぶのを止めることはできません。そうしないと公的な種子を守ることと完全に矛盾してしまうでしょう。

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種子法廃止は日本農業を滅ぼすのか？ⅦⅩ

　種を少し変えただけで「俺のもんだ」という人がいます。種苗というのはみんなの物です。
現実的には何百年も前のお百姓さんからずっと作られ続けてきた改良の成果です。
近年も農業試験場で一生懸命選別され続けてきました。過去のご先祖達の物でもあります。
そこには縦軸の感覚が足りません。未来の子供のためでもあります。

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種子法廃止は日本農業を滅ぼすのか？ⅥⅩⅨ

　これが花とか野菜ならまだ良いかもしれません。
日本でも「さかた」、「たきい」、「かねこ」などの種苗業者が頑張っています。日本人はこういうのは得意です。
主要農作物種子法は大変きちんとしています。
米小麦大豆の日本における自給率は人間が生きて行くのに基本的な物をきちんと定めていています。
そして指定品種にして奨励してきました。
そもそも廃止法案だけで法案になる事は滅多にありません。
基本は推挙の方でやって改正法案止まりで、それでもだめなら廃止することになります。
今回、農業機械化促進法、主要農作物種子法の2つを廃止する法案が通りました。
結局ちょろまかして附則で廃止しようとしたのですが、さすが法制局、関連性がないとそれは許しませんでした。
廃止法だけで出すというのは大変珍しいことです。こんなドジをするのは時代に全く逆行していると思います。
根底にあるのはBasic Human Needs、人が生きていく上に不可欠な物は国がやっていくべきだということです。
その代表は食料であり医療であり教育です。
そこは民営とか民間とかに過度に従事させてはいけない分野だということです。

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種子法廃止は日本農業を滅ぼすのか？ⅥⅩⅧ

　世界は今、みんなバイオの方を向いています。
これから食べていく飯の種は”種”です。世界は”種”に関心を持っています。
その時に日本は種子法廃止と農業競争力支援法を作って、
そこでは今まで日本が公的機関で守ってきた種子の情報を民間企業に提供しろと定めてあります。
これはとんでもないことで、種苗は公共財です。みんなの者なのです。
これが民間企業の手に渡れば日本では種苗法、
アメリカでは生物特許でやってきた物を少し改良するだけで生物特許を取得して高く売ることをします。
日本国内は本来は逆にしなければいけないはずです。

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種子法廃止は日本農業を滅ぼすのか？ⅥⅩⅦ

　自由貿易協定の中には何もかも商品化していく流れがあります。
種も農作物も畜産物も皆、命に関わる部分をいかにコスト安く市場を取っていくかという競争にさらされていきます。
それがそもそも間違っている事だと思います。
WTO協定の時にも、GATTウルグアイラウンド前までは農業分野は自由貿易の対象の例外として認められてきました。
アメリカはウルグアイラウンドの時に農産物の余剰を抱えて市場がほしいと考えました。市
場がほしいが故に農産物も自由貿易の対象にして売り込んでいきました。
本来どの国も、自分の国民に対する食料は食料主権、守られるべき分野なのです。
早く新たな自由貿易の考え方をきちんと世に問うべきだと思います。このままでは何もかも強者に奪われていくでしょう。

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種子法廃止は日本農業を滅ぼすのか？ⅥⅩⅥ

　原丈人氏の公益資本主義という考え方は、今のグローバリズムに市場原理主義というのは間違いだと言うのが基本です。
世界的な風潮として。新しい資本主義の理念を打ち出しています。
彼は公益資本主義という主張を掲げて経済再生諮問会議の下請けの委員になっています。
自分の提案を安倍首相にも具申しているようです。
これが主流になっていけば、グローバリズムに対する修正が行われるはずです。
市場原理に対する修正です。これが官僚も経済界も納得する形で広がってほしいものです。

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種子法廃止は日本農業を滅ぼすのか？ⅥⅩⅤ

　今、間違いなくあらゆる共同体をつぶす方針が進んでいます。
家族農業、小農家の大事さが捨てられる動きはGHQの農地改革から始まっています。
日本はかつて大地主が居て、小作人が居て、それなりにやってきました。これにも欠点はあります。
その人達に配るのはまだいいでしょう。でもそれに責任を負わせるようにしなければいけないでしょう。
戦後それをやったのは指導的立場を担った農協です。それが全て解体され、個別にばらばらにされていきます。
農業が企業の商売の場所になっていきます。国防、産業そして農業、個別撃破されていきました。
農業はまだ何とか踏みとどまっています。この農業がやられると日本が又一掃弱くなっていくでしょう。
一部のグローバル投資家の利益になるように個別に潰されて、多様化がなくなって、みんなフラットになって、
我々は消費する奴隷と化して、同じように食べて同じように死になさいという世界になっていくでしょう。
人の心も経済的な存在でしかなくなっていきます。人間がそれらしく生きる、農業にはそういう所がありました。
そこは人間性の最後の砦だったのかも知れません。

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種子法廃止は日本農業を滅ぼすのか？ⅥⅩⅣ

　家族農業に関しては故桧垣徳太郎元参議が熱心でしたが、アメリカもヨーロッパも主流は家族農業です。
日本も株式会社化企業化と言うが基本は家族農業です。個別所得補填、認定農家制度が作られました。
個別農家所得補填はプロの農業の担い手がなくてはだめです。どの産業もプロでなくてはだめです。
これは兼業農家のような片手間ではだめです。認定農家は専業的農業経営者が必要です。
そこに農地を集約する仕組みが必要です。個別所得補填は少々修正する必要がある。

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種子法廃止は日本農業を滅ぼすのか？ⅥⅩⅢ

　農地は何のためにあるのでしょう。
日本の農業は企業型農業なのか、兼業農家、個別農家型なのでしょうか。これは大事な問題です。
農水省の課長以上を集めて訓示しました。

「戦後日本の農業政策は間違ってきた。今農家は3頭の母豚で養豚経営が成り立っている。
6頭の乳牛で酪農経営が成り立っている。そこをみんな見に行ってこい」

そしてアメリカの企業型農業を目指しました。農業生産法人を有限会社にして、牛を400頭飼い、豚を年間8千頭出荷しました。
そして失敗しました。大型化、企業化による失敗です。
それを改めようとしているのです。
小農を大事にして家族農業を主体として、ヨーロッパ型の農業、農地は耕作者の物として、
個別所得補償をやるという考え方です。

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