東久留米 学習塾 塾長ブログ

東京都東久留米市滝山の個別指導型学習塾 塾長白井精一郎のブログ

日本ジュニア数学オリンピック本選の問題(4)

2019-05-06 11:58:34 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

今回は、2019年日本ジュニア数学オリンピック本選に出題された組合せの問題を取り上げます。

問題は、
「nを3以上の奇数とする。n×nのマス目を使って次のようなゲームを行った。

● マスを1つ選び、駒を置く。

● その後、駒が置いてあるマスに縦、横、斜めに隣りあうマスの中から今まで駒が訪れていないようなマスを1つ選び、駒を移動させる。この操作を駒が移動できなくなるまで繰り返す。

駒が

のマスすべてを訪れていたとき、駒が縦または横に移動した回数としてありうる最小の値を求めよ。」
です。

早速、取り掛かりましょう。

例えば、図1のように5×5のマス目で試行してみると、縦と横への移動を極力避けながら、すべてのマスを訪れる経路の一つが、図1に示すように、Aを出発した後、横(右)に1マス移動→斜め(左下)に1マス移動→縦(下)に1マス移動→斜め(右上)に2マス移動→・・・→B であることは容易に想像できます。


▲図1.5×5のマス目で試行します

このとき、縦の移動と横の移動はいずれも4回で、これらは、隣接する行間の移動回数の和と列間の移動回数の和です。

したがって、n×nのマス目で図1のように移動した場合、縦と横の移動回数は、いずれもn-1(回)で、合計2n-2(回)が可能になります。

そこで、与えられた条件を満たす移動で、縦と横に移動する回数が2n-2(回)未満にならないことを示しましょう

図2のように、奇数行奇数列のマスをP、偶数行偶数列のマスをQ、奇数行偶数列のマスをR、偶数行奇数列のマスをSとするn×nのマス目を考えます。このとき、斜めの移動が可能なのは、P-Q間とR-S間だけであることに留意しましょう。


▲図2.奇数行奇数列のマスをP、偶数行偶数列のマスをQ、奇数行偶数列のマスをR、偶数行奇数列のマスをSとしました

初めに、P、Q、R、Sそれぞれのマスの個数を計算すると、それらは、それぞれ、

になります。

ここで、
(1)Pのマスを出発してPのマスに到着する場合
(2)Pのマスを出発してQ、R、Sのいずれかのマスに到着する場合
(3)Q、R、Sのいずれかのマスを出発してPのマスに到着する場合
(4)Q、R、Sのいずれかのマスを出発してQ、R、Sのいずれかのマスに到着する場合
のそれぞれにおける、Pのすべてのマスについての駒の出入りを調べます。

(1)Pのマスを出発してPのマスに到着する場合
Pのすべてのマスについての駒の出入り総数は、(Pのコマの個数)×2-2から

です。

このうち、斜めの移動回数の上限は、(Qのマス目の個数)×2なので、縦と横の移動回数の下限は、

になります。

(2)Pのマスを出発してQ、R、Sのいずれかのマスに到着する場合
Pのすべてのマスについての駒の出入り総数は、(Pのコマの個数)×2-1から

です。

このうち、斜めの移動回数の上限は、(Qのマス目の個数)×2なので、縦と横の移動回数の下限は、

になります。

(3)Q、R、Sのいずれかのマスを出発してPのマスに到着する場合
Pのすべてのマスについての駒の出入り総数は、(Pのコマの個数)×2-1から

です。

このうち、斜めの移動回数の上限は、(Qのマス目の個数)×2なので、縦と横の移動回数の下限は、

になります。

(4)Q、R、Sのいずれかのマスを出発してQ、R、Sのいずれかのマスに到着する場合
Pのすべてのマスについての駒の出入り総数は、(Pのコマの個数)×2から

です。

このうち、斜めの移動回数の上限は、(Qのマス目の個数)×2なので、縦と横の移動回数の下限は、

になります。

以上から、縦と横の移動回数の下限は、(1)のPのコマを出発してPのコマに到着する場合に最も小さくなり、その値は2n-2(回)で、2n-2(回)未満になることはありません

したがって、縦または横に移動した回数としてありうる最小の値は 2n-2(回) でこれが答えです。


簡単な問題です。