こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。
今回は、2020年日本ジュニア数学オリンピック予選の問題です。
問題は、
「8×8のマス目があり、各マスには片面が白色、もう一方の面が黒色のコインが1枚ずつ置いてある。いずれのコインも白色の面が表になっている状態から始めて、AさんとBさんが以下の操作を2020回行う。
まず、Aさんが相異なる8つのマスを選び、それらのマスに置かれている8枚のコインをすべて裏返す。次に、Bさんが行または列を1つ選び、その行または列に置かれている8枚のコインをすべて裏返す。
このとき、以下の条件をみたす最大の非負整数kを求めよ。
AさんはBさんの行動にかかわらず、2020回の操作が終わったときに黒色の面が表になっているコインをk枚以上にできる。」
です。
早速、取り掛かりましょう。
Aさんが任意の8つのマスを選ぶことができるのに対して、Bさんは行または列のいずれか1つしか選べないので、行または列のいずれか1つに置かれた8枚すべてが黒色コインでない状態以外では、Aさんは黒色コインを増やすことが可能です。
そこで、各行各列に1つ以上の白色コインが置かれている状態を考えると、その簡単な例は、図1のような、マス目の対角線上に並んだマス(☆)白色のコインが置かれている場合です。
▲図1.マス目の対角線上のマスに白色のコインが置かれている状態を考えます
ここで、n回目の操作の後で、マス目上にある黒色コインの個数をbnとします。このとき、b0=0、 b1=8です。
まず、1回目のAさんの操作で、図1の☆のマス以外の8マスを選んで、それらのマスに置かれている8枚のコインをすべて裏返すと、2行または2列以上に黒色コインが置かれることになります。(☆を黒色にしないので、各行各列には最大7個の黒色コインしか置けません)
そこで図2の左側の図ように、1回目のAさんの操作で、マス目の1行目の2~8列目と2行目1列目のマスを黒色コインにした場合を考えます。
▲図2.マス目の1行目の2~8列目と2行目1列目のマスを黒色コインにした場合を考えます
このとき、2回目のBさんの操作で、1行目を選んだ場合、図3の中央の図のように、2回目の操作後、b2=2になり、その他の行または列を選んだ場合、b2=14または16になります。
また、上記以外で、ある行または列に黒色コインが最大m個(m≦7)置かれるようにAさんが操作し、続いてBさんが黒色コインがm個置かれてる行または列を選んだ場合、
b2=8-m+(8-m)=16-2m
になり、したがって、
b2≧2
です。
さらに、図2の右側の図のように、3回目のAさんの操作で、マス目の1行1列目とその他の白色コインが置かれている7つのマスを選ぶ(図の場合は、1行1~7列目と3行目1列目)ことにより、マス目の対角線上の8つのマスに白色コインが置かれた状態に戻すことができます。
このように、Aさんが、Aさんの操作後にマス目の対角線上の8つのマスを白色コインにする操作を繰り返すことにより、高々(64-8)÷2×2-1=55(回)の操作で、図3の左側の図のような状態にすることが可能で、それ以降の2019回目の操作までBさんが選んだ行または列のコインを再び裏返すことにより、図3の左図の状態を2019回目の操作後まで保つことができます。
▲図3.奇数回目(≦55)のAさんの操作後と次のBさんの操作です
2020回目のBさんの操作では、いずれの行または列の1つを選んでも同じで、図3の右側の図のように、b2020=64-14=50です。
以上から、Bさんの操作にかかわらず、
b2020≧50 (☆)
であることが判りました。
次に、Aさんの操作にかかわらず、b2020≦50 になるかを調べます。
初めに、マス目上の黒色コインの個数はいつでも偶数個になることを示します。
ある操作で、白色コインm個、黒色コイン8-m個を裏返すと、黒色コインが増えた個数は、m-(8-m)=2m-8(個)で、これは偶数個です。
一方、1回目のAさんの操作前のマス目上にある黒色コインの個数は0個(偶数)であることから、マス目上の黒色コインの個数はいつでも偶数個になります。
Aさんのi回目の操作後、マス目上の黒色コインが52個以上になるのは、その直前のBさんのi-1回目操作後のマス目上の黒色コインの個数が、44個、46個、48個または50個のいずれかの場合で、そのとき、Aさんのi回目の操作後のマス目上の黒色コインの個数は、それぞれ、52個、54個、56個または58個のいずれかになります。
一方、マス目上の黒色コインの枚数と、そのときの行または列に置かれる黒色コインの最大個数は、図4に示すように、
(マス目上の黒色コイン) → (行または列に置かれる黒色コインの最大個数) は、
・ 52、54、56個の場合 → 7個以上
・ 58個の場合 → 8個
です。
▲図4.マス目上の黒色コインの個数と各行各列に置かれる黒色コインの最大個数です
すると、Aさんのi回目の操作後、マス目上の黒色コインが52個、54個、56個の場合、Bさんのi+1回目の操作で、黒色コインが7個以上の行または列を選ぶことにより、黒色コインを6個減らすことができるので、マス目上の黒色コインは、それぞれ、46個、48個、50個、つまり、50個以下になります。
さらに、Aさんのi回目の操作後、マス目上の黒色コインが58個の場合、Bさんのi+1回目の操作で、黒色コインが8個の行または列を選ぶことにより、黒色コインを8個減らすことができるので、マス目上の黒色コインは、50個になります。
したがって、Aさんの操作でマス目上の黒色コインが52個、54個、56個、58個になった場合、Bさんは黒色コインが最大個数置かれている行または列を選んで操作することを2020回目まで繰り返すことにより、
b2020≦50
とすることができます。
以上から、Aさんの操作にかかわらず、
b2020≦50 (★)
であることが判りました。
したがって、(☆)と(★)から、b2020=50 であることから、kの最大値は 50 で、これが答えです。
簡単な問題です。
今回は、2020年日本ジュニア数学オリンピック予選の問題です。
問題は、
「8×8のマス目があり、各マスには片面が白色、もう一方の面が黒色のコインが1枚ずつ置いてある。いずれのコインも白色の面が表になっている状態から始めて、AさんとBさんが以下の操作を2020回行う。
まず、Aさんが相異なる8つのマスを選び、それらのマスに置かれている8枚のコインをすべて裏返す。次に、Bさんが行または列を1つ選び、その行または列に置かれている8枚のコインをすべて裏返す。
このとき、以下の条件をみたす最大の非負整数kを求めよ。
AさんはBさんの行動にかかわらず、2020回の操作が終わったときに黒色の面が表になっているコインをk枚以上にできる。」
です。
早速、取り掛かりましょう。
Aさんが任意の8つのマスを選ぶことができるのに対して、Bさんは行または列のいずれか1つしか選べないので、行または列のいずれか1つに置かれた8枚すべてが黒色コインでない状態以外では、Aさんは黒色コインを増やすことが可能です。
そこで、各行各列に1つ以上の白色コインが置かれている状態を考えると、その簡単な例は、図1のような、マス目の対角線上に並んだマス(☆)白色のコインが置かれている場合です。
▲図1.マス目の対角線上のマスに白色のコインが置かれている状態を考えます
ここで、n回目の操作の後で、マス目上にある黒色コインの個数をbnとします。このとき、b0=0、 b1=8です。
まず、1回目のAさんの操作で、図1の☆のマス以外の8マスを選んで、それらのマスに置かれている8枚のコインをすべて裏返すと、2行または2列以上に黒色コインが置かれることになります。(☆を黒色にしないので、各行各列には最大7個の黒色コインしか置けません)
そこで図2の左側の図ように、1回目のAさんの操作で、マス目の1行目の2~8列目と2行目1列目のマスを黒色コインにした場合を考えます。
▲図2.マス目の1行目の2~8列目と2行目1列目のマスを黒色コインにした場合を考えます
このとき、2回目のBさんの操作で、1行目を選んだ場合、図3の中央の図のように、2回目の操作後、b2=2になり、その他の行または列を選んだ場合、b2=14または16になります。
また、上記以外で、ある行または列に黒色コインが最大m個(m≦7)置かれるようにAさんが操作し、続いてBさんが黒色コインがm個置かれてる行または列を選んだ場合、
b2=8-m+(8-m)=16-2m
になり、したがって、
b2≧2
です。
さらに、図2の右側の図のように、3回目のAさんの操作で、マス目の1行1列目とその他の白色コインが置かれている7つのマスを選ぶ(図の場合は、1行1~7列目と3行目1列目)ことにより、マス目の対角線上の8つのマスに白色コインが置かれた状態に戻すことができます。
このように、Aさんが、Aさんの操作後にマス目の対角線上の8つのマスを白色コインにする操作を繰り返すことにより、高々(64-8)÷2×2-1=55(回)の操作で、図3の左側の図のような状態にすることが可能で、それ以降の2019回目の操作までBさんが選んだ行または列のコインを再び裏返すことにより、図3の左図の状態を2019回目の操作後まで保つことができます。
▲図3.奇数回目(≦55)のAさんの操作後と次のBさんの操作です
2020回目のBさんの操作では、いずれの行または列の1つを選んでも同じで、図3の右側の図のように、b2020=64-14=50です。
以上から、Bさんの操作にかかわらず、
b2020≧50 (☆)
であることが判りました。
次に、Aさんの操作にかかわらず、b2020≦50 になるかを調べます。
初めに、マス目上の黒色コインの個数はいつでも偶数個になることを示します。
ある操作で、白色コインm個、黒色コイン8-m個を裏返すと、黒色コインが増えた個数は、m-(8-m)=2m-8(個)で、これは偶数個です。
一方、1回目のAさんの操作前のマス目上にある黒色コインの個数は0個(偶数)であることから、マス目上の黒色コインの個数はいつでも偶数個になります。
Aさんのi回目の操作後、マス目上の黒色コインが52個以上になるのは、その直前のBさんのi-1回目操作後のマス目上の黒色コインの個数が、44個、46個、48個または50個のいずれかの場合で、そのとき、Aさんのi回目の操作後のマス目上の黒色コインの個数は、それぞれ、52個、54個、56個または58個のいずれかになります。
一方、マス目上の黒色コインの枚数と、そのときの行または列に置かれる黒色コインの最大個数は、図4に示すように、
(マス目上の黒色コイン) → (行または列に置かれる黒色コインの最大個数) は、
・ 52、54、56個の場合 → 7個以上
・ 58個の場合 → 8個
です。
▲図4.マス目上の黒色コインの個数と各行各列に置かれる黒色コインの最大個数です
すると、Aさんのi回目の操作後、マス目上の黒色コインが52個、54個、56個の場合、Bさんのi+1回目の操作で、黒色コインが7個以上の行または列を選ぶことにより、黒色コインを6個減らすことができるので、マス目上の黒色コインは、それぞれ、46個、48個、50個、つまり、50個以下になります。
さらに、Aさんのi回目の操作後、マス目上の黒色コインが58個の場合、Bさんのi+1回目の操作で、黒色コインが8個の行または列を選ぶことにより、黒色コインを8個減らすことができるので、マス目上の黒色コインは、50個になります。
したがって、Aさんの操作でマス目上の黒色コインが52個、54個、56個、58個になった場合、Bさんは黒色コインが最大個数置かれている行または列を選んで操作することを2020回目まで繰り返すことにより、
b2020≦50
とすることができます。
以上から、Aさんの操作にかかわらず、
b2020≦50 (★)
であることが判りました。
したがって、(☆)と(★)から、b2020=50 であることから、kの最大値は 50 で、これが答えです。
簡単な問題です。