岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

赤茄子を詠う:斎藤茂吉の短歌

2022年07月18日 09時54分43秒 | 斎藤茂吉の短歌を読む
・赤茄子の腐れてゐたるところより幾程もなき歩みなりけり 「赤光」所収。 「赤茄子」はトマトの旧称。作者は道を歩いている。おそらくは道端に腐ったトマトが転がっていた。潰れていたかも知れぬ。 そこを通り過ぎて、程なく、作者は何らかの感慨を受けた。どのような感慨か。それは作者にも判然としなかったらしい。  斎藤茂吉の「作家40年」のなかでも「何らかの」と述べるにとどめている。 だがこの不思議な . . . 本文を読む

薄明の意識を詠う:佐藤佐太郎の短歌

2022年07月18日 09時54分43秒 | 佐藤佐太郎の短歌を読む
・薄明のわが意識にてきこえくる青杉を焚く音と思いき  「歩道」所収。 「薄明」は薄明り。この場合は夜明けであろう。目が覚めるか覚めないか微妙な瞬間だ。この瞬間に作者は音を聞いた。聞いた気がしたのかも知れない。「青杉を焚く」とあるから、枯葉ではなくてまだ青々とした杉の葉だろう。 どのように聞こえたのか。乾燥した「チリチリ」という音だろう。 この一首を読んで感じるのは。感覚の鋭さだ。薄明で意識が鮮明で . . . 本文を読む